社畜、レリックの強さを体感する


「うっ、うぅ」


な、なんだ。

少し眩暈がする。

あぁ、そうだ。

確か犯罪組織のところに転移して……

ってやばくね?

敵のところで意識を失うって……


俺がそんな感じで危機感を覚えていると視界に1人の少女が映った。


「あ、起きた」


「ん? レリック?」


俺が手を覚ますと目の前にはレリックがいた。

レリックも目を擦っているようなのでおそらく今起きたのだろう。


って、それよりもここって犯罪組織のところじゃん!

こんなことしてる場合じゃ……

あれ?


「なぁ、ここって犯罪組織のいるところだよな?」


「ん、そのはず」


「だとしたらなんで俺たちはダンジョンにいるんだ?」


そう、そうなのだ。

銭湯があるかもしれないから急いでスキルを発動させた。

すると、目の前が赤に染まったのだ。

赤、それは魔力の証。

でもダンジョンの外には魔力なんてない。

あるとしても俺が権利としてもらったダンジョン再現部屋くらいだ。

ただ、これで一つ謎が解けた。


「は、ははは……なるほど、マーキング済みってこういうことか……」


「どういうこと?」


俺がこぼした言葉にレリックが反応し、質問した。

俺はそれを聞き、レリックに逆に質問をする。


「なぁ、ここ最近でダンジョンが奪われるって事件はなかったか?」


「え? うーん……あっ、あったかも。SSダブルエス級ダンジョン、『魔導人形ゴーレムの遺跡』ハイジャック事件」


そう、それなのだ。

①犯罪組織のいる場所に魔力がある。

②ダンジョン教会がすでにマーキングをしてい

 る。

③最近起きたダンジョンハイジャック事件

これらの要素が重なると自ずと真実は見えてくる。

つまり、ここは……


「ここは、SS級ダンジョン、魔導人形の遺跡だ……」


どうする?

一応報告するか?

いや、でも爺さんはこのことを知っているだろう。

何せここに飛ばしたのが爺さんだからな。

……ということは、俺たちにSS級ダンジョンと一緒に犯罪組織を潰せってことか。


はぁ、なかなかハードじゃないか?

何が 大丈夫だろ! だよ。

まぁ、やると言ったからにはやるしかないな。

じゃなきゃ爺さんに笑われちまう。

と、念のためレリックにも確認しとくか。


「で、どうする? 俺は行くけどレリックは……」


「いく。仕事だし。じゃなきゃごろごろできないし」


俺の言葉を遮ってレリックはそう言った。

ま、だよな。

そうだと思ったよ。


「じゃあ、よろしくお願いするぜ? ランキング一位、レリック」


「こちらこそよろしく。早く終わらせてゴロゴロしよう」


そうして俺とレリックはそれぞれ挨拶を交わし、ダンジョン内に入った。


ダンジョンに入ってから十数分。

明らかにおかしいことが起こった。


「モンスターがいない?」


そう、これだ。

本来ダンジョンではモンスターとは数分に一回は接敵する。

なのにここでは十数分歩いてもモンスター一匹たりとも接触してない。

それどころか気配すら感じない。

これは明らかにおかしい。

まだ、E級ダンジョンならば運がいい、という理由で強引に納得することはできる。

だがしかし、ここはSS級ダンジョンだ。


ダンジョンの難易度は二つの観点から決まる。


一つ目モンスターの強さ。

これは単純明快で、モンスターが無用ほど攻略することが難しくなるからだ。


二つ目はモンスターとの接敵頻度。

これはどれだけモンスターと接敵するかで決まる。

いくらモンスター自体が弱くてもそれが何十回も数分で接敵したらいくらなんでも危険だ。


ここはSS級ダンジョンだ。

一つ目のモンスターの強さはわからないが、二つ目の接敵頻度が明らかに低すぎる。


俺がそう考えていた時、俺のレリックが俺の前に手を掲げる。

俺はそれを見て動きを止める。


「なんだ? レリック。何かあったのか?」


俺は小声でレリックに向けて話しかける。

するとレリックは口元で指を立てて静かにしてくれとジェスチャーで訴えてきた。


なんだ?

静かにしろってことか?

もしかして敵の声が聞こえたり……?


そう思って耳をすましてみたが何も聞こえない。

なんだと思い、スキルで確認した時、人には濃い赤いモヤが俺とレリックに猛スピードで接近してきた。


「ヒャッハー!!」


そんないかにもなセリフを吐きながら攻撃を仕掛けてきた敵を俺とレリックは軽々と避ける。


「おっと!」


「……」


そうして後ろに回避して顔を上げた先には、ヒビ割れたダンジョンの地面と一振りのナイフを持った茶髪の男がいた。


「おっと、これは少々乱暴な絶対だな」


「いやー、久しぶりだったからな。ここに人が来るのはよぅ」


茶髪の男は実に楽しそうにそう言った。

その次の瞬間、茶髪の男が再び猛スピードで接近してきた。

しかし、今度は俺ではなくレリックの方に。


「レリック!」


キィン!


「!?」


「……」


俺がレリックの方を見ると、そこには対極の2人がいた。

茶髪の男は絶対に勝てると思っていたのか止められたことにすごく驚いていた。

そして対してレリックはいつどこから出したのかわからない長剣を使って涼しい顔をしてナイフを止めていた。


そうしてそのままレリックは長剣を使って敵の首を刎ねた。

そうして俺の方向を向いて……


「じゃあ、いこっか」


と言った。


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