社畜、魔導武具の秘密に気づく

バタンッ!


と、そんな音を立てながら鉄の扉の部屋に入るとそこには1人の男がいた。

そうして俺たちが来たことを確認するとこっを向き、挨拶をした。


「やぁやぁ、これはこれは。どうもお越しくださいました」


と。

ムッかぁ……

なんだこいつすっげえムカつく。

なんか声が無理!

なんていうんだろう、言葉にできないけどなんか無理、うざい!

それ以上に動作がウザい!

なんとこいつは挨拶をする時丁寧にお辞儀までしやがったのだ。

まじで舐めている。


一瞬ぶっ飛ばそうと思ったが俺はそこで思いとどまった。

ステイだステイ、落ち着け俺。

ここで攻めてもなんの得にもならん。

今特攻して負けましたーじゃ話にならないからな。


自分にそう言い聞かせて敵のラスボス……(多分)を見るが、ぱっと見ナイフや銃などの武器は持っていないようだ。


……一応聞いてみるか。


「それで? アンタはどこの誰なんだ?」


ダメ元で敵の所属と名前を聞き出そうとした。

どうせ受け流されると思っていたのだがその反応は予想と全く違った。


男はこれでもかと大袈裟に


「おぉ! これは失礼しました。私はデーモンズ協会のNo.5と申します」


と、自身の所属と名前……というよりはコードネームのようなものを教えた。


どういうことだ?

なぜ俺にこんなことを教えた?

いや間違っているかもしれないがだからと言ってこちらに付き合うメリットはないはずだ。


「なんでそんなことをわざわざこっちに教えるんだ?」


「ふふふ、それはですね……あなたたちがここから出ることはないからですよ!」


その次の瞬間、俺の魔力センサーに特大の魔力の塊が映った。

それは……


「これは……予想外だったな……」


「……」


俺とレリックは各々反応する。

レリックはどちらかと言えば様子見のようだが俺の心臓はもうバクバクだった。


おいおい嘘だろ!?

明らかに別の生き物を合体させたような体。

そして、その間には無理やりくっつけたようで少し混ざっている。


「ふははははっ! どうだい、ボクのスキルの真骨頂! 合体獣キメラの感想は……!」


合体獣だと!?

やばいやばい、これはやばい。

見た感じめちゃくちゃデカいライオン、蛇、鳥の部分が見える。

そしてそのベースになっているのが……


「魔導人形ゴーレム」


はは! もはや笑いしか出てこないぜ。

ゴーレムっていうのはここに来るまでに調べたがひたすらに硬い!

物理も魔法も、攻撃力はそこまでないものの防御力が圧倒的に高い。

それに加えてライオンとかのモンスターの攻撃力だ。

ライオンとかみるからに攻撃力高そうだからな……



「よし、行くぞレリック! アレ? いない」


どこ言った?

俺はレリックにやるぞと合図しようとレリックの方を向いたが誰もいなかった。

そして再び合体獣に見た時、俺は叫んだ。


「……っておいぃぃぃぃぃ!? せめて合図しろよ!」


そう、すでにレリックは攻撃を始めていたのだ。

くっそ、あいつまじで協調性ないな。

自己中にも程があるだろ!

まぁ、強いから心強いんだけどな!

あいつが攻撃的なのは今の段階ではありがたい!


俺はレリックが攻撃を仕掛けたと同時に俺も借りてきたナイフで攻撃を行う。


「グォォォォォォォォォ」


「よし! 効いている!」


やはり思ったとおりだ。

いくら合体獣が強くても元々は別々の生き物だ。

だからこそ、そのくっついている間のところが……


「脆いっ! レリック! つぎはぎのところを狙え!」


「わかった」


俺とレリックは交代しながら攻撃をただひたすらに続けていく。

決して相手に攻撃をさせないように。

しかし順調に行っていたのはそこまでだった。


「ふふふ、どうです? 私の合体獣は硬いでしょう? 耐久も申し分ない……テストは合格ですね。耐久テストにご協力くださりありがとうございました。それでは、殺しなさい」


男が言いたいことを一方的に言った後、合体獣は咆哮し、俺とレリックは吹っ飛ばされた。


そしてその次に見た光景は俺に向かって拳を振り上げている合体獣の姿だった。


俺はそれをギリギリ回避して思う。


おい、これおかしいだろ!

体格とスピードが全然釣り合ってないんだが!?

咆哮からまだ三秒も経っていないはずだ。

そして吹き飛ばされた距離は目測おおよそ10メートル。

その距離の中咆哮してこっちに飛び込んできて攻撃体制を整える、しかもこれを3秒より短く行う。

これは正真正銘化け物だな。


さてどうする。

普通に戦ってもジリ貧だ。

レリックは大丈夫そうだが俺が持つかわからん。

レリックの足手纏いになるのは嫌だ。


だからと言って今無策に飛び込んでもあの攻撃力とスピードは脅威すぎる。

と、俺は5メートルくらい凹んでいる先ほど回避したところを見ながら思った。

まぁ、結局のところ……


逃げて逃げて逃げまくって勝機を探せ!

ということだ。


それから俺はただひたすらに避けながらずっと行動を見ていた。

レリックはずっと攻撃をしようとしていたが途中から諦めたらしく俺と同じようにずっと避けていた。


ちなみにあの男は俺たちがずっと避けることに精一杯だと思ったらしく、もう勝った気になっていてめっちゃニヤついてる。

その顔を見て俺は一つの感情に支配された。

うぉぉぉぉ!

その顔クッソムカつく!

絶対に……絶対に後悔させてやる……


そんなことを思いながらしっかりと避けているとあることに気づいた。


「あれ? これずっと同じじゃね?」


そう、それは合体獣の攻撃がずっと同じ攻撃、同じ動きを繰り返していたのだ。

動きが同じ……だったら……!


俺はタイミングを見て攻撃を仕掛ける。

レリックの驚く視線が突き刺さるがそれを無視して攻撃する。


俺の攻撃に一瞬怯んだ合体獣は次に咆哮をしようとしていた。

よし!

やっぱり行動パターンは同じだ。

ここまでわかればあとは簡単だ!


敵の攻撃を避けて攻撃。

これをひたすら繰り返していく。


「おりゃぁぁぁぁぁ!」


「グガァァァァァァァッ!」


「なんだと!?」


ずっと余裕を保っていた男は俺が合体獣をフルボッコにし始めると焦った様子を見せた。


「クッソォ! 合体獣キメラが押されるとは……しかし、これが一体だけだと思うなよ!」


「なに!?」


その時、真横に俺が相対している合体獣よりは劣るがS級レベルの合体獣が攻撃を仕掛けてきた。

うぐっ、やばい。

流石に目の前のこいつを捌くのに手一杯だ。

レリックはまだ攻撃パターンについて気づいていないようだし……

うぅ、後盾が、せめて盾があれば……!


俺がそう思いながら魔力を込めてナイフを横の合体獣に向けるとナイフが光っていった。

!?

な、なんだ?


そして次に視界に入ったのは……


「た……て?」


先ほど持っていたはずのナイフはなく、代わりに大楯が手にあった。

盾……それは俺がさっき欲しいと思ったもの……

そこまで考えた時、俺にある考えが浮かぶ。

とあることを考えると、その大楯は次に片手剣へと姿を変えた。


「なるほどな」


「な、なんなのだ。なんなのだそれはぁ!」


試した結果、この魔導武具アーティファクトの特殊能力がわかった。

この魔導武具の能力は……


周りもしくは自分の魔力を消費して所持者の思った姿に変える、というものだ。


爺さんがよくわからないと言っていたこれは……


「だいぶぶっ壊れの武器だな」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る