社畜、武器を借りる

「おい……今なんて言った……? 一位?」


俺は爺さんの言ったことが信じられず、思わず聞き返した。

俺が恐る恐る聞くと、爺さんはなんでもないように平然と答えた。


「ん? あぁ、そうだが?」


カッチーン、はい、もう怒りました。

そうだが?

じゃねぇんだよ!

一位だぞ!?

ソロ探求者ランキング一位!

そんな奴が行くところなんて危ないところに決まってるじゃないか!

第一俺は現状ランキング八位だ。

一位と行くんだったら二位とか三位だろ!


「いやいやい、なんで俺なんだよ。行くんだったらもっと上の奴らだろ!?」


「うーん、そうなんだけどさ、まぁストなら大丈夫っしょ」


あー?

なんだこいつ。

一体何回俺を怒らせれば気が済むんだ。

どうする?

殴るか?

いやでも一応ダンジョン教会の上層部だからな。

殴ることはまずい。

俺はそこでふと辺りを見るとテーブルの端にタバスコがあることに気づいた。


ふふふ、これならいいだろう。

俺はそう思いながらタバスコを爺さんが食っているラーメンに入れた。

因みに俺はカレーだ。

やっぱり昼といったらこれだろう(個人の意見です)


「あ、ボクも一緒に食べてもいい?」


そんなことをしていたら声をかけられた。

誰だ?

そう思って顔を上げたら見知った顔があった。


「怜さん?」


「そう、君にダンジョン再現部屋を貸した怜さんだ! とまぁそれはさておきここで食べてもいいかい?」


と、怜に聞かれたので爺さんと顔を合わせ、どうするか決める。


『どうする?』


『別にいいんじゃないか? いて困るわけでもないし』


『それもそうか』


俺と爺さんはそういったやり取りを心の中でして、


「別にいいぞ」


「じゃあお言葉に甘えて」


そうして俺の隣に怜は座った。

そしてそのまま怜は俺と爺さんに向かって質問をした。


「それで2人はなんの話をしてたの?」


「ああ、それは俺がランキング一位のレリックと一緒に犯罪組織をぶっ潰すってことを話していたんだ」


さぁて、流石にこれは驚くんじゃないか?

そう思ったが


「へぇ、そうなんだ」


と、意外とあっさりしていた。

おい、もっと驚けよ!

……うーん、でも逆に怜が驚いてるところが想像できないな。

まぁ、そんなことはどうでもいいや。

それよりも、だ。


「それで行くのはいつなんだ?」


そう、これが重要だ。

100歩譲って一位のレリックと一緒に犯罪組織をぶっ潰すことは分かったとしても、結局やる時間帯がわからなきゃ意味がないからな。


「実行するのは明後日だな。全てのグループで一斉に襲撃を決行する予定だ」


あぁ、なるほど。

立て続けでやっていたら流石に警戒されて攻めるのも大変になるからな。

一斉にやって警戒されないようにしているわけか。


「それで? その犯罪組織はどこにあるんだ? そしてどうやってそこまで行くんだ?」


「あ、それについては大丈夫だ」


え?

どういうことだ?

レリックと合流してからその組織の場所に行かなきゃいけないだろ?


「どういうこと?」


俺と同じようなことを思ったのか怜が俺の代わりに爺さんに質問した。


あ、一応話は聞いてたんだ。

ずっと無我夢中で怜が持ってきた麻婆豆腐を食ってるからわからなかったが。

……って、


「おい!? お前の麻婆豆腐どうなってるんだ!?」


「え? 何が?」


「いやいやい! え? 何が? じゃねぇよ!

お前の麻婆豆腐真っ赤じゃねえか! 爺さんも見てみろよ!」


「おん? どれどれ……ってなんだこれは!?」


そう、今気づいたことだが怜の食べている麻婆豆腐はもともとの外見がわからないくらいに真っ赤になっていた。


「……お前……一体どんだけタバスコ入れたんだ……?」


「えーとね? 確か……」


そうして怜は指で1、2、3と指を折り曲げて何かを数え始めた。

そうして数え始めて数分後。


「タバスコを10本くらいかけたかな?」


……は?

え?

た、タバスコ10本分?

というか怜が頼んでいたものはもともと麻婆豆腐激辛だぞ?

その上でタバスコ10本って……


俺がそう驚いている中、ふと爺さんを見ると爺さんも口を開けて固まっていた。

いやそりゃあそうだろう。

だって怜はいたずら好きの子供っぽい人だと思っていたはずだ。


俺の怜に対しての第一印象もそんな感じだったし。


「え? なに? それがどうかした?」


俺たちが驚いている中怜だけは平然と質問している。

えと、うん。

流石にここでお前がヤバい! なんでは言えないな。

爺さんも同じ結論に至ったらしくずっと黙っている。


「ねぇなんなの?」


怜が子供っぽく聞いてくるが、ま、まぁそれは一回置いておこう。


「えーと、じ、爺さん。その話を一体おいておくとしてさっきの話はどういうことだ?」


俺がそうやって助け舟&質問を投げかけると、爺さんは安堵した表情を浮かべた後、真面目な表情をし、説明を始めた。


どうやら怜も聞くのを諦めたらしく、少し不満そうな顔だったが耳を傾けることにしたようだ。


「さっきの話っているのは移動は大丈夫ってことか?」


そうだ、と俺は頷く。


「それはだな、すでにその犯罪組織の場所はすでにマーキングをしているから、ここから簡単に移動できるんだ」


マーキング?

ここにいれば大丈夫?

なんでここにいると犯罪組織の場所に移動できるんだ?


そう考えた時、俺に電流が走る!


「そうか、転移があったな」


「正解だ!」


転移だ。

転移を使えば移動ができる。


「あれ? でも先にそこに行かないとマーキングできないんじゃなかったか?」


そう、そうなのだ。

確か俺が転移しようとした時にしっかりとその場所に行かなければしかしズレてしまうといっていなかったか?

流石に壁に巡り込むなんていやなんだが。


「いや、それは大丈夫だ。まだ普通に活動していた時にたまに取引をする時があったからな。その時にしっかりとマーキングしていたんだ」


なるほど。

そういうことか。

あっ、そうだ。


「それで行くのはそれでいいとして少し頼みがあるんだが?」


「頼み? いってみろ」


「武器を貸してくれないか? 俺武器を持っていないからさ。流石に犯罪組織に行くのに拳はやばいからな」


俺がそういうと爺さんはなるほどと納得したように頷いた。


「じゃあこのダンジョン教会の武器を貸してやる。少しついてきてくれ」


あっ、因みに俺と爺さんと怜はすでに昼食を食べ終わっていた。

食べ終わったら料理は担当の人が回収してくれるらしい。


そうして俺は爺さんに連れて行かれるがままに移動を開始した。


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