第12話 10歳~はじめてのおうぞくゆうかい~
「兄さま! おはようございます!」
「お兄さま! おはようございます!」
「おぉ、パーシィにシアじゃないか! おはよう!」
我が可愛い弟のパーシヴァールと妹のシアーだ。
第3王子のパーシィは今年で5歳、俺とは母親が異なる。というか、母親は以前俺についてくれていたメイドだ……おのれ、クソ親父めっ!
第2王女のシアーも同じく5歳。俺と同じ母親だ。
2人とも俺に甘えたがりな可愛い弟と妹だ!
ちなみに俺と母親だが、以前媚を売ろうと思って抱き着いた人が全くの別人だったということがあり……それ以来甘えるのはやめた。滅多に会わないから間違えたんだよ……。
他にも、第2王子のギルと、ギルと同じ母親を持つ第1王女のマリーベル。今のところの兄弟関係である。
覚えるのが大変なのでこれ以上増えないで欲しいと思い、こっそり父親に定期的に精力が減衰する魔法を使っている。
「2人揃ってどうしたんだい?」
あの親父と違って、我が弟と妹は可愛いなぁ~!
「僕たち、今日は町の視察に行くように言われたんです!」
「だから、お兄さまも誘おうと思って!」
はわわわ~! 町にお出掛けするからって誘ってくれたのね! 絶対行くよぉ~!
「メイ、今日の予定は全てキャンセルだ。2人を護衛するぞ!」
「……かしこまりました」
そいえばメイと出会うきっかけとなった孤児院への視察も、俺が5歳の時だったなぁ~。
「護衛だなんて兄さま。そんな危ないことはありませんよ~!」
◆◇◆◇
もっと早く気付くべきだった。あれがフラグだったことに!
ちくしょう! シアが猫につられて駆け寄った先でアイスを持ったいかついおじさんにぶつかっちゃって思いっきり難癖付けてたらいつの間にか置手紙とともにパーシィがいなくなってたぞぉっ!
「攫われてしまいましたね、パーシバル王子」
冷静だね、メイちゃん。
こっそり後をつけてきていた護衛の兵士も慌ててるってのに。
「ぬおぉおおおお! 我が可愛い弟を攫うとは! おのれ誘拐犯めっ一族郎党皆殺しにしてやるぅぅぅっ!」
「落ち着いてください、坊ちゃま」
何でだ! メイちゃんは何でそんなに冷静なんだよっ!
「(お忘れかと思いますが、パーシバル様が身に着けていらっしゃる、坊ちゃまが誕生日にお渡しした耳飾り。あれの効力が有効の間は問題ないかと)」
……そう言えば、先日の誕生日に渡したんだっけ。実験で作った自動発動型の身体の防御力を向上させるイヤリング。いわゆる防御力+1みたいな感じの、ゲームとかではよくみる奴だ。
「メイはシアを連れて王宮へ」
「(急に落ち着きましたね。)かしこまりました」
うっさいわぃ。
「お兄さま! パーシィは大丈夫なんですか!?」
「大丈夫、僕が何とかするよっ!」
「お兄さまっ! ……どうか、お兄さまもご無事で……」
メイに連れられて行くシアーを見送りながら、気合を入れる。
「よし、行くぞお前ら!」
…………。
……?
誰も、いない……?
第3王子誘拐にみんな慌ててしまったのか、誰もいなくなってしまった。すみません、第1王子が無防備なのですが……。
しかたがない、かくなる上はっ!
「誰かー! 誰かいないのかー!」
◆◇◆◇
「オラッ! てめぇもここで待ってやがれっ!」
「いってー!」
「兄さま!」
パーシィの捕まっている部屋に蹴り入れられる。
あの後、無防備な姿で待ってたらご丁寧に誘拐してくれたよ。助かるわー。
「おのれ……兄さまも危ない目に合わせるなんて……絶対に許さない!」
「パーシィ、無事でよかった!」
ケガはないか、変なことされてないか、魔法にかけられていないかよく観察する。特に問題ないようだ。後でより正確な検査魔法を開発して調べてみよう。
「うるせぇぞガキども! 痛い目にあいたくなけりゃ黙ってろ!」
「お前ら、何が目的だ? なぜパーシィを攫った!」
「あん? 金に決まってんだろう! お前らの身と交換でお小遣いを貰うのさ!」
良かった、金だったか。パーシィが可愛すぎて、とかじゃなくて安心した。これなら変なことはされずに済みそうだ。
しかし……組織的な犯行、手際の良さ。恐らくこの事件には黒幕がいる!
「全く、毎回ガキが5歳の年に碌に護衛もつけずに町を見て回させるなんて、王様もバカだよなぁっ!」
た、確かに……そう考えると別に黒幕なんかいないかも……?
「(兄さま……どうか、兄さまだけでもお逃げくださいっ)」
「(パーシィ、大丈夫だよ。何があってもお前は守るから)」
例え槍が降ろうとドラゴンが降ろうが!
しかし、まぁ、確かに王宮側の不備が招いた問題でもある。しばらく推移を見守るか。
「(兄さま……本当は1人で心細かったんです……)」
「(あぁ、パーシィ。1人でよく頑張ったな)」
そう言ってパーシィの体を抱き寄せる。
わずか5歳、無遠慮な悪意にさらされ1人ぼっち。心細かっただろう。
「(兄さま……あたたかい……)」
「(う、うむ。風邪をひくといけないからな……)」
パーシィがトロンとした目を俺に向ける。
「(あぁ、兄さま……兄さまさえいれば、他に何も……)」
「(え、何か言ったか?)」
「(い、いえ。何もっ)」
……決して聞こえなかった訳ではない。俺は鈍感系でも難聴系でもないのだ。
問題から目を背ける系なのだっ!
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