【読書日記】「medium 霊媒探偵城塚翡翠」「カエルの小指」「日の名残り」
基本は毎週末に更新しているのですが、今週は遠出していてちょっと遅れました。旅先での読書という経験も非常に良かったです。
相沢沙呼「medium 霊媒探偵城塚翡翠」
推理作家の主人公と霊媒師のヒロインの二人が数々の事件を解いていく連作短編形式のオカルトミステリー?
色々なランキングを総なめしていた本作。正直、読みながら「面白いけど、言うほどかなぁ」なんて思っていたんですが、やられました。絶対にネタバレなしで読むべき作品なので多くは語りません。ミステリー初心者から玄人まで全員が楽しめる名作です。
なんだかんだ言ってランキング上位とか何かしらの賞を取ってる作品って相応に面白いんですよね。隠れた名作を発掘したくなる気持ちはあるけど、とはいえやはり有名作や話題作は読んで損はないし、絶対に満足するということを改めて思い知りました。
道尾秀介「カエルの小指」
元詐欺師で現在は実演販売士である主人公の元に謎の中学生が訪れるところから物語は始まる。
「カラスの親指」という私が完璧なエンタメ小説と評している作品の続編。やはり、安定して面白い。本当に道尾秀介さんの作品は「面白さ」という部分が徹底されていて感心してしまう。
いやぁ、騙された! と心地よく感じていると、そこからさらに数段階の予想外が訪れて、ページをめくる手が止まらない。加えて、前作から引き続き魅力的なキャラクターたちが登場して掛け合いも面白い。個人的には前作を読んだ上で手に取ってほしい一作ではありますが、この作品単体でも十分に楽しめます。
カズオ・イシグロ「日の名残り」
同著者の「わたしを離さないで」がめちゃくちゃツボだったので、手に取ってみた一冊。すると、予想通りすごい好きな作品だった。ただ、この気持ちをうまく言語化できないのがあまりにも悔しい。
晩年に差し掛かる、とある執事がイギリスを旅する。その過程で書かれた日誌の形式で物語が語られていく。イギリスの執事という普段全く窺い知ることのない存在の視点で描かれる物語は新鮮で、それなのにどこか懐かしさを感じた。
執事という職への哲学だったり誇りだったりが、一人称で語られていくのもあって私小説的な味わいを強く感じた。描写に親切さや客観性が欠けている具合も、私小説っぽさに拍車をかけていると思う。職務に関する描写はやたらと濃いのに、それ以外の心情描写がずいぶん少ない。ただ、その余白が本作の最大の魅力でもある。
かといって、小難しい内容かと言うとそうでもなくて、作品の余白をそぎ落とせば「切ないラブロマンス」とも言い換えられる展開ではある。でも、そう表現した途端に本作の魅力の大部分が失われてしまう。そんな作品。
「わたしを離さないで」と共通する魅力としてノスタルジックな空気感がある。でも、「わたしを離さないで」にあった望郷感とはまた違うタイプのノスタルジックで、例えば定年退職間際の中年の方なんかが読むと、とんでもなく刺さると思った。これから社会人デビューを迎えるペーペーが読んでも、これだけ魅力的に感じた訳だから今から40年後くらいに読み返せば一体どうなってしまうのか。
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