【読書日記】「ラウリ・クースクを探して」「傲慢と善良」「七十四秒の旋律と孤独」

 関係ないですけど、読書メーターでカウントしてる読書数が200冊を突破しました。カウントしてないラノベ勢を入れると、たぶんそれ以上。

 とはいえ、ガチ読書家は1000冊を超えてからという認識があるので、道のりは長いですね。



 今週の3冊は私の誕生日に家族から誕生日プレゼントとして貰ったやつです。これまでこんなことしてなかったんですけど「センスで本を選んできてくれ」という要望を叶えてくれました。







 宮内 悠介「ラウリ・クースクを探して」

 パッパが選んだ一冊。表紙とタイトルとあらすじからして、「これはセンスを感じる……」と確信した。内容もめっちゃ良かった。文学性とエンタメ性の塩梅がちょうど良くて、こんなに「人から貰って嬉しい小説」を初手から見せつけられるとは。


 エストニアという国がたどった激動の歴史に翻弄された、とあるプログラム好きの少年の半生を追う物語。エストニアという中々知ることのない国の生活や歴史は新鮮だった。文体もすごく好みで、過度な装飾はないけれど確かに心に染みる静謐さが魅力。


 作中に出てくるプログラム要素も、私自身情報系の学部に通っているのもあって、結構楽しめた。


 文学的な歴史小説の側面もあれば、ノスタルジックな人間ドラマの側面もあって、それに加えて技術小説的な要素もある。それぞれの要素が、互いを邪魔せずに作品全体の質を高めている。


 とある人間の半生を追った物語とは思えないほど、あっさりとした読後感もまた良い。







 辻村 深月「傲慢と善良」

 マッマが選んだ一冊。前から読みたかったが、後回しにしてしまっていた話題作。実際読んでみると、話題になるのがよく分かる。ここ最近読んだ小説の中で一番えぐい。自分のこれまでの人生とか性格とかを嫌でも顧みてしまってしんどい。


 姿を消した婚約者を探す中で、彼女の知らない一面に触れていく……という恋愛ミステリー作品になるけど、本作の語るべきところはそこではないと思う。婚活という一つのイベントを契機に、これまで抱いてきた違和感だったり、あるいは自分の奥底にある無自覚な何かに目を向けさせられる。


 婚活とか恋愛から縁遠い私が見て、これだけ心を乱されるんだから、婚活中の人が見たら気絶するんじゃないか?


 これを読んでからずっと「歪んだ善良さ」について考えてる。

 私は昔からなぜか未成年飲酒に妙な嫌悪感を抱いていて、それは多分世間で「未成年飲酒くらいいいでしょ」という空気感が醸成されていて、むしろそっちの方が正常とされてたのが気に入らなかったんだと思う。


 真面目な方が全面的に正しいはずなのに真面目じゃない人の方がそこそこ得をすることへの違和感とも言い換えられるかもしれない。ただ、こういう思考の中にこそひどく不真面目な傲慢さが隠れてるんじゃないか? とかつての自分を思い返したりしていた。


 登場人物の全員に共感できるところとできないところがあって、読んでいてイライラしてくる(誉め言葉)。それだけ、この物語を自分事として捉えざるを得ないパワーがある。







 久永 実木彦「七十四秒の旋律と孤独」

 妹が選んだ一冊。中々硬派な表紙の創元SF文庫。渋いチョイスだ。


 人工知能「マ・フ」の視点で描かれる壮大な時間スケールの大河SF。


 人工知能「マ・フ」は惑星Hで地形の記録なんかを一万年ほど続ける。しかし、ある時創造主である人類と邂逅し、姿かたちが同じの「マ・フ」たちに個性が形成されていく。その過程に微笑ましさを感じつつも、どことなく寂しさも感じる。


 しかし、物語が進むごとに人類の愚かさが加速していって「人間がよぉ……」と、

「マ・フ」たちを応援したくなる。


 全体を通してAIものっぽくない、という感想が一番最初に浮かんだ。AIものでありがちな無機質で論理的な描写ではなく、むしろ詩的な心理描写や情景描写が魅力。


 読み始めた時は文学寄りな作風の印象だったが、読み進めていくとエンタメ作品としての展開もしっかりしていて、純粋にストーリー展開も楽しめた。程よい伏線の具合から、心地よい読後感まで、純粋に読んで良かったと思えるSF小説だった。

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