第13話 10歳~はじめてのきゅうしゅつ~


「(ん?)」

「――!」

 天井から何かの気配を感じたので上を見てみる。すると、いつぞやの忍者さんがこっそり天井の板を外しているところだった。


「(な、なぜ気が付い――い、いや。王子、私は味方です。御身をお守りに――)」

「あれれ~? 何だか変な人がいるよぉ~?」

「ちょっ!」

「あん? 何者だてめぇっ! 」


 ◆◇◆◇


「……」

 この暗愚めっ! あそこは黙って助けられる場面だろう! という顔をしている忍者さん。

 ぼこぼこにされ、後ろ手に縛られ、猿轡をさせられて……何とも気の毒な姿だ。

 そう言えば、以前の時はあのまま忘れるよう暗示をかけていたっけ。


「ぅん……はっ、兄さま、この方は……?」

 スヤスヤ眠っていたパーシィが目を覚まし、間抜けにも捕まってしまった助っ人を見やる。


「助けに来たのに捕まった、間抜けだよ」

「~~~っ! ~~~っ!」

「(ちっ、せっかく兄さまと2人っきりだったのに)そ、そうですか……残念ですね……」

 お前のせいだっ! そう血走った眼で俺を睨む間抜け。

 パーシィや、聞こえておるぞ……残念ってのはどういう理由でだい?



「へっへっへ~、そこの間抜けのおかげで身代金もたんまりだぜぇ~!」

「貴様ッ! 兄さまを侮辱するな!」

「あん? 生意気言ってっと痛い目見せてやるぞっ!」

「やれるものならやってみろ! お前らなんか――っ!」


 ガギンッ!


 悪漢に殴られるパーシィ、を庇う俺。

「いっでぇっ!?」


「ぐぅっ! やめろ、弟に手を出すなっ!」

「兄さまっ! 大丈夫ですか!?」

「あ、あぁ……すまないパーシィ、心配かけてしまって……」

「そんなっ! 私こそ申し訳ございません!」

「いや、いいんだ……パーシィが無事でよかった……」

「に、兄さま……っ!」 


「いって~、何で殴った俺がこんなに痛いんだよっ!」

「バカめっ! 人を傷つけるとはそう言う事だ! 相手を傷つけた分だけ自分の心も傷付けているんだぞっ!」

「兄さまの言う通りです!」

「……」

 何言ってんだこいつという顔をしている忍者さん。


「何を訳わからんこと言ってやが――っ!」

「殿下が傷つけられた気配がっ! 今お助けしますっ! おのれ悪漢めーっ!」


 あ、この声は! 我が忠実なる僕、デール君!

 大暴れしながら入口の誘拐犯たちを吹っ飛ばしている。


「何だてめぇはっ! こっちには人質がいるんだぞっ!」

「ふごふごふごぉっ!」

 そう言って俺を担ごうとした悪漢を忍者さんが阻む! さすが忍者さん! 縄抜けは十八番!

 何だかかっこいいことを言ってる気がするけど、猿轡されててよく聞こえない。


「くそぉっ! てめぇは間抜けのくせしてっ! ぐはっ!」

「~~~っ!」

 忍者さんの静かな、しかし激しく燃え上がっている怒りの炎は誰にも消せやしないっ!


「ガハッ! ……ちくしょう、もう少しで大金が……」

「ふごっ!」

 見事誘拐犯の男をノックダウン! すごい、まともにやれれば強いじゃないか! 不意打ちだけど!


「殿下っ!? おのれ怪しい奴っ! 覚悟ぉっ!」

「ふごふご!? ふごーっ!!!」


 そこにデール君が現れ、忍者さんをボコボコにする。

 まあ、全身黒ずくめに加えて猿轡だもんなぁ、パッと見は怪しい奴だ。しょうがない。


 ◆◇◆◇


「助かりましたね、兄さま!」

「あぁ、良かったよ。けど、結局パーシィにいいところを見せられなかったなぁ~」

「そんなこと……私は兄さまがいてくださっただけで……」


「パーシィ……」

「兄さま……」


 やめろ、やめるんだパーシィ! 熱い瞳で見つめないでくれ!

 しかしかくいう俺も目を逸らすことができないッ! なぜなら……なぜならそれはっ!


 パーシィが可愛すぎるんだッッ!


 もちろん、弟だからとかじゃあない! 見た目だ! 見た目が可愛すぎるんだッ!

 幼いながらも全体的に整った顔立ちッ! くりっくりの瞳に長く伸びた睫毛ッ! 美しいブロンドの髪を長く伸ばし、2つに分けて結んでいるッ! つまりツインテールゥ!

 そして現在ッ! 紅潮した頬! 上目遣いでッ! 濡れた瞳で俺を見つめているッッ!

 んあ~! パーシィッ! パーシィッ!


 正直! 今で出会ったどの女の子(女神含む)よりも可愛いいいッ!




「兄さま……私、まだ怖くって……今夜は一緒に寝てくれます、か?」

「あ、あぁ、もちろんさパーシィ! お前が眠るまで見守ってるよ!」

「あぁ! 兄さま嬉しいっ!」

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