第6話 ダブルデートのフラグ?
僕の隣の席の宇佐美さんが提案した件を、下校中にみのりに話してみた。反応は悪くなかったと思うけど、1対1は厳しいから僕に同行を求めてきた。
どこまでできるかわからないけど、乗り掛かった船だから最後まで付き合おう。
翌日。いつも通りに登校して自分の席に着くと、吉澤君がそばに来てくれた。普段ならこのまま話すけど、ちょうど宇佐美さんが隣にいるし先に言おう。
「宇佐美さん。昨日の事、みのりに話したよ」
「どうだった?」
「2人っきりは厳しいって。僕がそばにいてくれたら良いみたい」
「偶然ね。健吾も昨日、同じ事言ったのよ」
やっぱり宇佐美姉弟も、僕達兄妹と同じぐらい仲が良いみたい。
「偶然といえば、みのりと健吾君って同じクラスみたいだね。知ってた?」
「それも昨日初めて聴いたわ」
「そうなんだ。…どうやって2人の距離を縮めよう?」
宇佐美さんがどこに住んでるかわからないし、制服を着ながらの寄り道には限界があるからね。
「私に良い考えがあるから、放課後に校門に集まろうか」
「良いね、そうしよう」
…吉澤君がポカンとしながら僕と宇佐美さんを見ている。
「それじゃ、放課後ね」
「うん」
宇佐美さんは席を立ち、教室を出て行った。
「大杉、今の何だよ~? いつの間に宇佐美さんと仲良くなったんだ~?」
ニヤニヤしながら追及してくる吉澤君。
「別に仲良くなってないよ。妹と宇佐美さんの弟の健吾君のためだから」
「はぁ? どういう事だ?」
僕はみのりが彼氏を、健吾君が彼女を欲しがっているのを伝えた。
「ふ~ん。ダブルデートいけそうだな」
「ダブルデート?」
「ああ。1年生の2人と、お前と宇佐美さんの2人だ」
「みのりと健吾君はマッチしてるけど、僕と宇佐美さんはマッチしてないよ。僕は彼女を作る事に少し興味あるけど、宇佐美さんはどうかわからないから…」
既に彼氏がいるから、健吾君に構う余裕があるかもしれない。
「この手の話に詳しい奴と知り合いだったら良かったんだが…。悪いな大杉」
「全然気にしてないから」
宇佐美さんは僕基準だけど可愛いと思うから、付き合えたら嬉しい。でもそれは後回しだ。今はみのりのために頑張る事に集中しよう。
そして放課後になった。直前の休み時間に吉澤君が「オレは空気を読んで距離を置くわ」と言ってきたから、宇佐美さんとゆっくり話す事ができる。
「大杉君。待ち合わせ場所の校門に向かいましょうか」
「そうだね」
僕は宇佐美さんと一緒に教室を出る。
「宇佐美さんは、健吾君と一緒に登校してるの?」
昇降口に向かう間に、隣にいる彼女に訊く。
「ううん、健吾のほうが後。中学になってから、あの子寝坊する事が多いのよ」
ため息交じりで話す宇佐美さん。
「大杉君達はどう?」
「僕とみのりは一緒」
「へぇ~。みのりちゃんは良い子そうで羨ましいわ」
みのりの事にもかかわらず、すごく気分が良い。宇佐美さんも良い人だと思うよ。
そんな事を思いながら靴箱で靴を履き替え、僕達は共に昇降口を出るのだった。
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