3.(お嬢様…怖いですよ?)
午後4時54分、移動開始。
午後4時54~59分、移動。
午後5時00分、応接室到着。
午後5時01分~6時15分、面談。
というのがこの後の予定である。
もう4時40分だというのに、お嬢様、寝っ転がって全然動こうとしない……。
「早く準備してください。遅れてしまいますよ」
「嫌。ジョージとは絶交した中ですもの(心の中で)」
「そうはいっても、今回は内容が週刊誌に掲載される面談で、普段の会話とは違いますし。教育係の私も何と言われるか分かりません」
「はぁ、分かりましたわ……」
渋々という感じで立ち上がり、目をこすった。
ついでに伸びをすると、メイクセット机に座り、私の名前を呼んだ。
「ハナ、髪をといて」
「分かりました」
色素の薄い金髪でサラサラとした美しい髪をしている。
それを高級ぐしでとくが、あまり意味がなく、手ごたえ無く手が下に降りて行った。
「お嬢様、なんでそんなサラサラなんですか……」
「そう?ハナが変わっているだけじゃない?」
キキキッ
と小悪魔みたいに笑うお嬢様。
この子、時々意地悪なんだよなぁ。
ジト目で彼女を睨みながら、こういう時が仕事なんじゃないかと頭の中でピカーンと豆電球が光った。
「お嬢様。ご領主様の娘なるもの、他人にそのような言い癖はいけません」
「ハナは他人じゃありませんわ」
「はぁ。一週間夜食無し」
「今の取り消します!取り消しますから!」
夜食というのは、お嬢様がご領主様にお願いして、夕食後のあとのおやつのことだ。
自分でも甘やかしすぎの意識はあるのか、領主様からいつ取り上げてもいいと言われた。
ふふーん。こんなにいい反応をしてくれるのか……これは使える。
黄色の煌びやかなドレスの背の紐を絞めると、お嬢様は分かりやすくため息をついた。
「はぁ、いやですわ」
と言いながら、ゆっくり部屋の扉を出て、靴を履き替えた。
時間はピッタリである。
この年でお嬢様のようにきれいに歩ける子は少ない。
まぁ、私が教育係だから当たり前かもしれませんけど☆
応接室に着いた。
もう一度ため息をついたお嬢様を横目で見ながら、メイドを装って扉を開ける。
中にはダイヤモンドと純金でできたシャンデリアが目に飛び込んでくる。
なんてリッチ。
フッカフカのソファにお嬢様が腰を掛ける。
その後ろに立った私。あることに気が付く。
(わたくしなんでジョージなんかと会わなきゃいけないんですか?ああぁ。一体あの勘違い奇人居丈高(いだけだか)ナルシストなんかと面談しなきゃいけなくて?話すことないって言ってんだろうがですわ。あいつ。やっぱ憎き存在他ならないですわね。嫌いですわ。ほら、その気取った前髪を掻き揚げるしぐさとか。虫唾が走るんですけど。ほら、空気読まない感じとか。わたくし今めっちゃ睨んでるはずなんですけど。やっぱ祟りますわ。藁人形の作り方を調べなければ)
(お嬢様……怖いですよ……?)
後で藁人形の作り方を聞かれそうだな。なんて答えよう……。やっぱ怖すぎんだろお嬢様?
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