社畜、魔導武具《アーティファクト》を借りる

しばらく爺さんの跡をついていくと金庫のような場所についた。


「ここは?」


俺が爺さんにそう聞くとニヤリっと爺さんは意地汚い顔を浮かべた。


うっっわ。

なんかいやなんだが?

爺さんの笑い方。

ま、まぁいいか。

とりあえずここに案内された、ということは……


「ここの中に武器がしまってあるのか?」


「そうだ」 


爺さんは頷いた。


ま、だろうな。

順当にいけばそうだろう。

爺さんは気に食わないけど無駄なことはしないからな。


俺がそんなことを思っていると爺さんは懐からキーカードのようなものを取り出し、金庫の横にあったなんというのだろう……あっ、自販機のカードをつけるところみたいなところにタッチした。


ゴゴゴゴゴ……


「おおっ……」


するとゴゴゴという大きな音を立てながら金庫の扉がゆっくりと開いた。


……あれ?

なんか俺前にダンジョン再現部屋の時もこんな感じだった気がする。


「じゃあいくぞ」


「わかった」


そうしてそのまま俺は金庫の中に入った。

するとそこには……


「……なんだよ……これ」


「ふっふっふ、どうだ? これが噂となっている魔導武具アーティファクト。お前に貸し出す武器だ!」


これは……はっきりいってすごすぎる。

魔導武具というのはダンジョンから発掘された武器や防具のことであり、さらにダンジョンの素材で作る武器が特殊能力を宿したものも表す。


それは投げたら自分のところへ帰ってくるものであったり魔物の特効があったり所有者の体力を経やすかわりに攻撃力を上げたりと魔導武具様々だ。


もちろんこれだけの力がある武器がそうホイホイできたり見つかるわけがない。

だからこの魔導武具、アーティファクトにとてつもない値段がつけられるのだ。

この前テレビで一億くらいの魔導武具をどこかの探究者が落札したというものが流れていた。


その時は金持ちやべーな。

くらいにしか思ってなかったが、実際にいざ対面してみるとそこまでの大金を出してまで買う理由がよくわかる。


なんというのだろうか。

命をかけてダンジョンを攻略する探求者の勘?がこれはすごいと、そう告げている。

そんなものすごい武具が、今後には見た感じざっと100個は保管されているのだ。


これは爺さんがドヤ顔でいうほどもある。

俺はそう思った。


「そんで、具体的にどの魔導武具アーティファクトを貸してくれるんだ?」


そう、結局それだ。

どんだけ強い魔導武具があろうともおっちゃんのところで言ったように使いこなせなければ意味がない。

爺さんは俺に一体何を選ぶのだろうか。

それについて俺は少しワクワクした。


でも帰ってきた返事は思いもしないものだった。


「好きなのを選んでいいぞ」


「は? え? 悪い、もう一回言ってくれ」


俺は今爺さんが言ったことが理解できず、思わずそう聞き返した。

しかし、帰ってきた返事は


「だから別に自由に選んでいいぞ」


「……は? はぁぁぁぁ!? おい、爺さん、わかってんのか? 魔導武具は数少ない希少なものだ。たった一つで億の額がつくこともある。それをわかっていっているのか?」


俺がそう聞くと爺さんは真面目だ顔を逆に質問をしてきた。


「ああ、わかっている。というかスト、お前こそわかっているのか?」


「わかっている? 何がだ?」


「お前たちランキング者に頼んだ殲滅、それはお前が想像している以上に大事だということだ。魔導武具という希少武器を使わせるほどにな」


「そうなのか……」


俺はその話を聞き、黙った。

まさかダンジョン教会がそこまで追い詰められているとは思わなかった。

俺はこの専属部隊をどこか軽く見ていたのかもしれない。


だが、俺のそんな考えは次の爺さんの言葉で吹き飛んだ。


「まぁ、魔導武具を貸し出したり渡すっていうのは完全に俺のわがままなんだけどな」


「おい、爺さん? ぶち殺すぞ? 流石にそれはやりすぎだ」


俺は爺さんの言葉を聞き、手を震えさせながら爺さんに向かって言った。

すると


「ま、まぁ、それより早く選んでくれ」


と、爺さんは逃げ腰にそう言った。

はぁ、まあ仕方ないか。

確かにそれの方が先決だもんな。

俺も魔導武具が気になるし。

そうして俺はスキルを発動させた。

ここには魔力が充満している。

魔導武具の中には魔力を常に補充し続けないといけないものもあるらしいからだ。


俺がスキルで魔力を確認すると魔導武具のある場所がより一層真っ赤に染まる。

魔導武具か普通の武具かを見分けるのは簡単だ。

魔力がこもっているか、いないかだ。

だからこそ、魔力が困っている魔導武器のところはより赤く光る。

その時に、俺の視界により赤いモヤが映る。


「……ん? なんだ、あれは……」


「どうした? 何かあったか?」


爺さんが何かあったのかと聞いてくるが、俺はそれを無視して近づく。


「おい、爺さん……これ……」


「ああ、それか……」


俺が指をさしたものを見ると爺さんはため息をついた。

俺が見つけたもの、それは他のは一線を画すような膨大な魔力のこもったナイフだった。


「このナイフ……なんでこんな膨大な魔力がこもっているんだ?」


「そうか、わかるのか。そう、それなんだ。それがわからないんだ。ダンジョン教会の人間がいくら試してみても特殊能力が全くと言っていいほどわからないんだ。そうだ、気になるんだったらそれを持っていくか?」


「え?」


そのナイフは一体なんだろうと考えていると爺さんが突拍子もないことを言い出した。

は?

俺が持っていく?

このナイフを?

俺がそんなことを考えていると爺さんは続けていった。


「何を持っていくか決まらないんだろう? そのナイフは普通に強度は高いから魔導武具アーティファクトではなくただの武器としても使えるはずだ」


あ、そうなんだ。

使い方がわからないというから武器としても使えず装飾の用途にしか使えないと思っていたがそうではないらしい。

それなら大丈夫か。

武器を使わずとも狼サンドバッグをボコせたし。


「だったら使わせてもらおう」


「おう、使ってくれ」


俺は爺さんから直接そのナイフを手渡された。

そうしてそのまま俺は昨日泊まった部屋に案内されるのだった。

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