社畜、グループに入る
「ふぅ、じゃあこれで終わりだな」
「そうですね」
俺とシロ……というよりシロの配信機材を話しながら片付けているとシロがとあることを聞いてきた。
「……そういえばストさん、前から気になってたことがあるんですけど……」
「ん? 気になっていたこと?」
「はい、ストさんってどこかのグループに入ってるのかなって」
「グループ?」
グループってなんだ?
別に俺は何かに入った覚えはないけど……
え、なに?
何か入らなきゃいけないものがあるのか!?
そう思ったがそうではなかった。
「グループっていうのは配信アプリYouWatchの配信者と契約したりする会社のことですよ」
「それって絶対に入らなきゃいけないものなのか?」
「あ、いえいえ。別に絶対に入らなきゃいけないわけじゃないです。個人の自由です」
まぁ、そりゃあそうか。
YouWatchに入る人なんて日に日に増してる。
そんなたくさんの人を企業が管理できるわけがないな。
あれ?
でもだったらどうして入るんだ?
グループに。
「グループに入ると自分のチャンネルを宣伝てくれたり、配信を手伝ってくれたりコンビニなどでのコラボ商品などを作ってくれたりするんですよ。もちろん人気ならば、ですけど」
はー、なるほどねぇ。
確かに自分だけでやるのは限界がある。
そこを手伝ってくれるのはありがたい。
シロとかはライブ配信だけでなく普通に録画したものを出しているらしいけど、俺はそんなのド素人だからできなかったし。
「でもなんで急に聞いてきたんだ? あ、ちなみに俺は入ってないぞ」
「それはストさんに私の入っているグループ〝パワラー〟に誘おうと思いまして」
え、シロってグループ入ってるんだ。
……いやでもそうか。
ここまで人気なのに逆にグループに入ってないのはデメリットだからな。
……あ、だから俺を誘ってくれたのか。
すごいありがたい。
「わかった、入らせてもらうよ」
「では説明を……ってえ? 説明聞かなくてもいいんですか!?」
「いや説明は聞くけど入ることを決めたよ。シロが入ってるんだったら問題なさそうだしな」
俺がそういうとシロは明らかに嬉しそうな顔をした。
「そんなに嬉しかったのか……?」
シロを少し揶揄からかうと顔を真っ赤にして「怒りますよ!」といいながら説明を始めた。
「ふぅ、ま、まず私が所属しているグループ〝パワラー〟は本社を東京に置く大手の企業です。主にダンジョンのYouWatch配信者と契約を結んでおり、グッズの発売やコラボなどをしています」
なるほど。
てかやっぱりシロほどの配信者を抱えておくんだから大手企業だったんだな。
「パワラーの方針はコラボは自由にやってOKただし問題を起こしてない配信者に限る、というものです。だから私は自由にストさんとコラボできるわけです。ストさんは別に問題があるわけじゃないですからね」
あぁ、なるほどね。
グループに所属しているのにそんなに頻繁にコラボをしていいのかと思っていたけどそういうことだったのか。
「それで具体的にいつグループに入る契約をするんだ? 今ここで決められるわけじゃないんだろ?」
「はい、もちろんそうです。それは後ほどどこかで決めます。あっ、この際ですから連絡先交換しませんか? DMだけじゃキツイので」
「そうだな、そうするか」
そうして俺とシロはお互いの連絡先を交換し、そのまま別れた。
別れた2日後、俺は契約のために呼び出され、とある店に来ていた。
いやー、うん。
マジか。
「回らない寿司ってマジ?」
まぁ嬉しいよ?
嬉しいんだけどさ。
流石にいきなりこの店に来てって言われてこんな超高級店だとね……
おおっと、怖気付くな俺、ちゃんと契約すると決めたじゃないか。
うん、ちゃんと行こう。
店に入り、店員に案内されるがままに言われた部屋に入るとそこには見知った顔が二つあった。
「!? おいおい、シロはともかくなんで晴翔がいるんだ!?」
「!? な、なんでストさんがここに!?」
「……え? お前知らなかったの?」
何故か晴翔がいて驚いていたがそれ以上に晴翔が驚いていた。
どうやら本当に晴翔は俺が来ることを知らなかったらしい。
「いやぁ、俺は超極太の契約者が来るって言われたので……ってまさか! その極太の契約者って……」
そこまで晴翔が言うと着物を着たガタイのいい男の人がやってきていった。
「そうだ、こいつがその極太の契約者だ」
……え、なに?
極道?
そこに現れたのはマジでそう見えてしまうほどの威厳と、声色がある男との人だった。
「よぉ、遅くなったなぁ、スト……いや、西原海斗よ」
「!?」
俺の名前を知っている!?
誰にも話していないのに……調べられた!?
「おおそう驚くな。顧客なんだ、こちらだって調べる権利はあるだろ?」
そうなんか?
まぁいいか。
それよりも舐められないようにしなければ。
こういった人たちに舐められたらなんかヤバい気がする。
勘だけど。
「それで今日は契約の話を詰めると聞いたんだが……」
「ほぉ、この俺を見てその態度を維持できると流行るじゃあねぇか。いいぜ、気に入った。お前さんと契約してやるよ」
どうやら俺の態度が気に入ったらしくなんか契約してくれるらしい。
「俺は契約する奴は直々にあってどんなやつか確認するんだ。人間には書類じゃわからない部分もあるからな」
「そうなのか。まぁ確かに経歴がよくても実際に仕事ができない奴もいるからな」
会社にも来てそうだった人も多くいたし。
「さぁて、前置きはそろそろ終わりにして詰めていくか」
「そうするか」
「まずお前さんは俺らのグループ、パワラーに入りたいってことでいいんだな?」
「ああ、こちらにもメリットがあるからな」
「わかった。お前さんは特に問題があるわけじゃないからOKだ。契約成立だな」
ふぅ、終わった。
って……
「は? 早くないか!? 収入とかそういった話は!」
「ああ、それはこちらが全てやっておく。もちろんそれが少なかったりしたらいってもらってかまわん。ただあまりにも規格外は無理だがな。ここから抜けても構わん」
「マジかぁ」
どうやらここはほぼ全てをむこう側がやってくれるらしい。
いや嬉しいんだけどね。
楽できるから。
ただそれは先に言ってほしかっなぁ。
まぁいいか。
「それじゃあこれで終わりなのか?」
「契約の話は終わりだがな、せっかくの契約記念だ。ここで飲み食いしてってくれ」
え、マジでいいの!
やったぜ!
最高じゃないか!
こんなに高級店で食えるなんて。
俺はこう言ったものには疎いからな。
そうしてもうそれはそれはめちゃくちゃ寿司を食って帰った。
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