第20話 錬金小屋
錬金小屋の作製が可能になりました!
条件:師となる人物に出会うこと。
必要ポイント:5
錬金小屋が建てられるようになったぞ!
ノワルド先生と知り合いになることが条件だったんだな。
こうしてはいられないな、さっそく錬金小屋を作らなくては。
新しい施設を作るときはいつだって興奮してしまう。
ゲームでもそうだったけど、リアルともなると感動は100倍以上だ。
頭を包んでいた眠気は霧が晴れるようになくなり、僕はベッドから飛び起きた。
「父上、おあようございまふ……」
シャルが寝ぼけまなこをこすっている。
「おはよう、シャル。今朝は錬金小屋を作るよ!」
「あい~、さっそく作りましょう……。シャルはパンと錬金小屋をいただきます。むにゃむにゃ……」
まだ起ききっていないシャルを抱っこして、ロフトの梯子を下りた。
ノワルド先生はもう起きていて、居間で僕らを迎えてくれた。
「おはよう、セディー。何やら景気のいい話が聞えてきたな。錬金小屋をつくるそうじゃないか」
先生は僕が大工仕事をすると思っているらしい。
「そうなんです、ノワルド先生。僕の特殊能力が発動できそうなので、さっそく試してみるつもりです」
「特殊能力というと、魔法の類かな?」
ノワルド先生は興味を惹かれたようで、深いブルーの瞳で僕の目を覗き込んだ。
「魔力を消費することは間違いないのですが、一般的な魔法の概念には当てはまらない気がします」
「ふむ、実に興味深い」
「言葉で説明するのは難しいです。ご興味があるのならじっさいに見ていただくのがいちばんいいと思います」
「それでは君の特殊能力というのを拝見しようか」
先生も見たがったので、僕らは連れ立って表に出た。
ステータス画面によると錬金小屋はコテージから少し離れた場所に建築が可能なようだった。
正確にはコテージから洞窟へ向かう道を50メートルほど行ったところである。
案内通りに現地へいくと、地面がキラキラと輝いている場所を見つけた。
どうやらここに建てるようだ。
「それでは能力を解放します。眩しいので直視しない方がいいですよ」
断りを入れておいて、僕はポイントを割り振った。
出来上がった錬金小屋はお世辞にも立派な物とは言い難かった。
頑丈そうな石造りの建物だったけど、窓や扉などの建具はお粗末で、隙間風が吹き込んできそうな具合だった。
だけど、ノワルド先生は大喜びだ。
「このような魔法が存在するとは驚きだ! まさに特殊能力と言っていいだろう」
「こんな魔法を持つ人は他にいないのでしょうか?」
「儂の専門は錬金術であるからして、詳しいことは何とも言えんなあ。だが、このような現象を見るのは初めてのことだよ。文献の中ではいくつか散見することはできるがね」
「そんな記録があるのですか?」
「うむ。ランプに住まう魔神が、一夜にして城を築いた、などというとんでもない記録が残されておる」
それ、アラビアンナイト的なやつ!
それにしても、一晩で城かあ……。
比べてしまえば僕の錬金小屋なんてたいしたことないかもしれない。
ポイントをたくさん貯めて、島と自分のレベルを上げれば、僕もいつかは小さなコテージをお城に作り替えることができるのかな?
アイランド・ツクールでそれができたかは思い出せない。
でも夢を持つのは悪くない。
いつかは島の中央にそびえたつ大きな城を建ててみたいものだ。
「それでは中に入ってみましょう」
僕はワクワクしながら扉を開けた。
部屋の内部は床も石張りだった。
きっと、薬品をこぼしたときや、小さな爆発などにも耐えられるようになっているのだろう。
「ほほう、基本的な実験器具はすべてそろっているようだな」
ノワルド先生はビーカーやフラスコの並ぶ作業台を点検している。
壁には試薬の入った色とりどりの瓶もあった。
「父上、大きなお鍋があります! ここではお料理をするのですか?」
「違うよ、シャル。ここは錬金術を行う場所なんだ」
「錬金術?」
「魔法や化学の実験をする場所さ」
「ほほぅ、魔法ですか」
「そういえば、シャルは魔法を使える?」
ドラゴンって属性魔法を使えたはずだけど、黄龍はどうなのだろう?
「う~ん、シャルが使えるのは、強いキック、強いパンチ、強いしっぽの三種類です!」
それは魔法じゃないけど、威力は災害級の攻撃だね。
魔法並みと言えば言えなくもないか……。
「そっか、シャルは強い子なんだね」
「はい、そうであります! 父上はシャルが守るのであります!」
ひょっとするとシャルだって魔法を使えるかもしれないけど、それはまだ先の話なのだろう。
小屋の奥には仮眠室もあったのでノワルド先生の滞在中はそこを使ってもらうことにした。
この小屋も、錬金小屋 → 錬金工房 → 錬金研究所 といった具合にグレードアップが可能だ。
いつかポイントが貯まったら成長させていきたい。
「先生、朝食を食べたら洞窟にご案内します」
「おお、昨日話してくれた場所だね。イチゴ石を採取したという」
「そうです。今日もイチゴ石を採って売りにいかないとなりませんし」
目下のところ、僕の目標は家畜だ。
豊かな食生活を送るために、ポール兄さんから鶏とヤギを飼わなければならない。
牝鶏は2000クラウン、雌のヤギは3万クラウンかかる。
手持ちの現金は1万クラウンなのでまだまだ稼がなくてはならないのだ。
朝食を食べて畑仕事をしたら、さっそく洞窟を調査するとしよう。
今日も充実した一日を送れそうな気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます