プロローグ②~しかし、成功する者はみんな努力している~

 ……今度は。来世では!



 搾取する側に!


「え?」

「わかりました。転生の話、ありがたく受けさせて頂きたいと思います」


「え、あれ~?」

「つきましては、俺に与えられるギフトを教えて頂けますか?」


「え、あ、うん。……まぁいっか~。これなんだけど~」

 そう言って、空中にズラーっと様々な能力名が表示される。


『必中ノ理』『完全ナル肉体』『無限ノ魔力』『滅殺ノ魔道』『夢幻ヲ纏イシ者』……。

 いや、わかりにくっ!


「……ギフトは1つだけですか? それと、魔力とかありますが」

「はい~、ギフトは1つだけ、転生先はいわゆる剣と魔法の世界です~」


 ふむふむなるほど。剣と魔法ということは、腕っぷしが重要だな。

 力がないと、思うように生きることは難しい。比較的平和だった前世でも強く実感した。

 とは言え、極端に目立つものは避けるべきかな……それに、努力次第でどうとでもなる物も避けたい……。

 そうなると……成長補助系が無難かな?


「成長補助系はこちらになりますね~」


『栄光ヘノ架ケ橋』……成長ポイントに補正がかかるよ!

『賢者ヘ至ルモノ』……魔法の習得がしやすくなるよ!

『限界ヲ知ラヌ者』……げんかい? なにそれ、おいしいの?


 などなど。ご丁寧に説明まで加えてくれた。


「魔法には習得できるものとできないものがあるんですか?」

「ん~、頑張れば何でも使えるとは思うよ~。向き不向きはあると思うけどね~」

「魔法……私のいた世界では空想の概念でした。詳しく教えてくれませんか?」

「いいよ~! 魔法はね~……」

 

 女神様が教えてくれたことを要約すると、魔法使いとしての強さは3つの要素、つまり『魔力総量』『出力』『制御力』が大きく占めるとのこと。具体的な使い方としては、形状や対象などのイメージを強くもち、自身の魔素=マナに伝えて結果を出す、なんだとか。


 試してみたらと言うので、火の放出をイメージしてみる。

 何度かの試みで成功した。

 


 なるほどなるほど。魔法に関しては問題なさそうだ。

 そうなると、アレにしようか!

 努力とか単純作業とか、嫌いじゃない。何せ死ぬまでそれをしてきたからね!


「ではこの『限界ヲ知ラヌ者』でお願いします!」

「おぉ~、それに目をつけるとはさすがですね~、ちちんぷぷいほいっとな~!」

 何がさすがなのか。


「他に何か希望とかあるかな~? できる限りの希望は叶えてあげるよ~!」

「おぉ! さすが女神様! 慈悲に溢れていらっしゃる!」

「でしょ~♪」


「では、ますスキル名を『限界突破』あたりにしてください!」

「えぇ~? こっちの方がかっこいいじゃん! それに、他人からは見られないと思うよ~?」

「変えてください!」

「も~、しょうがないなぁ~」

 正直ダサ、いや何でもない。


「それと、生活に困らず、安心して私の技術や魔法が研鑽できる環境だとありがたいです!」

 生まれは努力ではどうにもならないからね。才能を磨くためには環境が一番重要な要素だと思う。

 

「ふむふむ~、ではあそこかな~? こっちにしようかな~? よ~し、こっちにしよ~!」

 転生先が決まったようだ。


「他にはどうする~? 見た目とか、イケメンとかにしちゃう~?」

 見た目か~。これまた難しいんだよな~。あまりに美形過ぎると近寄りがたくなるって言うし。

「超絶イケメンでお願いします!」

「は~い♪ 今の顔をベースに、いい感じに整えてあげるね~! 他には~?」


 他かぁ……特には浮かばないなぁ……。才能(ギフト)、見た目、環境……。

 うん、大丈夫でしょう!


「……いいの? 本当に?」

「えぇ、大丈夫です!」


「……では~! 準備ができたら~こちらのゲートに飛び込んで下さ~い♪」

「よしっ! それじゃあ……」

 え、準備していいの?


「え? まぁ、はい、いいですけど~……ここは他の世界と時間が隔絶している空間ですし、ちょっとくらいなら~……」

「よっしゃー! 実は魔法の使い方に不安があったんですよねー!」


「はぁ……」

 女神様の了承とも溜息ともとれる呟きを聞きながら早速魔法を試す。


「別にいいんですけど、ここで学べるのは『制御』くらいですよ~? 『総量』も『出力』器によりますし~」

 魔力を放出、意識して形を曲げてみる。

 くっそー、やっぱり難しい!


「器を得てから修行した方が効率的では~……」

 どうやっても魔力が操作できない。

 何かイメージしてみようか……?


「あの~……」

 何だか粘土みたいだな……コネコネ。

 おぉ何だかうまくいきそう!


「……」

 この粘土を氷に……くそっ弾けた!

 もう1度だっ!


「私、ちょっと席を外しますね~」

 



 ◆◇◆◇




 ――女神視点――


「行きましたか」

 転生を行う空間から出て、すぐに戻る。

 時間の流れが隔絶しているため、私の体感では一瞬の出来事だ。

 さすがにあんな退屈な作業を見続けるなんて、拷問以外の何でもない。


「どのくらいの時を過ごしていたのでしょうか」

 自身の所有物を収納している空間から、ソファを出す。


「彼はあの選択で良かったのでしょうか」

 そしてプロジェクターとスクリーンとスピーカーを出す。

 特にスピーカーはへパイトス神とアポロン神にお願いした特注品だ。


「肝心なことを願い忘れていると思うのですが……まぁ、いいでしょう」

 ついでにポテチとコーラ。

 時が止まった世界、労働後の疲労。となれば、やることは1つ。

 プロジェクターに『プリプリ♪マジカルキュアラー伝説☆』をセットする。

 おっと忘れてた、彼の世界に繋がっていたゲートを閉じなければ。




「いっけ~! キュアキュア~! がんばえ~!」

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