第31話 未来予想図


 僕らは紙とペンを取り出し、今後の計画についてまとめることにした。

 ユージェニーやシャルとガンダルシアの今後を話し合うのは楽しかった。

 ペンはさらさらと紙の上を走り、青いインクが僕たちの未来を鮮やかに描き出していく。


 露天風呂をグレードアップ。壁や脱衣所のある入浴施設にする。

 必要ポイント:15

 必要経費:30万クラウン


 懸け橋の先端にゲートを取り付ける。

 そこで入浴料を徴収する。

 夜間などに不審者が島に入り込まないようにする。

 必要ポイント:3


 温泉までの道を整備する。

 必要ポイント:10

 備考:岩を集める必要あり。シャルが頑張る!


「作らなきゃいけないのはこれくらいかな」


 食堂や温泉の看板は、ルボンの街でペンキを買ってきて自作すればいいだろう。


「ポイントはどれくらい残っているの?」

「今あるのは22ポイントだよ。明日になれば32になると思う」


 昼食会は大成功だったから幸福度も高いままのはずだ。

 明日には10ポイントの回復がのぞめるだろう。


「つまり、明日になればすべての施設が作れてしまうのね」

「いやいや、お金が足りないよ」


 温泉のアップグレードには30万クラウンの経費が掛かるのだ。

 最初の施設は無料で作れるけど、レベル2以上となるとお金が必要になってくる場合がある。

 それも、アイランド・ツクールの仕様だった。


「まあ、道路やゲートならすぐにでも作れるけどね」

「道路に使う岩ならシャルにお任せください!」


 言うが早いか、シャルはまた表へ駆け出して行ってしまった。


「この分なら今日中に道路とゲートは作れそうね」


 とにかくお金が必要だ。

 念願だった鶏とヤギを手に入れたら、こんどは温泉のために貯蓄をしないといけないな。

 それはともかく、ヤギと鶏のために家畜小屋を作らなくては。

 こちらは菜園の横に2ポイントで作ることが出来る。

 ファミリー動物園ができるみたいで非常に楽しみだ。

 ヤギは沿道の草を食べてきれいにしてくれるだろう。

 新鮮なミルクと卵が手に入ったらリンにプリンを焼いてもらおうかな。

 夢は膨らむばかりだった。



 それから数日、僕は精力的に働いた。

 シャルが持ってきてくれた岩を材料に道を作り、洞窟に潜ってはお金になりそうな鉱石を拾い集めた。

 星形の窪みを見つけるたびに穴だって掘りまくったよ。

 貴重なコインが出てくることもあれば、調味料の実を見つけることもあった。

 調味料の実で圧倒的に多いのは胡椒の実だ。

 ガンダルシア島に本物の胡椒は生えていないのだけど、調味料の実は出てくる。

 現在所有している調味料の実はこんな感じだ。


 胡椒の実×19

 カレーの実×7

 醤油の実×2

 味醂の実×1


 そう、僕はついに醤油の実を見つけたのだ! 

 粉末にして水で溶いたら、醤油そのものだったよ!

 その醤油を使ってシャルとウニを食べもした。


「父上、これはうまうまであります! もっとたくさん見つけましょう!」


 と、大絶賛だった。

 次はお米が欲しいけど、ダンテス領ではほとんど見かけないんだよね。

 菜園をグレードアップして水田を作ることもできるけど、そのためには畑レベルを上げなければならない。

 当然ながらポイントと資金が必要だからから、当分は我慢だ。


 朝食を食べ終わると僕は荷物をまとめた。


「さて、今日は久しぶりにルボンの町へ行くよ」

「町で美味しいものを買うのですか?」


 シャルは甘いものが欲しいのだ。


「今日は買い物じゃなくて売るんだよ。サンババーノでいろいろなものを売ってお金を手に入れるんだ」


 僕の手元には星形の窪みから掘り出した古いコイン、イチゴ石、胡椒爆弾などがそろっている。

 胡椒爆弾というのはノワルド先生に教えてもらったマジックボムに、僕なりの改良を加えたものだ。

 マジックボムは小さな爆弾で、殺傷能力はほとんどない。

 けれども、大きな音と閃光がするので弱い魔物は爆発に驚いて逃げていくのだ。

 販売価格は平均して500クラウンくらい。

 値段が安いので旅人が魔除けとして買うことが多い。

 僕はこれに改良を加えて、成分に胡椒の実を追加した。

 そして竹の筒に入れて、花火のように打ち出せるようにしたのだ。

 洞窟内で試してみたけど、効果は上々だった。

 マジックボムでは逃げないような魔物でも、胡椒爆弾に視界を奪われ、くしゃみを連発していた。

 襲ってくる余裕はほとんどなかったようだ。

 ノワルド先生もよく工夫したと褒めてくれた。

 ただ、風向きによってはこちらの目やのどまで痛くなってしまうので気を付けなければならない。

 特に洞窟は密閉空間なので、使用するときは注意が必要だ。

 一発撃ったらすぐに離脱。

 これが原則になる。

 ヒットアンドアウェイを忠実にしなければならないのだ。


「失敗を恐れずになんにでも挑戦しなさい。至らない部分は改良する。それが無理なら違う方面からアプローチするのだ」


 とはノワルド先生の激励の言葉だ。

 いずれはもっと役に立つアイテムにしていきたい。

 胡椒爆弾だけど素材は洞窟や森で集めたので、お金はかかっていない。

 僕としては一つにつき300クラウンくらいで引き取ってもらえたらと考えている。

 今回は30個つくったから、全部で9000クラウンになればいいなあ、なんて捕らぬ狸の皮算用をしている。

 いちばん優しいビグマに相談してみることにしよう。

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