第3話


「……なるほどね」


「何か知ってるんですかキドナさん!」


 初めて使った【ステータス】に映ったのは、半分くらい意味の分からない情報。

 なんなら自称チュートリアルキャラクターのキドナさんですらちょっと驚いているほどだ。


「あなた、歯じゃなくて歯茎にやられてたのね」


「……はい!?!?」


――――――――――――

【海龍のオヤツ】

名前:リプソン 種族:人魚 Lv:1

職業:Choice


器用値 2

敏捷値 3

知力値 3

筋力値 2

生命力 2

精神力 2


スキル:

【エラ呼吸】【水泳】【デスアビリティ】【いい匂い】【歯茎耐性】【Choice】【Choice】


称号:

【ファーストブラッダー】【海龍のオヤツ】


装備:

ホタテ貝


――――――――――


「上から聞いてもいいですか? ……初手オヤツってなんなんですか!?」


許せん。オヤツ扱いは許せん。

何があろうと許しては行けない。

私の思考は先鋭化していた。


「それは【称号】ね。所持称号から1個を選んで表示することが出来るのよ。ほら、今もあなたの頭の上に浮かんでるわ」


「へっ!?」


 あれか! ゲームでよく見るあれか! このゲームにもあったんだ。プレイヤーネームと称号が頭の上に浮かんでいるシステム。

 解除できるのかな? なんて思ってステータスを弄ってみたんだけど……


「えーいいじゃない。可愛いじゃない!」


「可愛くないですよ!」


「ほら、食べちゃいたいくらい可愛いって言うでしょ?」


「言うけど今回は違うでしょ!」


「えー」


 キドナさんが思いのほか食い下がってきた。ので、今はこのまんまだ。絶対別れた瞬間に外してやる。


「名前、種族はいいわね。レベルはその名の通りレベルよ。戦闘はもちろん、生産や取引なんかでも上がったりするわ」


「ふむふむ。上がったらいいことあるんですか?」


「そうね。1番簡単な恩恵は、基礎値の割り振りができることかしら。さっきも言ったけど、【ステータス】では、スキルと基礎値が見られるの。その下の器用値……ってやつね。後はスキルと交換出来るポイントが溜まっていくわ」


「自分の能力値をあげれるってことですね!」


「そうね。1レベルにつき2ポイント上げれる。貰えるスキルポイントも2点ね。汎用スキルは5ポイント、特別なスキルは物によって変わるわ」


「なるほど!」


「じゃあ職業ってなんですか? しかも表記がChoiceですし」


「1部スキルの購入が安くなる、1部スキルの熟練度が上がりやすくなるのが基本の効果かしら。職業のレベルを上げたらスキルが増えたりもするわね。ステータス値に補正があったりも。……今何か選べる?」


 なるほど。ほかのMMORPGと同じ感じかな? 独自システムとかはやってるうちに覚えておけば良さそう。


「えーっと今は……『オヤツ』と『藁人形』です……」


 いや弱そう&不吉!!

 絶対これ称号が悪さしてるよね!!


「うん、じゃあ職業はオヤツを選んで……」


「選びませんから!!!」


 オヤツネタはもう天丼が過ぎる。

 一旦寝かせておくべきだろう。


「下のスキル欄にもChoiceが2つあるでしょう? ひとつには人魚の種族スキル……固有のスキルが入るの。もうひとつが汎用スキル。全種族が最初から選べるスキルね。そこの選択で何個か職業が出てくるはずよ。」


 このお姉様はやはり優しい。なんだかんだしっかり教えてくれる。


「えーっと……【フィッシュテイム】【尻尾術】【喜歌】【怒歌】【哀歌】【楽歌】……いや歌推し!!」


 種族スキルはこんな感じだ。いかにも人魚って感じで、海と歌に関するものが多い。2Pカラーで数増やすの、良くないと思います。


 汎用スキルには、魔法や武器術、生産スキルなんかが入っている。めぼしいものだと【水魔法】【闇魔法】【槍術】【宝石加工】とかが人魚っぽいかな。

 歌の説明を見ると、喜が回復、怒が攻撃、哀がデバフで楽がバフっぽい。

 まぁ取らないかな。


 ……私の目は1個のスキルに釘付けだった。

 私は海に憧れていた。それは現実の心臓が海に耐えられないから。

 だから、私は水族館が大好きだった。多い時には毎週土日両方行くなんてこともあった。


「おすすめは攻撃に使えるスキルね。初期スキルと言っても、鍛えれば長く使えるわ。敵を倒すのは経験値効率が良いし、レベルアップした後に取りたいスキルを取れば……」


「はい!! 決めました!!」


「早いわね!!」


 考えるまでもない。

 考えるまでもない。


 私は、海に憧れた。

 私は、一生懸命泳いでみたかった。

 理想の光景には、絶対に必要だ。

 絶対に、サカナが必要だ!!


【フィッシュテイム】と【拳闘術】


 職業は【フィッシュモンク】


サカナと共に行き、サカナと共に攻める。

武器は危ない。カスっちゃうかも。

魔法も危ない。間違えて当てちゃうかも。


信じられるのは我が身だけ。


「……私の旅を邪魔するやつは、全部ボコす!!」


「この子、尖りきってる……」

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