第11話 7歳~はじめてのみつぎもの~
さて、もう一つの目的であるエリーへのネックレス。これが全然でない。
これまで倒した魔物は、ゴブリン、ホーンラビット、スライム、ホブゴブリン、計30匹は超えていると思う。
どいつもこいつも魔石くらいしか落とさないんですけど!
「本当にここで落とすのか……?」
「どうでしょう……サリーさんはレアドロップだと言っていましたし、根気が必要なのではないでしょうか」
「殿下! きっともうすぐ出ますよ!」
デール君は前向きだねぇ……。
「そもそも、魔物とネックレスってほど遠いイメージなんだが……」
「それもダンジョンの不思議の1つですね。関連性の全くないものを落とすこともよくあるそうです」
そして見えてきた最奥の扉。ボス部屋ってやつかな?
「これも不思議の1つ、ボス部屋ですね。一定の周期で少し強い敵が現れ、より豪華な報酬をドロップするとか」
「ふむ……こいつに賭けるか!」
「ボスはかなりの強敵と聞きます。一度休憩を取り、入念な準備を――殿下っ!?」
デール君の話の途中で扉を開け放つ。こっちは早く帰って寝たいんだ!
中に入ると、ホブゴブリンが3体いた。
「じゃ、1人1匹ね!」
言うが早いか、2匹が跡形もなく消えた。
「……え、後は私だけ? メイディ殿の動きが全く見えなかったのですが!?」
「ほんの1割程度です」
俺なんか0.5割だもんね!
「頑張れーデールー! 早くしろー!」
「っく……はっ!」
まぁ、デール君も瞬殺なわけですが。
ま、所詮初心者向けダンジョン、こんなもんだろう。
「おぉ! 奥の部屋の扉が開きましたよ! 宝箱が見えます!」
「お、ほんとだ! どれどれ~」
ネックレス来い! ネックレス来い!
「お待ちください! 宝箱は罠が仕掛けられている可能性が!」
「オープン! これは……指輪?」
デール君が何か言ってるのを無視して箱を開ける。
……や、ちゃんと魔力の流れは確認したよ? 罠とかあれば違和感を感じる……ハズ。
「――っ! ハズレ! ハズレです坊ちゃま! そんなものは捨ててもう一度挑戦しましょう!」
メイちゃんが大慌てで指輪を投げ捨てようとするが……。
「ん~、まぁ、ネックレスじゃないけどいいでしょ」
もう寝たい。限界突破してる。
「坊ちゃま! 指輪を女性にあげるなんて、どういう意味かわかっているんですか!?」
「そりゃまぁ……けど、一応婚約者だし。問題なくない?」
俺は鈍感系主人公ではないのだ!
「うぅ……では……私にも、下さい……」
「――っ! あ、あぁ……別の機会でよければ、メイにも渡すよ……?」
え、これはそう言う意味? そうだよね!? そうだよねぇっ!?
「(一応立場的には一介のメイドが主人に指輪をねだるなんて……)」
デール君の現実的な呟きは聞こえない振りをしておくことにした。
◆◇◆◇
ようやく自室に戻り、閉じようとする瞼を擦りながら指輪を眺める。
よく物語で聞くような鑑定の魔法は使えないが、特に魔力は感じないところを考えると本当にただの指輪なのだろう。材質すらわからない。
「……」
一応、初めてのダンジョン踏破の記念品なんだよなぁ~。
「……」
だから別に他意はない。所詮親が決めた結婚相手だ。必要以上に何かしてやる必要はない。
「……」
だから、あくまで記念に! そう、ただの気まぐれ!
「――!」
◆◇◆◇
「ごきげんようですわアレク! ネックレスは手に入りましたの!?」
次の日の朝。獲って来いと言われた次の日の朝。手に入ってる訳ないじゃん!
「はい! ネックレスじゃないけど、これでいいかな……?」
そう、普通ならね! 上目遣いで渡すのがポイントだ!
「わぁ~……きれい……」
「あらあら、まあまあ」
サリーさんがにたにた笑いながら見てやがる。
「アレク、大好きっ!」
ちゅっ!
「~~~っ!!!」
「あ、ありがと……」
メイさんや、特大の殺気を飛ばすのはおやめなさい……。
「えへへ~! ですの!」
エリー嬢はとても気に入ってくれたようだ。いろんな角度から眺めては、ですのですの言っている。
頑張った甲斐があるってもんだ!
「(件のダンジョンのランクでは魔道具は出ないと聞きます。あの指輪からは魔道具特有の魔力を感じます。つまり?)」
ゴホッゴホッ! 紅茶が変なとこに入った!
「(……さ、さぁ? 何のことやら……?)」
「(ちなみに、魔道具化の技術は一部の魔術師しか扱えない高等技術です。お気をつけくださいね、うふふふ)」
「(……肝に銘じます)」
サリーさんの察しが良すぎて怖い……。
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