第16話 10歳~はじめてのおわびのしな~

「来たれっナイツ! わが身に宿り怨敵阻む盾となれ! うおおおおおおっ!」


 デール君がそう叫ぶと同時に、魔力でできた甲冑に身を包まれる!

 あれは……そうか、遂にやったか!


「うおぉおおおおお!」

 猛烈な勢いと速さで俺たちとオーガの間に割り込むデール君!


「ぐおぉおおっ!?」

「――っ!」

 激しい衝突だったが、吹き飛んだのはオーガだった。


「グォガァァァアっ!」

 すぐさま態勢を整え、デール君に襲い掛かるオーガだが――!


「無駄だ!」

 デール君の構える大盾はビクともしない。


「殿下を傷つけさせはしないっ!」

 そして、魔力を纏いチャキッと剣を構えるデール君。


「ぐおおおおおおおっ!」

「くらえっ! たぁぁぁぁっ!」


 膨大な魔力を飛ばしながら、オーガを真っ二つに切り裂いた。


 ◆◇◆◇


「いやーすごいよ、本当に凄い! まさか召喚獣を身に纏うなんて!」

「殿下! 殿下のおかげです! 私はまだまだ高みを目指せますっ!」

「……」


 召喚獣にそんな力があるなんて、全然知らなかったよ! さすがデール君!


「デールさん、ありがとうですわ! アレク~、怖かったですの!」

「あぁ、エリーもよく頑張ったね!」

「ふふ~ん、ですわぁっ!」

 何を隠そう、エリーはずっと支援魔法を使ってくれていたのだ! ……俺に。


「何はともあれ、早めに戻った方がよろしいのではないでしょうか」

「そうだね! さ、奥の宝箱を開けようか!」


 ボスを討伐した報酬の宝箱を調べる。おや?


「これには罠が仕掛けられているね」

「何と! いかが致しましょうか」

 ちょっと待ってね……魔力の流れを分断して……よしっ!


「大丈夫、解除できたよ! さ、エリー。開けてごらん」

「はーい! ですの!」

「――ぁ」

 背負っていたエリーを下ろし、宝箱を開けさせる。

 一方、メイちゃんが小さく声を漏らす。メイちゃんも開けたかったのかな……ごめんね、ここから出たらなんだってするからもう少し我慢して!


「うんしょっ……わぁ! 可愛いリュックですわぁ!」

 中身は革でできてる、黒くて小さめのリュックだった。このランク帯だとちょっとした効果付きかもね。


「可愛いかばんだね! みんな、このかばんはエリーにあげてもいい?」

「もちろんです!」

「はい」

 正直、小さすぎて実用性に欠けるからね!


「わぁ~い! ありがとうですわぁっ! 大事に使いますわぁ~!」

 ぴょんぴょん飛び跳ねながら喜ぶお嬢様。

 頑張って歩いたご褒美にはちょうどいいんじゃないでしょうか。


「さ、転移が始まるよ!」

 ボスを討伐した後の帰還のためのワープ……に割り込んで元のダンジョンに戻る『転移』を発動!




「ふぅ、戻って来ましたね」

 意味深な顔でこっちを見るメイちゃん。


「良かった……イレギュラーなことが起きていたので心配でしたが、戻れたようですね!」

 疑念を全く抱いていないデール君。


「これが帰還のワープ、びっくりですわぁ~」

 何も考えてなさそうなエリー。


「良かった良かった!」

 目的も無事達成でき、満足な俺。




 それぞれの思いを胸に、帰りの道を歩むのだった。


 ……何か忘れているような……?


 ◆◇◆◇


 ――その夜。


「では坊ちゃま、今日はいろいろとお疲れさまでした。おやすみなさい」

 就寝前、メイがそう言って部屋を出て行こうとする。


「待って、メイ。今日は……いや、いつもありがとう。これ、受け取ってくれるかな」

 いつぞや欲しがっていた指輪を渡す。


「今日もいろいろ気を配ってくれたりフォローしてくれたり、本当に助かった。それにいつも我慢させてしまって申し訳ない」

「まぁ……ありがとう、ございます……私こそ困らせるようなことを言ってしまい……申し訳ございません」

 そう言って涙を流すメイ。


「どこまでも、何があってもアレク様のお傍にいさせてください」

 よし、チョロい。


「あぁ、俺からもお願いするよ。いつまでも傍にいてくれ」

「もちろんでございます。あぁ、この指輪からアレク様の温もりを……魔力を感じます」

 うんうん、そうだろうそうだろう。


「例え急いで作ったとしても、アレク様がくださったもの。生涯大切にしますね」

 ぎくっ。


「や、やだなぁ、何のことぉ?」

「例え指輪を渡しとけば許すだろうと思っていたとしても、プレゼントはプレゼント。嬉しい気持ちには変わりありません」

 ぎくぎくっ。


「それと、悪だくみも程々に。騙し通すなら最後まで気を抜かないで下さいね。今日のダンジョンみたいに」


「……」

「……」


「っぷ。ふふ。アレク様はもう少しご自身の気持ちに素直になった方がいいと思いますよ」

「え? んん?」

 何? どういうこと?


「ふふ。坊ちゃま、おやすみなさいませ」

「お、おやすみ……」


 本当どういうこと? 訳が分からん! 

 何だよもー! モヤモヤするっ!


「あ、そういえば後ろからついてきてた護衛の方々はどうされたのです?」

「……」

 ……忘れてた!

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