第7話 彼女の覚醒
協同関係が結ばれた後、今までの疑問を一気に投げかけた。
「ずっと避けていたのは、なぜだ?」
「……え?」
「学園に入ってから俺のことをずっと避けていただろう? なぜだ?」
「いえ、避けていたわけでは……ないですわ」
「では、エラトス殿下とメリッサだけにするあの態度は?」
「え、えっと……」
この二年、ずっと避けられていた。ステラの行動を観察はしていたが、転入生という存在がいなければ今のように話すこともなく卒業していただろう。
口ごもるステラに質問を続けた。
「何があった?」
「え?」
「入学前に、一体何があった?」
「っ!!」
ステラが目を見開く。そして、次の瞬間には眉間に皺を寄せて俯いた。
「俺に対して、
あの時のステラは間違いなく、俺を怖がっていた。
ステラは顔を上げると、大きく息を吸って言った。
「その話は今、ここでは出来ません」
「分かった。また後日、改めて聞く」
「……それまでに心を決めておきます」
ステラはそういうとクラスに戻っていった。
午後の授業が始まる。
召喚室での授業だ。実践的な授業は基本的に二つのクラスが合同で受講する。
もう一つのクラスには第二王子エラトス殿下とラサラス、メリッサがいる。
三年になると『召喚の儀式』を行う。これにより卒業後の進路が決まる。召喚した神とその守護力がどれほどかで変わってくるのだ。
召喚室は神殿のような造りになっており、中心に芸術的ともいえる見事な魔法陣が描かれている。
エラトスがそっと席を立つと中央の魔法陣へ優雅に歩みを進める。
魔法陣の中で召喚魔法を唱えると『法と予言の女神テミス』が現れた。
その神々しい姿に皆が言葉を失う。テミスはエラトスに微笑むと、すぅっとその身体に消えていった。
女神を受け入れると堂々とした足取りで席へ戻る。
さすがは王子。すべてにおいて模範的で完璧な姿だった。
生徒たちはどこか中性的な彼のその麗しい姿に釘付けになっていた。
召喚の儀式は続いていく。
シアンは『海神オケアノス』。ラサラスは『火の神ウルカヌス』。メリッサは『運命を司る女神の紡ぐ者クロト』。
そして、光魔法の遣い手であるアリサの順番がまわって来た。
彼女が魔法陣の中心に入ると、眩い光が放たれる。彼女の元に現れたのは――『愛と美と性を司る女神アフロディーテ』だった。
その場の誰もが、その女神に見惚れる。
自らの魅力を増し、神や人の心を征服することが出来るというその力は本物だった。
シアンはそれを見て、無表情ながら眉を顰めた。厄介な人物に厄介な神がついてしまった、と。その様子に気が付いていたステラも同様に瞳を伏せた。
ステラの順がきた。
魔法陣が近づくにつれ、ステラは胸の鼓動が激しくなるのを感じていた。緊張とはまた違った感覚である。
なぜか、とても胸騒ぎがした。
魔法陣に一歩足を踏み入れると、ステラの身体が光輝き出す。それと同時にステラは全てを思い出した。
――
兄ヴェガードの守護神である『暁の神エオス』の夫婦神だった。
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