社畜、一位に会う

魔導武具アーティファクトを爺さんから貸してもらって翌日。

ついに、犯罪組織を潰す日にちとなった。


「あーと? ここでいいのか?」


昨日爺さんに言われたところについた俺は、それが信じられず思わずそう聞いた。


「ああ、そうだが?」


「いや、言われた通りに来たけどさ……」


そう、来たはいいがその場所が問題なのだ。

転移だっていうからてっきりどこかものすんごい施設があるのかなーって思ってた。

まぁ、そうじゃなくてもダンジョン再現部屋とかかな?

そう思っていた。

なのに……


「なんで爺さんの部屋なんだよ!」


俺がいうと爺さんはニィっと笑みをこぼした。

うっっっわ。

この爺さん俺が驚いたりとかするとすぐにそういう顔するよな。

なに?

そういう癖なの?

ま、まぁいいか。


「で、ニヤニヤ笑うのは構わない……わけじゃないけど早く説明してくれ」


「おうおう、わかった。ちゃんと説明するからそう焦るな」


爺さんがニヤつきながらそう言ったので殴ってやりたくなったが我慢した。

流石に問題を起こすのはまずいからな。


「そもそもだが転移は別に大きな機械は必要ない」


「は? どういうことだ?」


大型の機械とかを使わない!?

嘘だろオイ!

転移だぞ?

もう完全にファンタジーの領域だぞ?

なのになんか魔力とかを使った機械が必要ない?


そんなことを考えていると爺さんが呆れたような顔をしながら俺に質問をしてきた。


「……あのなぁ、一つ聞くがお前に渡したそのカードはこれからストを呼び出す時にこの場所がバレないようにって渡したものだろ? お前の家からここに転移できるようにするために……」


ん?

一体なんの話を……あっ!

そうだ、そうだったじゃないか。

元々このカードは家からここダンジョン教会本部の場所をバラさないために転移するためのものだ。

俺は転移するためにって特別なものはたった一つしかもらってない。

そう、このカード以外は……


なぁんだ、そんなことだったのか。

一体俺は何を驚いていたのやら。

タネがわかると俺は一気に緊張が解けた。


一見意味がわからないように見えるがよく考えてみるとその通りだった。


「そうだった、このカードで転移するんだった」


俺がそういうと爺さんは「はぁ、しっかりしてくれよ」と言いながらも納得したようだ。

うー、これは俺の失態だな。

今回ばかりは爺さんが呆れるのも無理はない。


で、だ。


「まぁ、そのことはひとまずおいておくとして……爺さんの部屋の端で寝ているのがレリックなのか?」


俺はそう言いながら部屋の端を見る。

そこには無気力そうな銀髪の女の子? がスヤスヤと気持ちよさそうに寝ていた。

えーと?

本当にこの子が一位なのか?

おっと、人を見た目で判断するのは良くないな。

シロだってめちゃくちゃ強かったしな。

反省しておこう。


「それでもう行くんだろ?」


「ああ、そうだ。おーい、レリック、そろそろ行くぞ」


爺さんがソロランキング1位のレリックにそういうと


「あー、わかった」


眠そうに目をこすりながらレリックは体を起こす。


「よっしゃ、じゃあ行くか」


「えー? めんどい」


俺がレリックに一応声をかけるとそんな答えが返ってきた。

うん。

めんどいって……

いやまぁ、わかるけどね?

確かにめんどいけどさ。


「レリックだって特権をもらってるんでしょ?」


「特権?」


俺が聞くとレリックは首を傾げてしばらく考えるようなそぶりをした後思い出したように言った。


「あー、そういえばずっっっと部屋で引きこもれるように家とか家政婦とかそう言ったものをもらったんだった」


「え? 家?」


嘘だろオイ!

まさかそんなものまで与えてるのか!?

俺がそう思って爺さんに目線で「どういうことだ?」と訴えると爺さんはそのことを思い出したのか苦い顔をしながら頷いた。

まじかよ。

にしても爺さんも嫌だったんだな。

まぁ、そりゃそうか。

そんだけ与えたら予算オーバーってレベルじゃないもんな。


……でも、そこまでするだけの強さがレリックにはあるんだな。

やっぱり見た目だけでは判断できないな。

勘だけど今ここで殺しにかかったとしても全く敵わなそうだ。


まぁ、とりあえず今は動いてもらわないと困るからな。


「まぁ、でもこの仕事をさっさと終わらせれば家でダラダラできるんじゃないか?」


一応ダメ元でそういうと。


「!? た、確かに! よし、行こう! あっ、後でうちに来て!? あなたならもっと私がダラダラできるアイデアが出ると思うから!」


「……え? わ、わかった」


えっと、うん。

なんか物凄いことになったけど……まぁいいか。

それよりも早く犯罪組織を潰さないとな。


「レリック、後で一緒に考えてやるから今は犯罪組織を潰すことに協力してくれ」


「んー? いいよ!」


「えっと、じゃあ爺さん。連れていってくれ」


「あ、ああ。わかった」


固まっている爺さんに声をかけるとハッとしたような顔をしてそう答えた。


「じゃあ頑張ってくれ」


爺さんは自身のカードを何か操作した。

するとだんだんと俺とレリックが蒼い光に包まれていった。

そうして俺とレリックは同時に意識を失った。


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