社畜、対面する
翌日
「さてと、ダンジョン再現空間の準備ができたぞ」
「……は?」
朝起きて扉を開けたら部屋の前にいた爺さんが突如としてそう言った。
え、いやいやいやどういうこと!?
昨日ダメだったって言ってたよな?
言ってたよな……うん、言ってた、
……なんでこんな急に?
「流石に急すぎないか?」
「ああ、だよな」
「えっ?」
驚くべきことに爺さんまでもがそのことに驚いていた。
詳しく説明を聞くとこういうことらしい。
「ダンジョン空間の再現に成功したダンジョン学者は剣城怜つるぎれいというのだがな、あやつは自身の興味があるものには絶対的な集中力を使うんだ。だからこそ、ダンジョン空間の再現に成功したと言える。ただな、逆に興味を持っていないものにはとことん放置するんだ。それがどんなに重要なことでも……。特にあやつは人間にはとりわけ興味を示さないのだ。だから、俺にもわからんのだ」
なるほど、そういうことか。
確かにそう言った人はよくいる。
特に研究者とかそういった人種だ。
会社の開発部の社長もそうだったがそういった人だった。
そんな人たちは自分の興味持ったことはとことんやるがそれ以外は全くしないのだ。
ま、そんなことは今はどうでもいい。
そんなことよりも……
「そんなことより部屋を見せてくれ!」
俺がそういうと爺さんの口角が上がった。
そして
「だよな、そんな些細なことは放っておいて早速見に行こう。俺の早く見たいしな」
おい、爺さん。
本音が漏れとるぞ。
ん? これ前にもやった気がする。
「ついてこい」
俺はそんなことを考えながらも爺さんに素直について行った。
十分後
おい、これは一体どこまで移動するんだ……?
もうかれこれ十分はたってるぞ。
それにエレベーターに乗って上に行ったり下に行ったりよくわからん。
だが、こうやって焦らされるほどにダンジョン再現空間に胸が踊る。
これは楽しみだ。
「さ、ついたぞ」
「おっ、ついた……か……」
俺は前の光景を見て絶句した。
隣では爺さんがクックックと笑ってる。
クッソ、爺さんにまた驚かされた。
でもそんなことよりこれは本当にすごい。
俺の目の前にあるのは、建物2階に相当するほどの大きさを誇る大きな扉だった。
おっと、落ちつけ俺。
冷静になるんだ。
じゃないと爺さんにまた笑われる。
それだけは、それだけは絶対に嫌だ!
何故だかわからんがそれだけは嫌だ!
「おい、ここが入口なのか?」
俺がそう聞くと爺さんは頷いた。
「ここが入り口なのは間違いない。俺も初めて見た時は驚いて固まったからな。あ、因みになんでこんなに大きな扉なのかは知らん。この中にいる怜に聞け」
え、お前知らないの?
マジか。
また爺さんがドヤ顔で説明するものと思ってたけど。
ん?
待てよ?
今中にいる怜って言った?
言ったよな?
うん、いった。
間違いない。
「え、中にいるの?」
「ああ、怜の助手によると、実際に使っているところをこの目で見たい! という理由だそうだ」
あぁ、なるほど。
その気持ちはわかる。
自分でやったものは自分の目で成果を確認したいもんな。
もしかしたら怜っていう人と俺は気が合うのかもしれないな。
それで……
「で、これはどうやって入るんだ?」
「そこにレバーがあるだろ? それを引け」
え、それだけ?
これってあれだろ?
国家機密だろ?
そんな簡単なセキュリティでいいのかよ。
いや、でもここまで来るのに時間かかったしな。
そこまでいらないのか?
「もちろんセキュリティはしっかりしている。もし設定されている人物以外がそのレバーを引いても開かないようになっているし、それを検知した瞬間専用部隊が即座に向かうようになっている」
なるほど、一見普通に見えてもセキュリティはしっかりしてるのか。
ま、それもそうか。
この狡猾な爺さんが手を抜くとは思えないし。
よし、それでは早速対面と行くか!
「いざ、ダンジョン再現空間へ!」
そうして俺はダンジョン再現空間に入った。
「へぇ、中はこうなっているのか」
中に入ると、そこは何もない真っ白な空間だった。
特に装飾などはない。
なんだ、意外とシンプルなんだな。
それが俺の感想だった。
「ほぉ、これがあの部屋なのか……」
「ああ、そうなよな。意外だよな……って、オイ! なんで当たり前な風に入ってるんだよ!」
「嫌だって俺も気になったし……」
子供かよ!
おい爺さん、はじめにあった時の貫禄はいったいどこにおいてきたんだ……
にしても爺さんの言った通りに本当に何もない。
見えるのは白い景色だけだ。
……ん?
あれ、おかしくないか?
ここには怜っていうこの部屋を作った学者がいるんだろ?
なんで誰もいないんだ。
「なぁ、爺さん」
「なんだ?」
「怜って人は一体どこにいるんだ?」
俺が素直に聞くと爺さんも今気付いたようでハッとした顔をし、考えました。
怜さんがここにいるんだったらなんで見えないんだ?
……もしかして
「「スキル?」」
俺と爺さんの結論が同時に出た。
「やっぱりそうだよな。ここがダンジョン再現空間なのならスキルも使えるはずだ」
「はっはっは! お前にスキルを使えると言っておいて忘れていたわ」
おい、忘れんなよ。
マジで焦ったじゃねぇか。
さてと、
「じゃあ説明を頼むぞ、怜さん」
俺はスキルを発動し赤いモヤのより一層濃いところを向いてそう言った。
すると
「おぉ、よく気付いたね。ボクがここに隠れていることに」
白衣を着た緑色の髪の毛をした女性が楽しそうに言いながらそう言った。
「ようこそ! ボクの作った空間に」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます