社畜、犯罪組織を潰す
「よし、いくよ?」
「……あっ、ああ……」
レリックはなんでもないように俺にいうと再び歩き始めた。
うっわ。
やばいってレリック《こいつ》。
なんの迷いもなく首を刎ねたぞ?
あー、ごめん。
敵だから本来そんなこと言っちゃいけないと思うけどごめん!
名前も聞かずに殺しちゃって……
でも人をたくさん殺してきたお前も悪いからな!
爺さんに組織の実情を教えてもらった。
俺はそこのところは抜かりないのだ。
と、それは一体置いておくとして。
問題はあの長剣だ。
ダンジョン協会の時からずっと見ていたから間違いないが、レリックは初めから武器なんて持っていなかった。
ナイフとかは持っておらず、もちろん長剣もだ。
それに、問題はさらにある。
武器の出し入れなどはまだ、理解できる。
スキルによるものだ。
だがしかしその武器を扱う力や技術は?
特攻してきた敵のナイフを受け止めた時、レリックは長剣を片手で持っていた。
スキルの効果は原則一つだけだ。
そしてそのスキルは一人一つしか手に入れることができない。
俺のスキルは一見二つ以上の効果を持っているように見えるが、それは『魔力を自由自在に操作する』というスキル効果によるものだ。
だからこそレリックはおかしい。
武器の出し入れなどはスキルだとわかるが、それを扱う力や技術は武器を出し入れするスキルによるものではないのだ。
レリックは効果が二つ以上のスキルを持っているのか、それとも二つスキルを持っているのか。
そもそも力も技術もレリック本来の力なのか。
三つ目だったらまじで失礼だ。
もしそうだったら謝っておこう。
まぁ、ともかく今わからないことを考えていても仕方ない。
このことは俺の頭の片隅にでも置いておこう。
「それで? 敵は今のところ見つかっているか?」
「いいや、さっきの以外見つからない」
俺がレリックに聞くとそう答えが返ってきた。
俺も一応スキルを発動させてみたが、やはり一際濃い魔力は感じられない。
どうやら本当にいないようだ。
「ん?」
その時、違和感を感じる。
なんだ?
なんだこれは……
違和感?
とこだ、どこに感じる!?
その違和感の正体はすぐに明らかになった。
「これって、さっきの戦闘の後?」
「おかしい、さっきから私たちはずっと前に歩いていたはず」
そう、そこにはさっきの男が襲ってきた時にできたダンジョンの地面にできた傷だった。
なるほど、違和感はこれだったか。
どうやら俺たちはずっと同じところをぐるぐると回っていたらしい。
通りで見覚えがあるわけだ。
「さて、どうする? このままじゃ埒らちが開かないよ?」
レリックが俺に対して聞いてくる。
なんなんだろう、これは。
とりま、ずっと同じ場所を回っているんだったら考えられる可能性は二つ。
一つ、これが幻覚である可能性。
幻影を見せられていて俺たちは行ったり戻ったりしている、という説。
もしくは眠らせれて見せられている可能性。
二つ、空間の操作
道を空間で繋げているのだとしたらずっと同じ場所を繰り返しているのも納得がいく。
もし眠らされているんだったらもうまじもんで無理だろうけど、ずっと展開していた俺の魔力センサーには何も反応しなかった。
だから一回ここは眠らされている可能性は無しと考えよう。
だとするとやるべきは……
「とりあえずぶっ壊すか」
「え? どういうこと?」
「ああ、これからやることだ。俺たちがずっと同じところを繰り返しているのはまぁ、間違いなくスキルによるものだ。だとしたらそのスキルを維持するのに魔力が必要になるはず」
「なるほど、暴れ回ってその魔力を消耗させるわけか」
レリックは俺の言いたいことを理解し、俺に言った。
「その通りだ。もしこれが空間を維持するものだったとしたら……」
俺はそう言いながら借りてきた魔導武具アーティファクトで無造作にダンジョンの壁を切り付ける。
もちろん、ナイフを傷つけないようにしっかりと魔力で包んだ上で。
「!?」
「やっぱりか」
すると、その壁に魔力が集中し、どんどんと元の壁に戻っていった。
これで確定だ。
これは幻覚とかではなく、空間の固定や操作の類だ。
種がわかったら後は簡単だ。
ひたすらに暴れまわればいい。
俺とレリックは顔を合わせ、そして同時にダンジョンの壁や地面、天井に攻撃をし始めた。
レリックはさっきの長剣というものからは打って変わってロケットランチャーという現代っぽい武器をどこからか生み出し、打ちまくった。
俺は魔力を使った二段階攻撃の練習として壁を殴りまくった。
そうして殴り続けること数分後。
突如として目の前に倒れている女が現れた。
スキルで確認してみると、魔力がほとんどすっからかんになっていることからこいつがこの状況を引き起こした犯人だろう。
「さてと、こいつはここに放っておくか。どうせもう魔力切れで数日間は動けないだろう」
「ん、念のためロープで縛っとく」
再びレリックがどこから取り出したのかわからないロープで縛った。
「よし、行くか」
そうして再び歩き続けること数分後。
今度はしっかりと変化が現れた。
「鉄の扉……ってことはダンジョン関係ではないな」
「うん、ここがラスボス」
そこにはダンジョンの雰囲気をぶち壊すような鉄の扉があった。
まぁ、間違いなく敵のボスのところで間違い無いだろう。
スキルで確認すると、そこにはさっきの奴らとは比べ物にならないほどの膨大な魔力を感じた。
俺とレリックは互いに頷くと、扉を開けた。
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