第29話 すべての道はコテージに通じる
気持ちのよい朝だった。
スッキリと目覚めたし、体に疲れは残っていなくて、やる気だけが満ちている。
セディー・ダンテス:レベル3
保有ポイント:39
幸福度:100%
島レベル:2
幸福度が過去最高の100%だ!
美味しいものを食べて、温泉に入り、安全で快適なベッドで寝られたからだろう。
もちろんリンと知り合えた影響も大きいな。
僕は隣人に恵まれている。
ルールーは陽気な友だちで、いつも美味しい魚介を届けてくれるし、船の動かし方や、海のことをたくさん教えてくれる。
ノワルド先生は幅広い知識を授けてくれる立派な師だ。
錬金術や魔法薬学にも精通している。
先生が貸してくれる本はどれもおもしろいし、わからないところは丁寧に教えてくれる。
黄龍のシャルは僕にいっぱい甘えてくるけど、それで助かっているのは僕の方だ。
シャルが甘えてくれるから、僕は寂しくないのだ。
それにシャルは力持ちなので、いろんなことを手伝ってくれるし、洞窟では僕の護衛もしてくれる。
シャルとならどこへ行くのだって安心だ。
新しく島に来たリンとも、よい関係を築けたらいいな。
お、ステータスをよく見たらレベル3になっていた!
これで累積保有ポイントの最大値は45にまで増える。
そろそろ島の施設をレベルアップさせる潮時だ。
まずは洞窟のレベルを上げたいけど、やっぱり慎重に見極めていかないとね。
朝のルーチンになっている畑仕事をした。
昨日植えた玉ネギがもう芽を出している。
玉の部分から真っ直ぐに伸びる葉は、ネギと同じように調理できるそうだ。
ルールーはもう少し沖に出ればマグロが釣れるかもしれないと言っていた。
もしも手に入るのなら、ネギトロ丼を作って食べたいものだ。
そのためにも醤油の実を何としても見つけないといけない。
「よいしょ! よいしょ!」
シャルが自分の体よりも大きな岩を畑の隅に運んでいる。
今日、菜園に出現した岩はこれまでになく巨大だった。
シャルがいなかったら当分畑の一区画は使えないままだったろう。
「父上、このお邪魔岩はここに置いとけばいいでありますか?」
「うん、とりあえずそこでお願い」
「はーい。えいっ!」
シャルの放り投げた岩が音を立てて地面にめり込むと、ステータス画面が開いた。
作製可能なもの:石畳の道
説明:歩きやすく馬車も通れる石畳の道です。
必要ポイント:5
備考:三〇メートル分の石が貯まっています。
思い出した!
アイランド・ツクールでは、石を集めると道路の整備が可能になるのだ。
未舗装路のままだと、雨の後はぬかるんだりして歩きにくいんだよね。
少しずつでもいいから道を整備していくとしよう。
まずはコテージから架け橋に向けて三〇メートルを整備した。
「ふぉおおおっ! 道がぺったんこになりました!」
「いい感じだね。これなら歩きやすそうだ」
コテージと懸け橋の間は二〇〇メートルくらいあるので全面開通にはまだ至らない。
でも、いつかはすべての道を整備したいものだ。
まあ、焦らずにのんびりやろう。
「父上、石があれば道がきれいになるでありますか?」
「そうだね。僕の保有ポイントも必要だけど――」
「だったら、シャルがもってくるであります!」
「はい?」
「しばらくお待ちを!」
シャルは裸足のまま駆けていき、しばらくしてから駆け戻ってきた。
シャルの両手は万歳のように高く掲げられ、その上には僕の何倍もある大岩が持ち上げられている。
それなのにシャルの走るスピードは変わっていない。
「ただいま戻りました!」
「お、おかえり……」
「岩は先ほどと同じところにおきますね」
ズシーン……。
さっきよりも大きな地響きがして、巨大な岩が大地にめり込んだ。
うん、道がさらに三〇メートル作製可能になっている……。
「いかがでしょう、父上?」
「ありがとう。おかげでもう少し道を延長できそうだ」
「でしたら、シャルはもっと岩を集めてきます!」
言うが早いか、シャルはまたもや駆け出していき、何往復もして岩を集めてくれた。僕
は岩が集まるごとに道を整備していく。
シャルが頑張ってくれたおかげでコテージから懸け橋の道はすべて石畳になり、リンの食堂までの道まで整備することができた。
今後、ポイントを振れば沿道には花壇や街路樹を設置することも可能だ。
楽しみが広がっていくな。
「もっと岩を集めてきましょうか?」
「いやいや、ポイントは4しか残っていないから、今日はもう作れないよ」
「それは残念であります……」
自分が運ぶ岩が次々と道になるのが楽しかったのだろう。
もう出来ないと言うと、シャルはしょんぼりしていた。
「作れるようになったら、シャルにお仕事を頼むからね。そのときはまた大きな岩を運んでくれるかな?」
「シャルに任せてください。こーーんな大きな岩だって、シャルが運んでみせますから」
小さな手足をいっぱいに伸ばして、シャルは岩の大きさを表現していた。
他の人が見れば、小さな子どもが少し大きめの石を運ぶと思ってしまうだろう。
でも、最強種のシャルが運ぶのは、3トンはある大岩だ。
かわいくもあり、頼もしくもあった。
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