第10話 前途多難だった…

 本屋の漫画コーナーにいる僕と健吾君の元に、宇佐美さんとみのりが用件を済ませてやってきた。


話を膨らませるために、健吾君にお気に入りの漫画をみのりに見せるように頼んだところ、互いに読んでる事が判明。ようやく2人が話し始めたのだった。



 「私達、どうしようか?」

宇佐美さんが僕の耳元で囁く。


この行動に意味はないはずなのに、何故かドキドキするよ。


「そうだね…」

2人きりにさせたほうが良い気がするし、見守ったほうが良い気もする。


「さっき聴いたんだけどさ、大杉さんも〇リカやるらしいじゃん」


「うん…」

健吾君の言葉を聴き、みのりが僕をチラ見する。


言わないほうが良かったかな? 自分の知らないところで話題にされるのは気分が悪いと思うけど、 多少は仕方ない気がするし…。


「今度おれの家でやろうよ! 大杉さんの家でも良いからさ!」


「えっ」

みのりが軽く引いている。


「あのバカ…」

そう独り言を漏らす宇佐美さん。


「あれ? おれ変な事言った?」

2人の反応が悪いので、健吾君はオロオロしている。


「健吾、距離詰め過ぎ!」


宇佐美さんはお説教モードに入ったように見える。


「んな事言われても、部屋じゃないとゲームできないじゃん?」


「異性の部屋に上がったり誘ったりするのは、もっと段階を踏んでからよ!」


「……」


「みのりちゃんゴメンね。健吾がデリカシーなくて」


「いえ良いんです。驚いたあたしも悪いので…」


「女子って面倒だな~」


健吾君。その気持ちはわかるけど、声に出しちゃダメだよ…。


「健吾!」

宇佐美さんも気になったのか、強めのトーンで制する。


「おれ帰るよ」

うんざりした様子の健吾君は、僕達から離れていく。


せっかく仲良くなると思ったのに…。前途多難だね。



 僕・みのり・宇佐美さんの3人は、漫画コーナー内で立ち尽くしている。


「今日はここまでみたいね…」


「そうだね」


宇佐美さんの言う通りかな。健吾君がいない以上、本屋にいる理由はない。


「みのりちゃんバイバイ。実君も」


「うん」


宇佐美さんは僕達に小さく手を振った後、離れていく。


「お兄ちゃん、あたし達も帰ろ」


「ああ…」


僕とみのりは一緒に本屋を出た。



 「前友達から聴いたんだよ。部屋に上がろうとしたり誘ったりするのは“下心があるから”って」


帰り道の途中、隣にいるみのりがそう言った。


「宇佐美君はどうだったのかな? お兄ちゃんはどう思う?」


「難しいところだね。最初は本当にゲーム目的だったとしても、回数を重ねる度にそう思うかもしれないし…」


「だよね。やっぱり彼氏を作るって大変だな~」


僕には彼女がいないから、みのりに気が利いた事が言えない。どうする事がベストなんだろう?


これ以降、僕達は会話せずに帰路に就く…。

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