第7話 部下は上司の鏡?

 放課後になり、僕と宇佐美さんは一緒に校門に向かう。みのりと健吾君が待っているからだ。


2人の距離を縮める方法を宇佐美さんは考えてるみたいだけど、どうするのかな?



 校門に着いたところ、みのりと健吾君は少し離れて待っていた。お互い恥ずかしがってるようには見えないから、偶然近くにいると思ってる?


「あ、姉ちゃん!」


「お兄ちゃん!」


僕達に気付いた2人がそばに来る。


「姉ちゃん、この人誰?」


言うまでもなく僕の事だ。初対面だからね。


「みのりちゃんのお兄ちゃんよ。みのる君って言うの」


「初めまして、健吾君」

緊張されないように、優しく挨拶しないとね。


「はぁ…」


健吾君の表情は硬いままだ。何でだろう?


「お兄ちゃん、隣にいるのが昨日言ってた宇佐美さん?」


「そう、あかねって言うの。よろしくね、みのりちゃん」


僕の出る幕はなかった…。


「はい!」


女子2人は良い感じなのに、僕と健吾君は微妙なのは何で?


「姉ちゃん。一緒に来たって事は付き合ってるの?」


「えっ!?」

僕と宇佐美さんはハモる。


微妙な対応の正体はこれだったりする?


「違う違う! あんたが私と一緒じゃないと心細いように、みのりちゃんも実君と一緒が良いみたいなの」


健吾君はみのりをチラ見した後…。


「それはわかるけどさ、2人が一緒に来る理由はないじゃん? おれと大杉さんは別々に来たよ?」


「私と実君は席が隣同士だからね。用事がない限り、一緒に来てもおかしくないでしょ?」


さっきから気になってるけど、宇佐美さんは僕の事を“実君”と呼び続けている。思ったより照れ臭いな…。


「なんだ、付き合ってないのか~」

ホッとした様子の健吾君。


「付き合ってたとしても、あんたが気にする事じゃないと思うけど?」


「気にするよ! 父さんが言ってたじゃん『部下は上司の鏡』って!」


健吾君の謎発言に、全員首をかしげる。どういう事だろう?


「おれがこの人に失礼な事したら、姉ちゃんの印象が悪くなるよね? だから真面目モードになってたと言うか…」


「ふ~ん、あんたなりに私を気遣ったって事? その気持ちだけもらっておくから」


健吾君はちょっと不器用なのかな? みのりと偶然目が合った後にそう思った。



 「そういえば宇佐美さん。この後はどうするの?」

思ったよりおしゃべりが長引いたから忘れかけていた…。


「本屋に行きましょうか」


「本屋? 何で?」

それがみのりと健吾君の距離を縮めるの?


「制服を着た私達が寄れる所ってあまりないからね。本屋は真面目な話も遊びの話もできる最適な場所なの」


「なるほど…」

説得力あるなぁ。


「健吾、それで良い?」


「おれは真面目な話は嫌だな~」


僕も同感だよ。いずれ彼とじっくり話しても良いかも。


「みのりちゃんはどうかしら?」


「はい、大丈夫です」


「やっぱりみのりちゃんは良い子ね。健吾も見習いなさい」


「はいはい」


軽く聞き流す健吾君。宇佐美さんは世話焼きなのかな?


「それじゃ行きましょうか。みのりちゃんと健吾は隣同士ね」


2人は恥ずかしそうな様子で距離を詰める。


「私は健吾の隣・実君はみのりちゃんの隣が良さそうね」


「うん、そうしよう」


こうして、4人横に並んで本屋を目指す事になった。

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