社畜、ギルドを設立する
「えぇっと、一応コンテストだからな。優勝者には景品を渡したい……」
〝お、一体何になるんだ?〟
〝ストのだからな結構豪華なんじゃないか?〟
〝↑でも始めたばかりだぞ?〟
〝それでも稼いでると思う(シロの動画を参照)〟
〝↑これマジ〟
〝なんだろう〟
〝ダンジョンについてのコツ?〟
「そう、景品を渡したいんだがコンテストなんてたいそうなことはしたことないから俺には何を渡せばいいかわからない。というかこれ自体ノリで始めたものだし……」
〝おいw〟
〝速報! スト、なんとなくで新技コンテストを開催した模様〟
〝↑そこまでか?〟
〝↑事実そこまでじゃない。でもやっぱり驚きはした。景品って言葉が出たから〟
〝そっかぁ〟
〝まぁ、初めてじゃ仕方ないのか?〟
〝配信を初めてすぐだしな〟
ちらほら俺のことを擁護してくれるコメントもあるがやはり残念と言う意見もある。
まぁだよな。
俺もできるんだったら渡したいし。
と、言うことでここはズバッといきなり聞いてみるか。
「そこでなんだがもういきなり聞こうと思う。あんたの欲しい景品ってなんだ?」
〝まさかの直接!?〟
〝いやまあ、それしかないよな〟
〝だな〟
〝うん、なんとなくそんな気はしてた〟
なんだか俺の思考が読まれているようなコメントを見かけるがそれは見なかったことにしよう
俺がそんなことを思っていると投稿主から反応があった。
〝そうですね……強いて言うならストさんの『ギルド』を設立して欲しいです。そして2ヶ月後に行われる『ギルド対抗戦』に出場して欲しい〟
「ギルド……かぁ」
ギルド、それはダンジョンを攻略する上で共闘する仲間……ゲームでいう〝パーティ〟の少し大きい番である。
1人で攻略するよりも仲間のサポートがあるからより深いところに行けるし、さらにはギルドから武器を購入する際の資金も降りてくる。
成長したいのならギルドに加入せよ。
それが探究者の基本である。
まぁ、俺の場合はダンジョンに潜る動機がストレス発散ってこともあるし、最初は会社があってたまにしか行けないと思ってなかったから加入しなかったんだけどな。
ふとコメントを見るとそこは驚きのコメントと楽しみといったコメントがあった。
〝ストがギルド!?〟
〝なんか面白そう!〟
〝ギルド対抗戦か……これは一気に波乱の展開になりそうだ〟
〝ストがギルドをね……なんかすごそう〟
〝どんなギルドになるんだろうか〟
〝やばいギルドになる予感しかしないw〟
〝↑それなw〟
いやぁ、そんなに楽しみに言われても困るんだけど……
「ギルド……まぁ、やってもいいと思うけど俺ノウハウとか全くないんだよな」
そう、それなのだ。
そもそもギルドは組織だ。
組織の運営なんかしたことがない俺にギルドをまとめ上げることなんてできない。
そんなふうに考えている時だった。
シロ〝だったら私が入りましょうか?〟
〝俺が入りましょうか?〟
「……え?」
ほぼ同時にシロと投稿主からコメントが来た。
え?
マジで?
2人が入ってくれるの?
ってか投稿主はともかくシロはダメなんじゃないの?
だって人気配信者でしょ!?
「投稿者が立候補するのはまだわかる……? けどなんでシロが立候補するんだ?」
そう思ったがどうやら理由は単純らしい。
〝いえ、別に配信活動も普通にできますし。後はちょっと失礼なんですけどストさんが作るっていうギルドがどんな感じなのか外からじゃなくて中絡みたいっていう好奇心ですね〟
あーなるほど。
確かにそういうのはあるかもしれない。
俺だってこいつは絶対にすごい!って思える人がいてその人の近くに行けるのだとしたら多分近くに行くと思うし。
でもそれにしても登録者数が二百万っていうバケモンのシロから好奇心があるって言われると結構嬉しいな。
まぁ、それはさておき。
「本当にいいのか? あっ、これは2人についてだ」
シロ〝いいですよ〟
〝大丈夫です〟
俺が聞いた瞬間即帰ってきた。
「おい! コメント返し早いな!」
〝マジで早すぎw〟
〝即答じゃんw〟
〝これ絶対事前に準備してたでしょ〟
〝↑それな〟
〝こうなることはわかってたしな〟
〝だよなw〟
〝なんか漫才みたいw〟
〝↑確かにw〟
いや漫才ってなんだよ……
あれ?
この流れ意外とそうかも。
まぁ、いいか。
そんなことよりも、だ。
コメントも盛り上がってるし2人も承諾してくれている。
これは流石に
「えーと、まぁ景品のこともあるしそれに2人が何より承諾してくれているのでギルドを作りたいと思います」
まぁ、ここまで言わせたんだからやるしかないよな。
よーし、覚悟を決めろ俺。
これからはギルドっていう組織を運営するんだ。
そう思って自分に言い聞かせたが次の視界で俺は胃が痛くなった。
〝うぉぉぉぉ!〟
〝き た こ れ !〟
〝これは神〟
〝ギルド解説じゃあ!〟
〝祭りを始めろぉ!〟
〝神回きたーー!〟
〝楽しみしかない〟
〝ギルド戦が楽しみだ〟
〝よっしゃぁ!〟
〝シロ+スト+天才……これは神以外の何者でもない〟
うわぁ、こんな反応見てるとなんだか不安になってくるな。
いやでももう公で宣言しちゃったしやるしかないよな。
うぅ、考えるだけでも不安になってくる。
このギルド開設のことはこれからだいぶ話すことになるからもういいだろう。
てか元々は新技作ろうぜ!ってやつだったし。
もう目標達成できたからいいでしょ。
うん、大丈夫だ。
「はい、えーと盛り上がってるところ悪いがそれは別のところでやってくれ。元々のもう表は終わったからこの配信は終わりにする。じゃあな」
そうして俺は配信を終わらせた。
ちょっと急ぎ目だったけどまぁ大丈夫だろう。
それにずっとここを写していたら俺がダンジョン教会本部にいるってバレるかもしれないからな。
まぁ、それはさておき、
「えーと確か赤いボタンで終わらせるんだったな」
俺はそんなことを思い出しながら赤いボタンを押した。
一応スキルで感知してみるとさっきまで青一色だった部屋が真っ赤になっていた。
赤く写っているということは魔力が全くないということだ。
「よし、これで大丈夫だな」
そして俺はダンジョン再現部屋から出ていった。
すると自動で扉が閉まった。
おおっ、でかい扉が自動で閉まる迫力はすごいな。
それでどうするか。
これから帰るにしても流石に爺さんに一回配信が終わったことや帰ることとかを言っといたほうがいいだろうし。
後はあれだな。
シロの容体を見に行っておこう。
まぁ、そこまで重症じゃないが。
えーと?
この前もらったこのカードの紋章から……
「確か……そうだった、そうだった。〝タイプスト〟」
俺がそういうとエンブレムの上にホログラムが現れた。
そうそう、確かこの色々と書いてある項目の中に……あった、『ダンジョン教会連絡先』
「うわっ、色々と書いてあるな。『人事部』『商談部』、あっ『研究部』に『犯罪取締部』怜さんと爺さんの名前もある」
ってことはこれって各部署のトップの連絡先ってことか?
意外や意外、あの怜さんはどうやら研究部のトップだったらしい。
まぁ、あれだけの発明をする人だもんな。
なって当然と言えば当然か。
えー、それで爺さんの連絡先は……ここか。
スマホでかけてっと。
『おっ、終わったかスト』
電話に出た第一声がこれだ。
いやなんでわかるんだよ。
爺さん俺のスマホの電話番号知らないだろ!?
『おい……なんで俺だとわかった?』
俺がそう聞くと爺さんはなんでもないふうに答える。
『いやだってあのカードの連絡先に俺や他のトップのが書かれているのは教会の上層部とソロランキングトップ10のやつらだけだからな』
おいおいおい!
それは聞き捨てならないって。
いくら協力要請しているとは言え上層部しか知らない連絡先を載せちゃダメだろ!
……この爺さんに言っても無駄か。
『まぁいい。それで俺はシロのとこに行ってから帰ろうと思うんだがいいか?』
『そうか、そういうことか。わかった、そこで待っていろ、今行く』
「おい、爺さん? ……あのジジイ一方的に切りやがった」
まぁいいか。
迎えにきてくれるんだったら。
そうして俺は部屋の前で待つことにした。
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