社畜、配信する
さてと、これでダンジョン再現空間の説明は全部聞いたし……
「よし、じゃあ、爺さん出て行ってくれ!」
「えぇっ!? な、なんでだ!?」
いやいや、なんでだって爺さん。
わかるだろ?
俺は今から撮影をするんだよ。
そんな動画に爺さんを映すわけにはいかないんだよ。
「これから動画を撮るからだ」
「ぐっ、ぐぅぅ」
俺が理由を言うと爺さんもわかっていたのか〝ぐぅぅ〟と悔しそうな声を漏らした。
何この爺さんマジで上役なのかよ。
ダンジョン教会の上層部って国でも相当な重鎮だろ?
他の人は絶対にここまで子供っぽくないって!
……なにか嫌な予感がする……
どうかそうであってくれ。
俺がそんなことを思っていると「く、こんな重鎮にならなければ……」と口をこぼしながらでてった。
おいおい爺さん。
ならなければってあんたの席に座るために努力している奴らが何人もいるんだぞ!?
ま、あれも爺さんらしいといえばらしいが……
ま、そんなことは俺にとってはどうでもいいな。
さてと、これでこの話はおしまいだ。
これからは……
「スト探としての時間だ……!」
そうそう、ちゃんと事前に連絡することも忘れないようにしないとな。
昨日の夜不服だが斉藤に電話で聞いたのだ。
聞いてる途中で『なんだお前! そんなこともわからないでやってたのか!』ってクソウゼェ発言されたけどそれは心の広い俺だ、きっちり釘を刺しといた。
「えーと? 昨日作ったつぶやいたーの〝スト探〟のアカウントで10分後に始めるって書いてっと……よし、これでいいだろう」
いやぁー、しっかりと聞いといてよかった。
これで少しは動画を見てくれる人も増えるだろう。
あのあと考えても確かに何も言わずにいつの間にか配信されてたらたまらないからな。
これで俺も一歩配信者として成長できたと言うことだろう。
「にしてもこのアプリほんと便利だよな。収納として」
俺はそんなことを言いながら撮影用のドローンをダンジョンガイドアプリにある収納空間から取り出した。
これは異常個体を倒した後に気づいたことなのだがこの空間には魔結晶以外にも入れることができるらしい。
マジで便利なんだよな。
俺なら金を取られてでも使うぞ!?
それが無料ってほんと太っ腹だよな。
これもダンジョン教会が作ったのか?
あとで聞いてみよ。
十分後
「よーし、これで撮影の順番は完了だな。早速始めるか!」
そうして俺は撮影ドローンのスイッチを押した。
その瞬間大量のコメントが流れてくる。
〝きちゃーーー!!〟
〝フルボッコじゃあ!!〟
〝待ってました!〟
〝おなしゃす!〟
〝ちゃんと連絡してえらい!〟
〝↑確かに〟
〝モンスターぶっ潰せ!〟
「おぉっ!? 改めて見るとすごいな……」
〝ふっふっふ、ようやく気づいたか我々の凄さに〟
〝↑何もしてないだろ〟
〝新鮮だわぁ〟
〝なんか初々しい〟
〝なんだこれは……親心……?〟
「!? おいおい、親心ってなんだよ! こちとら二十代なんだぞ!?」
流石にこれで子供だったら日本おかしくなるぞ。
ん?
いや今子供みたいに思われてるってことだよな?
うわぁ!?
爺さんの同じじゃないか!
よし、もう少し大人の対応をしよう。
「とりあえず先に言っておくと今日はモンスターを倒したりはしないぞ」
俺がそう言った瞬間にコメントはさらに加速する。
〝な、なんだって……?〟
〝この戦闘狂が……〟
〝嘘だと言ってくれヨォ!〟
〝え、マジですか〟
〝意外!〟
〝嘘でしょ!?〟
〝マジかよ……〟
〝抜けます〟
え?
今抜けるって書いてなかった?
おいおいやめてくれよ!
俺の仕事これなんだから!
てかあれなの?
そんなに俺がモンスターと戦うのが見たいの?
う、嬉しいといえば嬉しいけど……
なんかなぁ
ま、いいや。
そんなことよりも配信を続けなきゃな。
「まぁ、モンスターは倒さないとはいえちゃんとダンジョン関係ではあるから」
〝と、いうと?〟
〝何をするんだ?〟
〝スキル紹介とか?〟
〝技の練習?〟
〝ダンジョン関係の話?〟
〝てか出てきすぎだろww〟
〝何をするの?〟
〝なんだろ〟
お、驚いてるな。
まぁ、そりゃそうか。
俺がやることといえばモンスターをひたすらフルボにすることぐらいだろうしな。
「今日はスキルの練習をしていこうと思うんだ」
〝え?〟
〝スキル……だと?〟
〝よっしゃぁ!〟
〝きちゃぁ!〟
〝なるほど!〟
〝そう来たか!〟
「じゃあ早速始めるか!」
そうして俺はスキルの練習をし始めた。
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