【読書日記】「御社のチャラ男」「そして、バトンは渡された」「やわらかい砂のうえ」

 ほとんどずっと家にいた去年と比べて読書数が減ってしまうのは仕方のないことではあるのですが、とはいえ今年はまだ40冊しか読めていない。


 いや、もちろん読書数で争ってるわけじゃないけどね。一応年間100冊を目標にしてるので、今の時点で大体50冊は読めてないとダメな計算。


 っていうか、今年もう半分終わるの? やば。




 絲山秋子「御社のチャラ男」


 書店巡りで買った小説のラスト。


 社会人になったし、会社員小説読みたいな~って思ってたら、いい感じのPOPを見つけて手に取った一冊。


 ジャンルとしてはお仕事ものになると思うけど、本作は仕事の苦楽よりも会社という組織とそこに属する人にフォーカスされてるのが特徴。


 複数の人物視点で描かれる連作短編形式ということもあって、本当に多種多様な人が描かれる。


 中にはすごく共感できる人も、そうでない人も登場するけど、その描写があまりにも真に迫っているおかげで、全員にどこかしら共感をおぼえてしまう。

 人間の本質を突き詰めると、性格や性別を超越した何かにたどり着くんだろうな。


 冷静に考えてみれば、大半の人間は会社に属していて、しかもそれが一日の半分近くを占めてる。

 すなわち、「会社」を徹底して描くことは「生きる」ことを描くことにつながる。そんな風に思わせてくれる一冊でした。




 瀬尾まいこ「そして、バトンは渡された」


 某書店で瀬尾まいこ特集が組まれていたので、せっかくだし本屋大賞も受賞した代表作を読んでみよう。という気持ちで手に取った一冊。


 物語で一切泣かない妹が本作の映画版を見て泣いたと言っていたので、相当だろうなと思いつつ読み進めていって案の定、アホほど泣いてしまった。


 毒親や生きづらさが描かれがちな昨今、こんなにも良心に満ちた作品は中々ない。悲劇的な展開をほとんどせずに、これだけ感動できる作品が作れるんだと驚いだ。


「親からの愛のすばらしさ」と表現してしまうと途端に陳腐になってしまうけど、そういう不純物のない無償の愛を信じたくなる。


 心の底から読んで良かったとただ純粋に思えるすばらしい作品でした。全人類に読んで欲しいです。




 寺地はるな「やわらかい砂のうえ」


 前述の書店と同じ店舗で寺地はるな特集も組まれていたので、なんとなくタイトルが好きで手に取った一冊。


 寺地はるな作品は「川のほとりに立つ者は」以来2冊目。

 この作者は「分かり合えない」ことの描き方が上手いなぁーと思った。


 ただ、この「分かり合えない」っていうのはあくまで事実であって、分かり合えないことを理解した上でどう生きていくかを提示してくれる。

 おかげで、読後感はポジティブで前向きになれる。


 本作は、メイク、ファッション、男性との付き合い方等女性向けの側面が強い印象を持ったけど、メッセージ性の部分は普遍性があるから男性でも楽しんで読めると思う。


 友情から恋愛まで、作中にはいろいろな人と人の関係性が登場するけど、なかでも一番心を動かされたのはやっぱり主人公と父親の関係性。


 親子に弱いんですよね。親の優しい一面とか描写されるとすぐに涙ぐんでしまう。


 他者とのかかわり方に悩む人におすすめの一冊です。(特に女性の方はとんでもなく共感できるポイントが多いと思うので、なおさらおすすめ)

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