第20.5話 幕間 メイとあの日のこと―メイ視点―
「アレク様の様子がおかしい?」
昨晩から続く坊ちゃまのキョドキョドした様子。
いったいどうしたことかわかりません。わかりませんが……悩んでいるなら、お力になりたい。
そう思って信頼できる人に相談してみました。
「えぇ。昨夜は何か言いたそうにしてよくわからなく終わり、今日は朝からどこかよそよそしく、目も合わせてくれませんでした」
私に相談できる人は少ない。その中で1番頼りになるのはサリーさんです。
エリー? どなたのことですか?
飽きずに今日も来た2人。
坊ちゃまとどこぞのお嬢様が話に夢中になっている隙に、こっそりサリーさんに相談する。
「う~ん、それだけでは何とも……昨日は何を言いたそうだったのかしら」
「何度か言い辛そうに、『ととっ』とか、『とぎぃっ』とか。最終的にとぎたてのお米とやらを食べたいと言っておりました。このお米というのが重要なのでしょうか?」
お米、いつか探し出して坊ちゃまに食べて頂きたいものです。
「あー、うん。なるほどなるほど~……すれば?」
「? 何を?」
肩をポンポンと叩きながら呆れたように言うサリーさん。
「何って……夜伽。セ〇クスよ、セ〇クス」
「……」
セッ……! 子ども作る行為っ。
「坊ちゃまは、私と……お子を作りたいと……?」
「まぁ、そういう行為だけど……あなた、もしかしてセ○クス知らないの?」
しっ! しししし!
「し、知ってますよさすがに! 愛し合う2人が愛し合って子どもを成す行為、ですよね!」
「や、それ以外にも……単純に気持ちいいからするのよ。初めては痛いらしいけど」
「???」
サリーさんが何を言ってるのかわかりません。
しかし……同じメイドの方々が王への夜伽がどうとか言ってましたが……。
あれはこう言うことだったのでしょうか……?
「だから、気持ちよさを求めてすることもあるの! ていうか、夜伽ってそういうもん!」
「は、はぁ……」
サリーさんが顔を赤らめてお話してくれます。
「いい? まずは、服を脱ぎます!」
「そんな……坊ちゃまの前ではしたない」
「いいの! それで……男の人のアレをにぎにぎするのよ!」
「アレ?」
「おち○ちんよ!」
「――っ!」
顔が赤くなるのを感じました。見ればサリーさんも先程よりもさらに赤くなっています。
「し、しかし……そこは大事なところなのでは……?」
「そうよ。だから好きな人だったり、そういうことをしたいと思える人とじゃなきゃやってはいけないのよ! 本当はね」
な、なんと……そのような秘密があったとは!
「そ、そうなんですか……! 勉強になります!」
「……本当に何も知らないのね。アレク様に大事にされているってことかしら……」
「? そうなのですか?」
とても大事にしてくださってる、とは思いますけど。
「いい? 私たち貴族付きのメイドはね、ご主人様の命とあらばそう言うことをすることもあるのよ。私も知識だけは先輩に教えられたし」
「はぁ……」
「わかってる? 気持ちいいことをするために、好きでもない人とセ○クスしなきゃいけないのよ?」
「それは……そんな!」
話を聞いただけで恥ずかしい……そんなことを坊ちゃま以外と!?
「だから……あなたは守られているのよ。獣人のメイドなんて、その辺のとち狂った兵士に襲われても誰も文句は言わないでしょうしね」
「……」
……獣人差別。サリーさんやどこぞのお嬢様は変わらず接してくれていますが、この城にいる方々からですら私を見る目は冷たい。
いえ、この城にいるからこそでしょうか。
「そんなことが無いように、アレク様は裏であなたを守っているのでしょう。全く、コソコソするのが好きなんだから」
呆れたような言い方ですが、どことなく優しそうな表情をするサリーさん。
もちろん、私も嬉しい。
「……そうですね。坊ちゃまは私にたくさんのことを教えてくれたり、そうやって守ってくれたりしてくれています。私は、そんな坊ちゃまのためにできることなら何でもしたい。夜伽を望まれるなら……応えたいです」
「そう。なら、しっかりご奉仕しなきゃね!」
その後、自分の顔が熱くなっているのを感じながら夜伽の何たるかをサリーさんに伝授して頂いた。
まさかそのような行為だとは……坊ちゃま……アレク様……。
「(先を越されちゃいましたね、エリーお嬢様……と私。ていうかアレク様のせいよっ! お手付きにされたって噂が流れちゃったからっ! どうするのよ! 確実に行き遅れコースなんですけどぉっ!)」
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