【読書日記】「三体Ⅲ」「クビキリサイクル」

 自分、秋行けます! みたいな顔してたのに、気づけば一瞬で暑さが舞い戻ってきましたね。

 本当に勘弁してほしい。期待だけさせておいて!




 劉 慈欣「三体Ⅲ」


 三体Ⅱがかなりキリのいい終わり方したので、どうやって続き書くんだろう……、なんて思ってたら想像の遥か上を行きました。というか、三体シリーズずっと想像の遥か上を行き続けている。


 無印三体は文化大革命から始まる、中国人の作者にしか書けないミステリーSFに仕上がっていた。そして、そこから回を重ねるごとに中国云々なんていうレベルではなくなってくる。


 無印三体から、この三体Ⅲの結末を予測できた人は全人類で一人もいない。それくらい行くところまで行ったという感じ。


 三体Ⅲ下巻のラストを読み終わった後、ため息を吐いてしばらく放心してしまった。

「ずいぶん長い旅だったなぁ」という感慨。


 あまりに壮大すぎて感想が難しすぎる。そもそも、三体シリーズ自体三部作全てで主人公が違うし、数世紀に渡る話なので時代背景も全然違う。


 ぽんぽん時代が飛んでいく展開はこれまで感じたことのない疾走感があって、それでいて「時代は繰り返す」の典型のような描写も複数見られたから、なんか作品というよりまさに“歴史”という感覚。


 文庫版はクッソ分厚い全5冊で、加えてSFというハードルがあまりにも高い。けれど、そのハードルを越えた先には前代未聞のエンタメ超大作が待っています。






 西尾維新「クビキリサイクル」


 なにげに西尾維新作品はアニメ版の化物語くらいしか見たことがなくて、小説は読んだことなかったので手に取ってみた。


 いやぁ、すごいっすね。


 表紙やら挿絵やら濃いキャラクターたちはすごくラノベ的なのに、内容はガチのミステリーというギャップが新鮮だった。


 一般文芸なのか、ライトノベルなのか未だによく分からないけど、そんなことどうでも良くなるくらいシンプルに面白い。


 一段階目のトリックについては、予想通りの結果だったから「やった! 推理が当たったぞ!」と喜んでた。

 けれど、その後まるで想像もしてなかったどんでん返しが出るわ出るわ。


 そりゃ、私程度の人間の予想通りになるような作品がメフィスト賞取る訳ないわな。


 西尾維新といえば、言葉遊びというイメージがあって、デビュー作である本作でもその片鱗を感じることができた。


 『苦労したことはない。ただ、努力はしたがね。』とか『君の意見は完全に間違っているという点に目を瞑れば概ね正解だ。』とか痺れる一節が散りばめられてる。


 一歩間違えば読みにくさにつながるような独特の語感がクセになる。


 とはいえ、たぶん言葉遊びの本領は物語シリーズなんだろうけどね。


 あとは、最近見なくなった無気力やれやれ系主人公がものすごい濃度で堪能できるというのも印象的だった。


 時代的にはむしろやれやれ系の源流である可能性すらあるのかな?


 とにかく、普段ラノベしか読まない人にも一般文芸や本格ミステリしか読まない人にも、どちらにもおすすめできる一冊です。

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