6 作戦会議は続く?

「ねえ、ちょっと待って。元々あたしきっかけで始まった勝負なんだから、あたしの名前を冠した団体名でもいいんじゃない?」

 恋ちゃんが不満そうに叫んだ。途端、三人の野郎の顔が険しくなる。


すけべS厚顔K女神MだぜD、なんてどうだ?」

「あ、いいね。ドすけべで厚顔、似合ってるよ」

「はい」

 そして、思い切り皮肉った、のだが……。

「あらー、いいわねー! 特に、、ってところが!!」

 言って、頬を染めたあおいとましろに叩かれた。


「い、痛い……」

「るせんだよ」

「だ、だめですよ、女神さま。女の子がそんなこと言っちゃ」

 今までにはなかったツッコミに、呆然とする恋ちゃんであった。


「あー、では気を取り直して。SKMD、今週の作戦会議を開始します」


 三太は、こほん、と咳払いして再度宣言した。


「では、まず、今日までのパンチラ(モロパン含む)数を報告します」

 いぇ~い、と女神さま。が、女子二人に睨まれ、小さくなった。

「先日報告した数に、あおいちゃんを加えて、現在六パンチラとなっています」

「残約三百以上、変わらず……だな」

「ま、まあ、前回の集まりからまだ二日しかたっていませんし……」

「あめえっ! 昨日は何やってたんだ? ああん?」

 ましろが三太と康司を睨む。

「だ、だって昨日は集会とかあったし、孝明が……」

 そこまで言って、三太は口をつぐんだ。


「おい、青。人のせいにすんな。孝がどうだろうと、山と二人で動けたよな?」

 そ、それは……と男子二人は俯いた。

「いいか青、それに山。どんなことだろうが、毎日コツコツとやっていく。それが、成功への近道なんだ」

 優しく諭すましろに、二人は見入った。

「だからオレを見ろ! いい見本が、ここにいるっ!」

 そしてほめろーっ! とこだまする絶叫に、二人はなんだか色々と返してっ、という瞳を向けるのだった。


「まあまあ、ましろちゃん、落ち着いて。でもね、三太くん。ましろちゃんが言ってることは、大筋で合っているわ」

 どうどう、とましろをなだめ、にっこりとあおい。

「わたしの場合、いつ寝込んじゃうかわからないから、元気な時は、少しずつでもいろんなことを進める努力はしてる。まあ、あんまりこんな事、他の人には言いたくないんだけどね」


 ましろやあおいの成績、その他の状況が、二人には容易く想像できた。


「ご、ごめんよ、佐野さん」

「すいませんでした」

 だから、二人は素直に頭を下げた。

「わ、わかりゃあいいんだよ」

 少し照れくさそうにましろはそっぽを向いた。あおいは、ふふっ、と微笑む。


「俺も、すまなかった」

 孝明も頭を下げた。

「おめえはいいんだよ」

「いや、よくないだろう」

「や、山尻の事もあるし……」

「そうね、孝明くんも悪いし、いいんじゃない」

「お、おい、あおい……」

 ましろは孝明を気にしつつ、あおいを睨む。


「孝明くんも悪いし、桃ちゃんも悪い」

「なっ、桃は悪くないだろう?」

 掴みかかりそうな孝明を、男二人が止める。それにひるまず、あおいは続けた。

「転入してきてから、二人の事見てたけど……小学生の頃から何にも変わってないね」

「そ、それがどうした?」

「それがダメだって、言ってるの。孝明くんも桃ちゃんも、お互いをかばって、自分が悪いって思いこんで、お互いの事を見ようともしてないじゃない」


 孝明は、何も言えなかった。


「お互いの事を思い合うのはいい事だけど、それでお互い傷つけあってるみたい」

 毅然と孝明を見つめる。

「あ、あおいちゃんに、何がわかるんだよ?」

「そうね。二人の本心はわからないのかもね。でもね、本当に桃ちゃんの事が大切なら、自分の本当の気持ちをぶつけてみなさいよ」

「俺は……俺はぶつけてるさ……けど桃が……」


「おい、孝。さっきオレは何て言った?」


 孝明が、はっとする。


「……人のせいに、すんな」

「そうだ。山尻が心を開かねえのは、孝の何かが足りねえんだろうよ」

 本当の聖女が、そこにいた。孝明は、ただただその顔を見つめる。

「さ、佐野……俺たちの事、いろいろ気遣ってくれて……すまない」

「いいんだよ」

 どこか寂しそうに頷いた。

「さ、孝明くんは今、とっても大事な用事が出来ました」

 あおいが、ぱちりとウインク。そして孝明は、駆けだした。



「ましろちゃんも、大変だねえ」

「おまえに言われたくねえ」

 なぜか意気投合している二人を、女神さまはやさしく包み込むように見つめていた。


「よし、じゃあ青、山。今日のところは山尻に対する作戦はいいとして、実戦と行こうぜ!」

「えっ!? そんな急に……」

 康司もぶんぶんと首を縦に振る。

「コツコツ、だよ?」

 と、あおいが優しく戒める。

「う、わかったよ……」

 二人はちょっぴり苦い顔をした。

「よし、昨日の分もあるから、一人一めくりだな」

 一人一殺みたいに言わないで、と三太は肩を落とした。




 四人は校舎A棟に向かった。女神さまは、じゃ、見てるからね! と言って消え去っていた。


「お、早速向こうから獲物が来たぜ」

 玄関を入ってすぐに、下駄箱にしゃべりながら近づいてくる女子二人に遭遇した。

「よし、青は右、山は左を狙え!」

「うん」「はい」

 二人は下駄箱の陰に隠れて、集中する。


 右の女子のスカートが、ぴくりと動き、左の女子の後方に、魔法陣が展開しかけた。


 ところで。


「あなたたち、おやめなさい!」

「今日は勝つ」

 統制委員会の二人が現れた。

「ちっ、もうきやがったか」

「三太くん、康司くん、あの子たちを巻き込んじゃうから、中庭までダッシュだよ!」

 二人はうなずき、そのまま駆け出す。

「あ、わたしとあおいちゃんはゆっくりいくから、がんばってね」

 二人の女子生徒を気にして、ましろはヒロインに戻っていた。


「ふふ……では、ゆっくりといらして下さいな」

「佐野ましろ、覚悟」

 美麗は優雅に笑み、佳奈は少し表情を硬くして言った。


 そして、雪辱に燃える二人は、ゆっくりと戦場に向かう。

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