第9話 元プロゲーマー、人助けをする

「きゃああああ! 誰か助けて!!」


 俺とマキナは悲鳴を頼りにダンジョンの付近を疾走する。


 声の主が切羽詰まっているのは間違いない。


 声の主に辿り着くと2人の少女が5,6人くらいの男に囲まれていた。男達は震える2人の少女達を見て、嘲笑を浮かべていた。


「この世界にもロクでもない人間がいるんだな」


 自分がマウントを取れると思った人間にしか攻撃をしない。俺が転生する前のアンチのような存在はそんな人間しかいなかった。


 俺が悲しい気持ちになろうが、なんなら死んでしまうが、あいつらは何も思っていない。むしろ不幸を喜ぶ人間だっている。


 今、目の前にいるがまさしくそんなようなやつらだ。


「なんだオメーら。今、取り込み中なのが分からねぇのか?」


 少女の目の前に立っていたスキンヘッドの男はドスを利かせた声で俺達を威嚇する。おそらく、この男が盗賊のボスなのかもしれない。


「ユリウス様! 大変です! 助けてあげましょう!」


 盗賊のボスの威嚇に当てられたマキナは『あわわわわ……』と言いながら、マキナは盗賊のボスであろう男に向けて指を指す。なんで助けに来たやつが慌ててんだよ……あっ、というかマキナはこの世界に間接的に手助けすることができないから、この局面においては約に立たないのでは? 


 そんな悲しき推測を立てていると、盗賊のボスらしき男はニヤニヤとした笑みを浮かべて、


「いや……女ぁ。オメーは残れ。よく見たら最上級の上玉じゃねーか。安心しろよ、俺達がキッチリ可愛がってやるからよぉ。とはいえ、俺達にも運が回ってきたもんだ。とはいえちょっとばかり味見したってあの方は許してくれんだろう。なにせ、あのお方は寛大だからなぁ? ヒッヒッヒ……」


 あのお方というのが誰だか分からないけれど、


「ずいぶんと三下なセリフだな」


「あ? なんだと? 枝切れみてぇな体格なやつが調子に乗りやがって……というか、お前、初心者冒険者か?」


 盗賊のカシラは明らかに俺を舐めている。


「てめぇだけはじっくりと嬲り殺してやるからよ。今のうちに神にでも祈りを捧げておくんだなぁ」


「はぁ……」


 祈りを捧げるべき神は俺の横で『あわわわわ』と慌てているのだが……。まぁ、きっとこの世界には色々な神がいるのだろう。そもそも俺はこの世界の神には詳しくない。ユリウスの記憶も神に対しての記憶は薄いせいか思い出せない。


「俺はこの付近を仕切る盗賊……ヤーナゴ様だ。まぁ、冥土の土産に俺の名を覚えて死ね」


 この世界に来て初のPVPと思えば……ほんの少しだけやる気が出そうな気がするのだが相手は現実の人間。俺の手に持っているのは安い短剣と盾とはいえたしかに凶器には変わりない。これで殺してしまっては目覚めが悪いだろう。


俺は短剣を構えると……


「おい、お前その短剣……おいおい! 嘘だろ!! それ呪いの短剣じゃねぇか!! キャハハハ! オメー!! とんだ憐れな野郎だな!! そんなゴミみてーな装備しかつけられねぇなんてよぉ!!」


 ヤーナゴは俺の短剣を見て、腹を抱えて笑っていた。


「まぁいい! さぁ、野郎ども!!! かかれっ!!」


 いっそ切り刻んでしまうかと思ったが、その考えは良くない。


 誰もが等しく人生の残機は1なのだから。


「あっ」


俺はふと簡単なことに気づく。


「斬らずに戦えば良くないか?」


 盗賊のモブは俺に向かって右手に持った短剣を突き刺そうとしてくる。突き刺す短剣を俺の呪いの短剣で受け流しつつ、前足を刈るように蹴ってこかす。


「――ッ!」


 こかした後は腕の回転利用し、骨盤を押し出すように放った蹴りを顔面に撃って確実に意識を刈り取る。


「うん、いいね。後4人か」


「てめぇ……面白れぇじゃねぇか」


 ナーヤゴは俺を見てニヤリと笑う。


「女どもを人質に取って脅してもいいけどよ。それじゃあナーヤゴ様の株が下がっちまう。こいつは俺が殺す。他の奴は手を出すんじゃねぇぞ」


 俺は呪いの短剣の柄でコメカミに当てる。インパクトの瞬間、少しだけ斜めに力を加えて脳だけを揺らした。一瞬、ナーヤゴの膝が落ちたようにも見えた。


「っ……! 惜しいなぁ?? お前がナイフを使っていたら俺を殺せてたぜ?? お前は甘ちゃんなんだよ。その甘さが命取りになること。その身をもって教えてやるよ。まぁ? 一回教えたら、あとはあの世行きなんだけどなぁ!?」


「なるほどな」


 手ごたえはあったんだけどな……今度はもう少し火力を上げよう。この感じなら、もう一撃与えるのは決して難しくはない。攻撃を与えるためのプロセスさえ守れば簡単だ。よし、次はどうやって攻撃を当てようか……考えている時間はとてもワクワクする。


「ってか、お前……さっきから何人かに分身しているけど妙なスキル使ってやがるなぁ?」


 あっ、良かった。ちゃんと聞いているみたいだ。VRMMOのために格闘技のジムに行っていたけど実践でも役に立って良かった。


「おい……身体がぁ動かねぇんだけど、てめぇ何しやがった??」


 そのまま、ナーヤゴは地面に倒れこむ。


「やべぇ……ボスがやられた? くそっ! 俺達じゃ敵わねぇ! 逃げるしかねぇ!」


「しかも武器すら使ってない……もしも武器を使われたら……」


「ちくしょう! すまねぇ! ボス!!」


「おいっ!! 待ておめぇら!! 何を逃げてやがるんだ!! 戻ってきやがれ!」


 残りの3人の盗賊の部下は薄情にも置いて逃げる。


 このまま騒がれても面倒だ。なので、俺は仕方なく


「おいっ! てめぇ! なにしやが――っ!」


 掌底でナーヤゴのあご先を掠めて、意識を奪った。


「よし。これで終わりだな」


 とりあえず盗賊の問題は解決した。とりあえずなんとかなったようだ。


「あ、あの……助けて下さってありがとうございます。えっと……私は水竜族、族長の娘のアクアで妹のクリアと申します。よろしければお名前を聞いてもよろしいでしょうか……?」


 盗賊に襲われていた水色の髪の少女は恐る恐る俺に話をかけてきたのであった。とりあえずはなんとか無事みたいで安心した。


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