【完結】実は元最強のプロゲーマー、配信文化が根付いた異世界でようやく実力が認められる〜転生してダンジョン攻略を配信していたらS級ボスを無自覚にボコってしまいました。
第15話 元プロゲーマー、直々の依頼を受ける
第15話 元プロゲーマー、直々の依頼を受ける
「悪いね。私は気に入った相手には直接お願いをしないとすまない質なのだよ」
俺はギルド長室のソファに腰かけていた。
「お口に合うか分からんが、召し上がってくれたまへ」
机には一杯のお茶が置かれている。地球でいうところのティーカップに似た容器の中に少し赤みがかった液体が湯気を立てている。
「いただきます」
俺はお茶をすすると口に含むと茶葉の鮮やかな香りが鼻腔を抜ける。すっきりとした味わいは素直に美味しいと感じた。というか、まんま紅茶だわ。
「あぁ、知っているかもしれないが、私はここでギルド長をさせてもらっている。ギルバードだ。以後、よろしく頼むよ」
ギルバードはにこやかに笑みを浮かべているが、瞳の奥で俺を観察しているようだった。
「まずは単独での隠しボスクエストのクリアおめでとう。そしてA級犯罪者の確保、低級悪魔の討伐……君はこの街、いや王国で英雄と言っても過言ではない。1つだけでも偉業なのだが、ひとまず感謝申し上げるよ」
「いえ、とんでもないです」
「本当に14才とは思えない偉業だ……将来、どれだけの化け物になるか楽しみで仕方がない」
「はぁ……ありがとうございます」
ギルバードは俺を褒めている。褒められることは素直に嬉しいのだけど、絶対に裏がある気がしてならない。
「あの本題を聞いてもいいですかね?」
「あぁ、すまない。老人の悪い癖なのだよ。若い者と話す時に、妙に饒舌になってしまうのだ」
「そうですか」
「ははっ……君はずいぶんとせっかちなのだね」
ギルバードはそう言いながら、対面のソファに腰かける。
「さて、本題だが……君にとあるダンジョンを調査してもらいたい」
「とあるダンジョンですか……?」
「あぁ、実は未発見のダンジョンでな……我々が発見したダンジョンだと125番目のダンジョンなんだが、生憎ウチのギルドで一番腕が立つSランクのパーティは他のクエストに向かってしまってな……どうやら四天王クラスの悪魔がいるのでは? という懸念があってな」
「四天王クラスですか!?」
俺は嬉しさのあまり身体を乗り出してしまった。つまりいきなりラストダンジョンクラスの大物と戦えるということ。これはさぞスリルがあるに違いない。
「ただ、分かっていると思うがあくまで調査だ。どんな敵やギミックがあるか分からないからな」
「任せてください」
もちろん調査で終わらせるつもりはない。あわやくば倒したい……あぁワクワクする。
「……君は勇者に似ているな」
「え? そうなんですか?」
「あぁ、強敵に対して目を輝かしているところとか……いや、なんでもない。今はこの話はよそう」
正直、勇者とか興味はないな。もしも魔王の情報を持っていたとしても自分の手で攻略してこそ意味があるし。
「とにかく、ユリウス君をAランクに上げたのは功績もあるが、君ならこの依頼を受けてくれると信じてのことなのだが……結果として良かったよ」
「そうですか……ちなみに攻略の様子って配信してもいいんですかね?」
「いや、むしろ配信してほしい。そうすれば、他の冒険者達も全容を掴めるかもしれないからね。それも今回の契約の条件にいれさせて貰う」
ギルバートは満足そうな笑みを浮かべている。
「わかりました。でしたら、早速ですがそのダンジョンに行ってきてもいいでしょうか?」
「あぁ、その前にこの契約書にサインを頼むよ」
「契約書ですか? 分かりました」
俺は目の前の契約書にサインを書く。そういえば、契約書なんて俺が前の世界にいる前にプロ契約を交わした以来か。少しだけ懐かしい気持ちになった。
「うん。よろしく頼むよ……そうだ。それとお節介ながら君に冒険にとってプラスになるようなサプライズを用意した。後でミーアから受け取って、是非とも君の家で開けてくれたまへ」
「? わかりました」
俺の家で開けるということは、俺以外の誰かにとっての良いことなのだろう。
だけど、そんなことはどうでもいい。新たなダンジョン攻略が俺を待っている。しかも今回は高難度ということが約束されている。俺はワクワクした気持ちでギルド長室を出るのであった。
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