静かな夜に
Soi
第1話
腕を掴まれた。振り返ると、サンタ服の美女がいた。背後には簡素な机と椅子。
急展開と魅惑のミニスカブーツから覗く絶対領域に戸惑いを隠せない。
「占いに興味はありますか?」
ない。だが俺は疲れで判断が鈍っていた。
エロサンタの正体は駆け出しの占い師で、自分を「ミカ」と名乗った。
ミカはドヤ顔で口を開く。
「小川さん先月結婚したでしょ? その奥さんとは上手くいっていないようにみえます」
「悪いが俺は独身だ」
占いが外れたことに気づいたミカがお金取らないからもう一度だけと両手を合わせる。イルミネーションに照らされた瞳は潤んでいるように見えた。
「わかったよ」
俺がしぶしぶ頷いた。ミカは笑顔で俺の手を包み込み、そっと目を閉じた。冷え切った手を覆う温もりが優しい。
少ししてミカがゆっくりと目を開けた。その美しさたるや。
「小川さん、休日出勤お疲れさまでした。イブにお一人で残業されたのは堪えたでしょう」
「え……」
「よく頑張りましたね」
彼女は今何をどうやって視たのだろう。
だがそれよりも、久々に面と向かって労われたことで、俺の中で何かが切れた。
馬鹿なことだとはわかっているのに、初対面の女の前で俺はみっともなく泣いた。
静かな夜に Soi @soisoisosoi
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