社畜、説明を受ける

「で、あんたが作ったダンジョン再現空間っていうのはどう使えばいいんだ?」


俺は単刀直入に聞いた。

本来なら自己紹介とかここにきた経緯とかそんな感じのものが必要なのだが俺はそんなことはしない。

何故って?

そんなの決まってるじゃないか。

早くダンジョン再現空間を使いたいからっ!

そう、これしかない。


「やっぱり気になるよねぇ?」


「卑しい笑みだな」


俺が素直に聞くと、怜はニチャァと、言葉通り卑しい笑みを浮かべた。

うん、普通に怖い。

でもそれだけ嬉しいんだろうな。

俺も自分の発明の説明をしろって言われたら嬉しく思うし。


「えー? ひどいよぉ。ボクの発明を自慢しようとしただけなのに……」


それ、人前で言ってたら無駄だぞ……と、言っても聞かなそうだから言わないでおこう。

それはそれで面白いしな。

これはこれとして、


「それで、結局再現空間はどうやって動かすんだ?」


そう、結局これが問題なんだ。

今日寝る前にどんなかことができるか考えていたんだ。

魔力を集めてバリアみたくしたり、逆に武器にしてみたり。

他にも色々……おっと、これ以上妄想に浸るのはやめよう。

なんか戻れなくなりそうな気がする。


「ボクの作った空間はね、厳密にいうと再現空間ではないんだ」


「え?」


ダンジョン再現空間じゃない?

え?

は?

おい、あの爺さん嘘つきやがったな!

ふざけんなよ!

俺がどんだけ楽しみにしてると思ってるんだ!

そのためにわざわざここにきたのに。

あっ、ちゃんとシロのことは覚えてるよ?

うん。

そう思って爺さんの方を向いたが爺さんも驚いている。

えっ?

どゆこと?


「え、じ、爺さん? まさか知らないのか?」


「あ、ああ。俺もそれは初耳だ……」


どうやらこれは本当に爺さんは関与していないようだ。

珍しいな。

爺さんが介入していないなんて。

って、そんなことじゃなくて!


「おい……ダンジョン再現空間じゃないってどういうことだ?」


「うわぁ、そんな地の底から響くような声で怒らないで! 怖いから! それにいったでしょ? 〝厳密には〟って」


あ、確かにそう言っていたな。


「それでその厳密っていうのはどういうことなんだ?」


「うん、ボクの作ったこの部屋は魔力をこの場にとどめておくことに成功した。でもね、ダンジョンのように魔物を生み出すことはできないんだ。だから、要はここは魔力部屋というだけでダンジョンを再現できた……とは言わないんだよ」


はぁ? 

ヤバくね?

普通に再現してるじゃねぇか。

魔物なんかがこんな国家機密のところで出てきたらたまらないしな。

それに俺が欲しかったのはスキルを練習できる場所。

魔物との戦いなんかダンジョンで十分だからな。


「それならいいぞ」


「そうだよね、やっぱりもっと研究して……完璧を目指さないと……え?」


どうやら俺に怒られると思っていたらしく怜はしゅんとしていたので驚きながらそう言った。


「だってこんなところで魔物が出てきたらたまらないだろ?」


「うっ、た、確かに」


「それにもともと俺が欲しかったのはスキルを練習できる場所だからな。十分だよ」


だってあれだぞ!?

スキルを使えるんだぞ?

ダンジョンの外で!

もうこれだけでノーベル賞ものだろ!

しかもそれを俺に使わせてくれるっていうんだからな。

責めるところなんてなにもない。


「で、改めて聞くんだがここは一体どうやって使うんだ?」


「あっ! それはですね!」


俺が質問をするとすぐに顔を俺に近づけて説明を始めた。


うぉっ、勢いすごいな。

さっきまで萎れてたのに急に元気になったぞ……!

やっぱり学者だからこう言ったものは嬉しいんだな。

ま、俺としては好都合だ。

あのまま説明されても後味が悪いしな。


「この部屋はね、ダンジョン……というより魔力の再現に成功したものなんだ。魔力をダンジョンと同じように使用できるからスキルなどももちろん使うことができるよ」


「ふむふむ」


ここまではさっき聞いたことだな。

それで肝心の使い方は……


「使い方はね、扉の入り口にボタンがあるでしょ?」


あ、確かにある。

青いボタンと赤いボタンだ。

入口の方を見たら確かに二つのボタンがあった。


「それで? その二つのボタンがなんなんだ?」


「うん、まずは赤いボタンね。このボタンは魔力を部屋に充満させるためのものだよ」


「なるほどな、これでダンジョンの再現をするわけだな」


「うん、その通り。それでこの青いボタンは赤いボタンとは逆に魔力を解散させる。ようはここをただの部屋にするって機能」


「あぁ、これで部屋をコントロールするのか」


「うん、その通りだよ」


俺が思ったことを口にすると怜はパチンと指を鳴らした。

おぉ!

いかにもすごい人っぽい。

でも……

さっきの姿を見ちゃったらね……

と、これ以上は怜に失礼だからやめておこう。

もう十分失礼な気もするがそれは気のせいだ。

うん、そうなんだ。


「これで説明は終わりかな? じゃ、あとはご自由にどうぞ!」


そういって怜は出て行った。


さてと、じゃあ早速やりますか、


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