9.気配を感じる…二方向から。

パーティが終わった翌日、私は朝早くから調査の準備をしていた。捜査はすごく厳しいとハルも言っていたので、変装する。

何故かというと、どの地方でも領主を恨むものは多いからである。

領主様のもとで働く私は、あまり外に出ないのでほとんど顔は知られていない。

けれど、もしもに備えて庶民面できる服装を着たのだ。


ジョージ達もとい、ハルたちは、今日はこの屋敷に泊まっている。

まぁ、目を付けられないよう、あまり目立たないように行動しよう。

お嬢様が、ドアの先まで送ってくれた。


「ハナ、気を付けるのよ……」

「ええっ?そんな深刻な顔しなくても……」

「かなり厳しい捜索になりそうだから」

「まあ、今日は安全の見回りって感じでやろうと思いますので」

「わかったわ……。行ってらっしゃい‼」

「―――行ってきますです!」


にこりと笑って門の外へ足を踏み出した。

ああは言ったが、初日だからと言って手を抜いていられない。

心配させないように嘘をついたってことになる。

罪悪感を感じながらも、すこし不安な気持ちが現れる。


宣言通り今日は見回りだけにしてしまおうか。


そんなことを思ってしまう。


「……いやいやいや」


ふるふると首を振って、迷っていたものを振り捨てた。

―――私は所詮、候補が何万もいるうちの教育係ですから。



下町の市場が近づくと、だんだんと人の声が増えていく。

やがて、「いらっしゃいませー‼」と威勢の良い宣伝も聞こえてきて、久しぶりの光景に口角が緩んだ。


教育係になってから、外出が制限されていたため、年に1,2回ほどしか来ていない。しかも仕事で来ているので、自由の保障はなかった。

今回は特別に抜け出させてもらってる。

バレてもお嬢様が援助していただけるそうだ。


「えっと、まずはなにを調べれば……」


そういえば、何も考えずに来てしまった。

ピキーンと全身の筋がのびた。


ん―――?


どうやら、なにかタブーを起こしてしまった……!

気配と視線を感じる、二方向から。


それも、こんな素人が見抜けてしまうような……。

両方ともなにかすごい感情があるらしい。

駄々漏れである。

ひとつは殺気……もうひとつは、ん?変人から見られているのかな。凄い目立っているんじゃないか。


振り返ることができないが、あとで的中したことをしる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る