8.大丈夫です。強いので!

「やっぱ君に依頼するのやめる」


突然、ハルがきっぱり告げた。

せっかく乗り気だというのに、何が問題だったのだろう。


「「ええっ」」

「君よりもこの依頼にあった人物を見つけたんだ」

「そ、そんな……」


せっかくの儲け話、受けたかった。

正直、お小遣いはとても厳しい状況にあるから。

もし危険が伴ったとしても、きっと私はしぶとい。


「私の体を気遣っていただけているのなら気にしないでください」

「だから、適任な人物がいたんだよ」

「そう、ですか」


激しく落ち込みかけたその矢先、


「待ってください!」

「どうしたんですか、アスカ嬢」


お嬢様が異議ありと、ひと声あげた。

またもや立ち上がり、地震のようにテーブルが揺れた。


「わたくしからの命令です。ハナ、行ってきなさい!」

「えっ、いいんですか⁉」

「アスカ嬢、さっきから言っているじゃないですか……」

「ハル、ですから、今のはわたくしからの命令です。ハルはハルで、その適任とやらに任せればよいです。ハナも同時捜査しますから。その方が効率が良いでしょう」

「……」


すっかり黙り込んでしまったハルは、下を向いて、軽く唇を噛んだ。

なんだか修羅場になってしまった。しかたない。私から喋るしかない。


「大丈夫ですよ!私強いので!」


この言葉に偽りはない。

だって、実際に私は教育係。教育係は、貴族の振る舞いや基礎的な知識を授けるだけでなく、ボディガードでもある。そのため、お嬢様のもとへ着くまで、頑張って空手3段までは習得したのだ。

もともと、少しだけ運動ができる方だったので早く終わった。


「……わかったよ。そこまで前向きなら、いいよ」

「ありがとうございます」

「でも頑張ってね、相手は相当強いよ」

「ですよね……」

「より早く捕まえるため、君には明日から捜査開始してもらう」

「あ、明日⁉」

「話が違いますわ」


話が唐突過ぎる。


「そのくらいの覚悟で臨んだほうがいいって事」


決して睨んではいないものの、圧力のある目で、私のほうを横目で見る。

と、しばらくの沈黙を打ち破るノックが二回ほどされた。


「は、はい!」


扉を開けると、メイドの偽名がマオ、本名イオリの子がいた。

教育係のほうが位が高いので、本名も知っている。


「あっ、お話し中でしたか?」

「全然大丈夫です。なにかあった?」

「あの、今日はジョージ様を招いての食事会で、今いるメイドだけじゃ手が足りなくて……。もしよかったら、ハナさんにも手伝っていただけたら……」

「わ、分かりました!すぐいきます」


一礼して、マオは去っていった。


「えっと、だそうなので、私は厨房に行ってきます!」


二人に一言だけ残すと、急いでマオの行った方についていった。


―――このあと、二人はすごく厳しい話をするが、私は金輪際知ることのない。

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