第2話

 「ちょっと家を出てスーパーに行ってみようか。」


 新型コロナ感染予防のための隔離期間が終わり、本格的に新しい生活が始まった。

 

 「私も行く!」


 私よりも乗り気な妹がそう言ってはしゃぐ。


 家を出ると、日本の夏と同じように太陽が私たちを明るく照らした。


 「え、暑い?!ロシアなのに。」


 ロシアにも夏はある。一年中真冬のような寒さで、外も暗いのかと思っていたけれど、全くイメージと違っていた。要するに、ただの偏見だったんだ。


 歩いて10分くらいのところに、日本のショッピングモールと同じくらいの大きさの建物が建っていた。


 食品売り場に行くと、日本とは違う、あることに気がついた。

 日本では野菜は小分けにしてあったり、必要な分を自分でビニール袋に入れるだけでいいところがほとんどだ。けれど、ロシアでは必要な分をビニール袋に入れ、重さを測る機械に乗せ、出てきたバーコードや重さの書かれたシールを貼る。ということが当たり前になっていた。

 それは、お菓子売り場でも同じようだった。キャンディーや小さいお菓子は、重さで値段を決めるようだったのでそこら中に重さを測る機械があるのだ。

 試しにやってみたけれど、少しだけ買いたい時などもこうしないといけないので、このやり方は少し不便だと感じた。

 そしてもうひとつ。商品が置かれているいろいろな場所に、みかんの皮やお菓子のゴミが捨てられているのだ。

 絶対に誰か万引きしているなとは思いつつ、このようなことがほとんどない日本は本当にすごいなとも感じたのだった。


 必要なものをカゴに入れ終え、レジに向かった。レジには長蛇の列ができていた。

 私の前に並んでいた男の人が、自分のカゴに入っていたビンを手に取り、まだ会計していないのに飲み始めた。

 あまりにも驚いたので、隣にいる母に尋ねた。


 「ねえ、まだ会計していないのに飲んじゃっていいの?」


 「日本ではあまりないけど、こっちではやっていいことなんだよ。」


 母の言う通り、周りにいる人は誰も咎めていない。

 常識は場所によって変わるんだと言うことを、改めて学ぶ機会になった。

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