【読書日記】「ここはすべての夜明けまえ」「竜胆の乙女」「インスタント・メサイアⅠ」

 最近本読めてないなあ、と思っていたのですが普通に3冊読んでました。


 読書ペースがインフレして感覚がおかしくなっている可能性が……。






 間宮改衣「ここはすべての夜明けまえ」


 ハヤカワSFコンテストの特別賞作品。


 1ページ目を開いての第一印象が「なんじゃこりゃ」。


 なぜかというと、本作は大半がひらがなで構成されている。「アルジャーノンに花束を」のような感じ。


 そのせいで、はじめは読みにくさを感じていたが人間の脳とは不思議なものですぐに慣れてしまう。


 本作は、「適合手術」によって体が老化しなくなった主人公の視点で進む。この設定こそガッツリSFではあるけど、感情に素直な描写のおかげで感情移入して読むことが出来た。


 正直、作中で起きた出来事を辿っていくと救いようのない地獄のような話でしかないのに、なぜか牧歌的な雰囲気がある独特な作品。


 本当に感想の言語化が難しい。読んでいる最中も読み終わった後も、人間の持っているあらゆる感情が想起させるせいで、一言で言い表せない。


 ちなみに、アスノヨゾラ哨戒班というボカロ曲が登場して、ボカロ好きとしてはおっ! となった。

 文学作品にもボカロ曲が固有名詞で登場する時代なんだなあ、と感慨深いですね。


 おそらくアスノヨゾラ哨戒班がテーマ曲的な立ち位置なので、この曲が好きな人はぜひ読んでみて下さい。歌詞とリンクする描写がちょっとあったりして面白いです。


 あと、タイトルが神がかってるよね。タイトルだけで買った価値あるくらい好き。






 fudaraku「竜胆の乙女 わたしの中で永久に光る」


 電撃小説大賞の大賞受賞作にして問題作。


 何を言ってもネタバレになるので読んでみてくれとしか言いようがない。


 幻想小説というジャンルはライトノベルとしてはかなり珍しいので、読みなれない人からすると少し詰まるかもしれない。


 しかし、本作のメインはそこではない(もちろん、幻想的な描写も魅力だけど)。


 いわゆるギミック系にあたる本作。ぜひ最後まで読んで欲しい。


 ギミック系は大体期待値が高くなりすぎて、少し拍子抜けする場合が多い。でも、本作は期待を超えてきた稀有な例。


 ただ驚くだけでなく、ちゃんとギミックが作品のメッセージ性にもつながっているあたり他とは一線を画す感じがある。


 読了後、このタイトルがあらためて沁みること間違いなし!







 田山翔太「インスタント・メサイアⅠ」


 知人に勧められて手に取った一冊。


 なろうでも公開されていたのですが、せっかくなので紙の書籍版を。


 タイトルにⅠとついているが続刊は2024年時点で未出版。原作のなろう版もエタっている状態。


 Web小説勢の世知辛さを感じるね。


 作品の内容はと言えば、なろうのテンプレからはかなり外れたダークファンタジー。激重シーンから始まる冒頭もそうだし、従来のハーレムものを逆手にとったような設定も差別化への意識を強く感じた。


 このライトノベルがすごい、にもランクインしたらしい作品が一巻で打ち切りというあたり、この業界の熾烈さが分かりますね。


 気の狂った闇落ち主人公が好きな方はぜひ。


 とはいえ、どうやっても完結までは読めないという悲しみ。

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