社畜、武器を受け取る


結論から言おう。

回らない寿司はクソ美味かった。

もうマジで、前に行った寿司回転チェーンの寿司の何倍も。 


俺も初めての回らない寿司ということでめちゃくちゃ食ったと思うがそれ以上に極道……もとい沢良木社長がもっと食ってた。

引くくらいに。


ただの寿司屋じゃなくて超高級寿司店だ。

もちろん値段も跳ね上がる。

会計を見た時は俺の数倍の値段の分を社長は食っていて秘書兼社長の金銭を管理しているらしい晴翔は目が死んだ魚のようになっていた。


ご愁傷様! と思いながらも寿司を食っているとシロから俺の家兼ギルド事務所の話が出てきてそれを聞いた社長が


「おぉ! いいじゃあねぇか。俺も支援してやるよ」


と、資金面で援助してくれる話になった。

そう簡単にやっていいのかと思って晴翔をみたらもう何もかもを諦めた清々しい笑みを浮かべていて「あ、大変なんだな」と思ったことは俺だけの秘密だ。


まぁそんなこんなありつつもその翌日、現在俺は久々の武器屋に来ていた。

おっちゃん元気にしてっかな。


「おーい、ストだ。開けてくれ」


俺はそう言いながらドアを叩くが、全く反応がない。

5分くらい待ってみたがなんの反応もない。

ありゃ、寝てんのか?

いやでもこの看板に記載してある営業時刻はもうすぎてるからやってるはずなんだけどな。


ガタ……


「ん?」


開いてる……

全く不用心だな。


俺がドアに手にかけるとそのまま扉が開き、店に入れるようになっていた。


「ちょっと邪魔するぞ」


俺は一応声かけてから中に入ると何かにぶつかった音がした。


「ん? なんだ……ってうわぁぁ!!」


そこには床にぶっ倒れているおっちゃんの姿があった。


「おい! おい、おっちゃん! 大丈夫か!!」


「う、うぅ。お、おう……スト……ようやく来たか……」


俺がおっちゃんを揺さぶるとクマでもう目が真っ黒になっているおっちゃんがゆっくりもそう言った。


いやいやいや!

おうスト、じゃねぇだろ!


「お前そんなことより早く寝ろよ! クマがすごいことになってるぞ!」


「あ、ああ。これは大丈夫だ。それよりも早く……お前に説明するものがある……つ、ついてきてくれ」


「いや、そんなことより早く!」


「いいから! ついてきてくれ」


おっちゃん!

お前そんなところじゃが……! って言いたいけどそう言っても無駄だな。

アレはもう完全に目的を果たすまでいうことを聞かない目だ。


それにしてもそこまでして俺に見せたいものって?

もしかして完成したのか?

武器が。


俺はおっちゃんに言われるがままについていくと、そこは家事工房のようなところだった。

たくさんな金槌や目立つ炉、見慣れない光景にすこし興奮しているとおっちゃんは俺にとある短剣を渡してきた。


「もしかしてこれは……」


「そうだ。お前に頼まれていた短剣だ……」


すごい、これはヤバい!

もう持っただけでわかる。

明らかに軽すぎる。

俺が爺さんからもらった魔導武具アーティファクトと比べても以上に軽い。


「これはな……前に行ったようにオリハルコンを使っている。だからそこらの武器とは雲泥の差を誇る性能だ」


確かにこれはおっちゃんのいうとおりだ。

軽い、それだけじゃなくて硬い。

そして柔らかい。


物質というのはただ硬ければいいものじゃない。

最高峰の硬さを誇るダイヤモンドでもトンカチで勢いをつけて殴れば砕けると言われている。

しかし鉄はそうしてと砕けない、歪むだけだ。

歪むのは鉄が柔らかいからだ、それによって衝撃を分散している。

鉄の数十倍の耐久力ならばトンカチを使っても傷一つつかないだろう。

すごすぎる。


「ふふふ、これだけでもいいと思ったんだがな……久しぶりの客だ、少しサービスをつけてやった」


サービス?


「というよりも付いたんだがな」


「付いた? どういうことだ」


「ああ、この短剣にはとある能力が宿っている。それは、〝魔力の分解〟だ……」


分解……だと?


「この短剣はその刃が触れた魔力を分解する力がある。例えばの話だ、モンスターが魔力を使って火の玉でも撃ってきたとしよう。お前ならどうする」


火の玉?

シロのスキルのようなものか。

だったら……


「俺だったらそれを避けてできた隙に攻撃をする」


「そうだろう、普通ならな。だがこの短剣は違う。魔力の分解、それは発動したスキルにまで及ぶ。これがどういうことかわかるか?」


魔力の分解、スキルにも及ぶ……

まさか!


「スキルを分解する……?」


俺が考えた結論はそうだった。

スキルにも及ぶ魔力分解。

それならば考えうることはこれしかなかった。

もしかしたら他にもあるのかもしれないが俺にはこれしか思いつかなかった。


さぁて、答えは……


「正解だ……というところだが少し違う」


「少し違う?」


「もしお前のいうとおりできたらもうそれはぶっ壊れを超えたナニカだ。俺でも流石にそこまでのは作れん。その短剣の分解は魔力の中央に当てることで発揮される。中央から徐々に分解されていって最終的に全て分解する形だな。もし端でやっても削れるのはそこだけで残ったところが分解しきれずに当たって死ぬ」


そりゃあそうか。

流石にそんなものが作れたらもうスキルの価値なんて無くなってしまう。

いや、具現化系のものでなければ大丈夫なのか?


スキルは主に三つの系統に分かれる。

①具現化系

 シロのスキルなどはここに入る。スキルで 

 魔力を操りそれを具現化させ打ち出したり武

 器にしたりする。


②強化系

 身体強化などが主なものだ。魔力を使い身体

 能力などを向上させる。ゲームでいうバフの

 ようなものだ。少ないが逆のデバフを与える

 者もいる。(数が少ないためここにカウン

 ト)


③支配系

 これは珍しく、世界に500人ほどしかいない

 とされている。モンスターを操ったり特定の 

 ものを操ったり……そのような何かを支配す

 るスキルがここに入る。俺のスキルはこれ 

 だ。


新しく生み出して打ち出す遠距離スキルの具現化系以外ならばこの短剣の影響を受けないかもしれない。

あくまで仮定の話だけど。


「まぁともかくだ。こいつを扱い切るためにはそう言ったものを見られるお前さんのスキルじゃなきゃダメってこった」


「え、俺のスキル知ってんの?」


俺が聞き返すと笑いながらおっちゃん言った。


「そりゃあ自分からバラすもんだからな。そんな奴は初めてみたぜ。まぁそれで作りやすくなったんだけどな、ガッハッハ」


「ん、待てよ。今の発言、お前がこの効果をつけたってことか!?」


「そうだ。いっただろ?〝神匠〟ってな。こいつは魔導武具を生み出せる鍛冶師のことなんだ。相当研鑽を積む必要があるがな」


……マジか。

魔導武具を生み出せるってもうやばすぎるぜ。

おっちゃんは鍛冶に特化したすごい職人だと思ってたけどそれ以上だったな。


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