社畜、新技コンテストを開催する(動画)

「それで、早速俺のスキルの内容を説明するんだが、ここで問題だ。俺のスキル『魔力操作(極)』っていうのはどんなものだと思う?」


〝うぉっ! そうくるか〟

〝クイズ! いいねぇ〟

〝魔力を集めることはできるって異常個体戦だわかったよな〟

〝↑それな〟

〝他のものだろ?〟

〝魔力を集められるってことは魔力の場所がわかるんじゃないか?〟

〝↑うぉぉ!? 天才か!〟

〝確かに!〟

〝そうじゃん〟


俺がコメント欄を見ると続々と俺の知っている情報に辿り着いている。

えーと、うん。

早くね?

せっかく明かすんだから『やっぱ難しいよね? 正解は……』みたいな感じでやりたかったのに!

はぁ、まあこれはこれで俺の配信を見ている視聴者が優秀だったということで……

うん、なんとかそれで終わりにしよう。


「さてと、コメントの君たち! 正解だ!」


〝おぉ! 当たった!〟

〝よし!〟

〝よっしゃあ!〟


「俺が今現在わかっていることは、①魔力を感知することができる、②魔力を自由自在に操ることができる。ただしスキルを使用して飛ばした……そう、シロみたいなスキルを使った魔力はもう操れない」


〝なるほど〟

〝万能そうに見えても万能じゃないのか〟

〝いや、十分すごくね?〟

〝↑確かに……魔力がわかるのならスキル発動のタイミングもわかるかもしれないし〟

〝よく考えてみたらクソ強いじゃん〟

〝まぁ、ストのスキルが普通なわけないんだよな〟

〝↑それな〟

〝まぁ、そうだよな〟


おいおいおい、コメント欄でなんか俺が散々言われてるんだが?

いや、褒め言葉……みたいなものなのだろうから強く言えないんだがな。

まぁいい。

それよりもだ


「ひとまず俺のスキルの概要はこれでわかったと思う。これから考えるのはそのスキルをどうやって活用していくかだ」


俺がそういうとふと


〝もう十分じゃないの?〟


というコメントが目に入る。

確かにスキルはこのままでも十分なのかもしれない。

しかし、しかしだ。

また異常個体イレギュラーのような命に関わるモンスターと戦うこともあるかもしれない。

そんな時にこのままで勝てるかどうかわからないからな。


「これから異常個体戦の時みたいに命に関わる時があるだろうからな」


俺がそういうとコメントを書いた人は『なるほど』と納得してくれた。


よし、これで説明はできたな。

だとしたら次は……


「よし、それでは今から俺のスキルを使った新技コンテストを開催したいと思う!」


〝コンテスト!?〟

〝なるほど、そうきたか!〟 

〝面白そう!〟

〝新技!?〟

〝よっしゃやってやるぜ!〟


うんうん、反応も上々だ。 

ふふふ、これで俺には思いつかないスキルの活用方法を見出せるというわけだ。

うん、完璧。


そうしてしばらく待つと続々と新技についてのコメントが書き込まれ始めた。


「さて、どんなものかな……うわっ!?」


俺がコメントに目を向けるとそこには数え切れないほどのコメントが書き込まれていた。

きても十数件だと思っていたのに実際に来たのは数十件だったのだ。


〝魔力を固めてバリアとして活用する〟

〝相手付近の魔力を散らしてスキルを使えないようにする〟

〝固めた魔力に指向性を与えて飛ばす〟

〝固めた魔力を足場として利用する〟

〝固めた魔力を武器に纏わせて攻撃力を上げる〟

〝↑スト武器持ってなくね?〟

〝↑一応って話〟

〝なるほど〟

〝もしくは固めた魔力を武器として使用する。魔力を目に見えないから(魔力使用スキルを除く)不可視の武器の完成だ〟

〝↑おおっ!〟

〝お前天才か!?〟


ん?

おいちょっと待て。

なんかコメント欄で意見交換してないか?

『天才か!?』なんてコメントも混ざってるし……

あれ?

もしかして俺って邪魔なんじゃないか?

……いや、そんなことはない。

そんなことはないはずだ。


っと、そんな悲しいことを想像している場合じゃないな。

そろそろ終わりでいいだろう。


「よし! これでひとまず終了だ。早速見ていきたいと思うから自分の意見をコメントに書き込んでくれ、それ以外のコメントはNGで!」


俺がそう言った瞬間に続々とコメントが書き込まれていく。

俺はそれを何一つ見逃さないようにしていると、一つ気になる意見があった。

それは……


「『魔力を使った二段階攻撃』? なんだこれ……これは誰が考えたんだ? 考えた人だけコメントをしてくれ」


そう、これだけが異質だったのだ。

ほぼ全てが魔力を固めて使うバリアとか遠距離攻撃手段、そして武器に魔力を纏わせて攻撃力と耐久力を上げるというものだった。


しかしこれだけは他のものとは全く違う新しい魔力の使い方だったのである。


〝あっ、俺です〟


そうコメントが来たことを確認すると俺は質問する。


「あんたの言ったこの『魔力の二段階攻撃』っていうのはどういうことなんだ?」


俺がそういうと投稿主は説明を始めた。


〝まず、魔力っていろんな形に変形できるじゃないですか。ストさんのスキルなら尚更〟


「え? あ、あぁ」


本題と全く違うコメントに俺は驚きながらもそうだと答えた。

事実、魔力はいろんな形に変形できる。

シロはスキルに力で周囲の魔力を集めて思考性を持たせて発射する。


他にも魔力を固めて武器にする……というスキルも聞いたことがある。

俺の場合はさらに発射した魔力を操作することだって可能になるだろう。


〝そこで思いついたんです。魔力の『圧縮』はどうかなって〟


「『圧縮』? 圧縮ってアレだろ? 力をその場に留める……みたいな。説明がうまくできないけど」


〝はい、その認識で合ってると思います。魔力を圧縮するってこと自体はたぶん熟練の探究者ならいずれできると思うんです〟


あぁ、確かに。

ネットでも熟練した探究者なら身体強化とかのスキルでもある程度の魔力は操れたって書いてあったもんな。


〝でも、それってあくまでそれまでなんですよ。圧縮はできるけどそれを実践に活かせない。でもその点、魔力操作に極限まで特化したストさんのスキルならそれを実践に活かせるんじゃないかって〟


「なるほど、理屈はわかったがそれで結局どうやるんだ?」


〝いろいろ使い方考えたんですけどそこまで変わらないと思います。使い方としては魔力を圧縮して一部だけを開放する。それを使いこなせれば足でそれをやって高速移動とかもできると思います。ただ、スタンダードな攻撃でいうと、殴る時に魔力を二つに分けておいて、一つはそのまま相手にぶつける、そしてもう一つを圧縮しておいて初手殴った後に相手に向かって解放。これで『魔力の二段階攻撃』となるわけです〟


「……」


〝あ、あの?〟


俺が黙ったことにより、投稿者が混乱しているが、俺はそれを無視して一言言う。


「みんな……コメント解放していいぞ」


〝うぉぉぉぉっ!〟

〝真の天才はこいつだ!〟

〝か み か い !〟

〝くっそ、認めてやるよ……〟

〝お前がNo.1だ……〟

〝キタコレ!〟

〝常識がひっくり返るぞ!?〟

〝コロンブスの卵的発想だ!〟

〝↑ちょっと、気難しくね?〟

〝悪い〟

〝これはすごい!〟


俺がそう言った瞬間にコメント欄に大量のコメントが流れ込んでくる。


いや、これはすごい。

はっきり言って天才だと思う。


コメントの中にコロンブスの卵って言ってたけどまさにその通りだと思う。

一見思いつきそうなのにこの人以外誰も思いつかなかった。


この賞賛は普通の反応だと思う。

だけど


〝え? え?〟


本人がそれを自覚してなくて慌ててるのは少し面白いが……

まぁ、何はともあれ、これで結果は出たな。


「さてと、新技コンテストの結果を発表する。一位は……『魔力の二段階攻撃』だっ!」


〝やっぱりな〟

〝だと思ったよ〟

〝ふっ、俺の予想は的中したようだ〟

〝↑いやこれ以外ないだろ〟

〝おめでと!〟


これは当然だろう。

ここまで賞賛があったのだからな。

そんで問題はこれからどうするかだ。

コンテストだからな、なにか景品を用意したい。


俺が用意できて尚且つ金があまりかからないもので。

うーん、何かあるか?

でも金がかからないと言うのがな……

よし、聞いてみるか

そうして俺は質問を始めた。

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