第16話[涅槃]姉さんは本当にバカだよね
【表紙】https://kakuyomu.jp/users/akatsukimeu/news/16817330668804704296
「カンナ、アンタ、いつの間にそんなにエッチになったわけ?」
「えー、エッチなのは美雪ちゃんの方でしょ?」
「でもアンタ、相変わらずおっぱいは全然大きくならないのね。魔法の力でおっぱいは大きくしてもらえなかったの?」
「あ、ひどーい」
「でも、カンナ身体、とても温かかった」
「うん、美雪ちゃんの身体もね」
「今更だけど、私たち、生きてるの? 死んでるの?」
「生きてるよ。私もメイも美雪ちゃんも。ヴァジュラの力に生かされる」
「そうなんだ」
私はカンナに膝枕をされている、カンナの太ももの感触がとても心地よかった。
「……美雪ちゃん、やっぱり美雪ちゃんは、元の世界に帰るべきだよ」
「え?」
唐突にそんなことを言われて、私は思わず起き上がる。
「どうして? 私、カンナとずっといっしょにいたい!」
「いつでも会えるよ。ここに来てくれさえすれば」
「ならカンナも一緒に帰ろうよ!」
「無理だよ。元の世界に私の居場所はないもの。パパとママも死んじゃったし」
「カンナ……」
「でも、美雪ちゃんは家族も友達もいるでしょ? これから高校に進学する。大学に行って、きっと素敵な大人になれるよ。私には見られない未来があると思うの。私は美雪ちゃんの親友として、そんな美雪ちゃんの未来の可能性を奪いたくないの。だから――」
カンナは私の手を取る。
「私の代わりに、未来を見てきて欲しいの」
カンナは悲しそうに笑う。
カンナの言う通りなのだろう。
ここから出たら、きっと私は大人になる。まだ私が知らない、未知の世界が待っているのだろう。
一方で、この世界はカンナとメイの二人きりの世界。
それは裏を返せば、この世界は二人の発想がそのまま限界という事になる。
もし私が外に出たら、私はどんどん変わっていく。
もしかしたら新しい世界に触れることで、カンナとの楽しかった記憶が風化するかもしれない。
私の脳裏によぎったのは、小さい頃の友達との出来事。
近所に住んでいる友達でも、新しい出会いに塗りつぶされて、どんどん疎遠になって忘れていった。
嫌いになったとかじゃなくて、お互いに無関心になった。
そんな風に、友達と呼べた友達と疎遠になった経験はいくらでもある。
もしカンナの言う通り、ここに来ればいつでも会えるとして、ここで外の世界に出ることを選んだらきっといつか彼女と疎遠になるだろう。
いや、そもそもカンナの言う通り、本当に私はいつでもここに来られるのだろうか?
(ううん、もしここから出ていったら、二度と帰ってこれない)
カンナの悲しそうな顔が、これが永遠のお別れだといっているような気がした。
それでもカンナは「私の代わりに大人になって欲しい」と言っている。
自分ではたどり着けなかった未来の可能性を見てきてほしいと言っているのだ。
"親友"だから。
私は――、
「もう遅いよ」
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