第14話[涅槃]本当の再会。

【表紙】https://kakuyomu.jp/users/akatsukimeu/news/16817330668804704296


「う、うう、ううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ! うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 立ち尽くすカンナを前にして、私は泣くのを止めることができなかった。

 カンナは感情のない口調で私に問いかける。

「あんなに大好きだったのに、どうして?」

「私、カンナに酷いことして、死なせちゃって、ずっと謝りたくて、でもできなくて、たから忘れようとしたの」

 涙がとめどなく溢れてくる。

「私は自分の欲望に負けて、カンナの気持ちを無視して、カンナにあんなことしちゃった。カンナが本当は嫌がっていたことくらい私だって分かってたわよ。でも、カンナは私とずっと友達でいたいって思ってたから、だから友達のままでいようとして頑張って我慢してたのに、私はそんなカンナの気持ちを踏みにじっちゃった。それで、カンナを追い詰めて、カンナは、死んじゃった」

「……………………」

「カンナが死んで私はずっとずっと後悔してた。でも、どれだけカンナに謝りたいと思っても、カンナはもういなくなっちゃったから、どれだけ強く謝りたいと願っても、謝ることなんかできなくて。ずっと苦しくてたまらなくて、こんな苦しいの耐えられなくて、もう忘れるしかないのかなって。……でも、ダメだよね。忘れたりしたら」

 カンナはずっと私を見下ろしていた。

 でも、いま目の前にカンナがいる。もし目の前の彼女が、私を恨んで現れた亡霊だったとしても、伝えないといけないと思った。

「カンナ、ごめんなさい」


 私はようやく、その言葉を口にできた。

 それでもカンナは、ひどく冷淡な眼差しを向けていた。

 それは謝罪を聞き入れないという態度ではなく、美雪の謝罪そのものに関心がないという態度だった。

 カンナはにこりと笑った。突然の無邪気な笑みだった。

 何かを言おうとして――

「もうやめて!」

 懐かしい声。

 美雪の前に立っていたカンナにしがみついたのは――

 カンナとうり二つの外見をした女の子だった。

 いや、というよりも突然現れたその女の子は美雪が知る「本当のカンナ」だった。

「メイ! これ以上美雪ちゃんにいじわるしないで!」

 メイ、と呼ばれたその少女は、先ほど一瞬見せた無邪気な笑顔が掻き消え、不機嫌そうな顔になった。

「……姉さん」

「メイ、私、美雪ちゃんとお話したいな」

「……好きにしたら」

 私がさっきまでずっとカンナだと思っていた――メイという女の子は、私を一瞥するとどこかに立ち去っていた。

「……………………カンナ?」

「久しぶりだね、美雪ちゃん」




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る