第14話 元プロゲーマー、昇格する
「はぁ……ユリウスさんは馬鹿なんです?」
「え……?」
俺はガラの悪い受付嬢に睨まれていた。
俺はギルドでアイテムの換金をするところだった。
シトリーという悪魔を討伐した後、マキナの料理を食べた反動で3日寝込んだ後のこと。
どうやらダンジョンでドロップしたアイテムや素材はギルドで換金できるらしい。
まるでゲームのようだが、これが結構良い収入になるらしいから命を懸けてまでダンジョンに挑戦する人は後を絶えないんだと。
そんな中で生活の資金を手に入れないと思ったから整理も兼ねて、アイテムの売却に来て手続きに来たのだ。
「えっと……俺、何かしましたかね……?」
俺はガラの悪い受付嬢に尋ねると、
「配信……見た」
「え? あ、ありがとうございます……!」
まさかのリスナーだった! あ、もしかして、俺の配信がつまらなかったとか……たしかに攻略に重きに置いてたからトークとはたしかにひどかったかもしれない。いや、それも真摯に受け止めないといけないか。
「あの……やっぱり、つまらなかったですかね? 俺の配信」
「いや、配信はとても面白かったけど……私が言いたいのは配信のことじゃないから」
「だとしたら……一体なにが……?」
ガラの悪い受付嬢は深いため息を吐いて答える。なんというか溜息一つでも圧がすごい。
「隠しダンジョンのボスといい、低級悪魔といい……どちらもS級に相当する相手なんだけど? どんなにダンジョン内の敵が弱かろうが、高ランクの敵がいればそれだけでS級だったりSS級になったりするの。だから本来は目安なの」
「知らなかった……」
そうなのか……てっきり、ダンジョンごとに固定のランクが存在しているのだとばかり思っていたのだけれど、そうではなかったのか。
「それにユリウスさんが捕まえてくれた盗賊団のボス……A級の犯罪者だってこと、気づいていないよね? たしかに、困っている女の子を助けるのは悪くないけど、自分が死んだら意味がないって分かってる? 命は一つしかないんだよ?」
「まぁ……」
たしかにそういう考えもあるのかもしれない。俺はどちらかと言えば、命が1つしかないからこそのスリルだと思っているのだけれど。
「ユリウスさん。貴方はF級冒険者、つまり本来一番弱い存在なの。私は貴方みたいに無茶をして、死んでいった人をたくさん見てきた」
とはいえ、ガラの悪い受付嬢はいつもの気だるげな雰囲気の面影はない。きっと本当に怒っているのだろう。
「私、最初に言ったよね? ソロでダンジョンに潜らないこと。隠し部屋などがあっても危険かどうか分からなければ入らないって。今回、たまたま生きていたから良かったけど」
ちゃんと怒られたのは久しぶりな気がする。プロゲーマーを引退後の配信業は俺に意味のないマウントを取りたいアンチしかいなかった。
そうか……最初に話をして思ったけれど、やっぱり彼女は優しいのだ。
だからこそ、彼女の言葉には重みがある気がする。
「だけど――」
いつもガラの悪い受付嬢は俺に頭を下げる。
「――ありがとうございます。盗賊団に怯えていた民のため、国の危機に直結しかねない悪魔を捕獲して頂いたこと、ギルドとして、私、アレクシア・ミーア個人として感謝申し上げます」
「え?」
「ユリウスさんが命懸けで打ち倒して頂いたおかげで、今後幾万人の生活が平和に過ごせることができました。それを評して」
「冒険者ランクをFランクからAランクに昇格となります」
「ランクアップ……?」
するとどうなるのか分からないけれど、行けるダンジョンとか増えるのだろうか。
「Aランクになると、Aランク相当のダンジョンに行けるだけではなく、特典として通常のアイテム売却値より多めの金額で買取させて頂きます」
「それはシンプルに助かる」
お金があれば多少はマキナ達に美味しいご飯やら欲しいものを買ってあげられる。
それに頑張ってお金を貯めてもっと広い家に引っ越すのもいいかもしれない。
「はぁ……もっと喜んでもいいんじゃない? 一応、ランクの飛び級なんて10年振りの快挙なんだから」
やばい。こんな感謝されるとは思っていなかったから、どう反応していいか分からない。妙に照れくさくてたまらない。
「で! も!」
「うおっ!」
俺は胸倉を掴まれ引き寄せられる。
鼻がくっつきそうな距離まで引き寄せられる。普通に距離間が近くてキョドってしまう。
「命は大事にしなね」
「は、はい……き、気を付けます……」
「よろしい」
ガラの悪い受付嬢、もとい、ミーアはまた、いつものようにぶっきらぼうに念を押しながら、俺は解放される。
そうはいいつつも俺はまたスリルを求めるだろう。
だけど、安直に行かないように自制しようとも思った。
「少し良いかな??」
そんなことを思った矢先、ガタイの良い初老の男に声をかけられた。
「ギルド長……」
ミーアはギルド長の方を向いて、苦虫をかみつぶしたような表情を浮かべる。
「実はユリウス君……折り入って君にお願いがあってね」
こういう時はおおよそ高難易度のクエストが待っていると相場が決まっている。
俺は笑みを堪えながら、
「なんでしょう?」
と答えるのであった。
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