社畜、驚く

「これでこの国家機密レベルのカードの機能説明は終わりか?」


「ああ、これで全部だ。というよりもその機能しかないんだがな」


いやいや、それでいいんだよ。

それだけで十分なんだよ。

だってあれだぞ?

転移だぞ?

もう、夢の世界だろ!

これだけっていうレベルじゃないんだぞ!

ま、それはどうでもいいや。

そんなことよりも……


「それで? ダンジョン空間の再現に成功したやつはどこにあるんだ?」


「ああ、それはな……今は見せられない!」


「は?」


み、見せられない?

どういうこと?

てかふざけんなよ!

俺がここにきた目的ってそのダンジョン空間の再現に成功したやつだし。

あ、もちろんシロのことは忘れてないよ。

ちゃんとそれを加味した上でだ。


「な、なんでだ?」


「ああ、それはな。実は再現した空間を作った責任者が今日来てないんだ。本当はワシも見てみたかったのに……」


爺さんは実に残念そうにそう言った。

おい、爺さん。

最後の方心の声が漏れとるぞ!


「嘘だろ!」


マジかよ!

いや、でも確かにそれは納得できるな。

いくら自分の方が立場が上だからって責任者がいない中で行くことはできないもんな。

前の会社でも同じようなことで何度もクライアントから怒られたからな。


「まぁ、理由はわかったが。それで、今日の予定はこれで終わりか?」

 

「ああ、そうだな。これで終わりだ」


よし、だったらもう帰ろうか。

ついでに手に入れた転移を使って家に帰ってみるとしますか。

そう思ったが爺さんが待ったをかけた。


「いやいや、少し待つのだ」


「は? なんでだ?」


「お前今転移を使おうとしただろう?」


「ああ、帰ろうと思ってな」


「やっぱりか。それはやめておけ! 今はな……」


は?

やめておく?

なんでだ?

ちゃんと転移先として設定したぞ?

一体何が問題だっていうんだ。


「なんで? しっかりと設定したぞ?」


「いや、それがちゃんと働くかが分からないのだ」


「どういうことだ……?」


素朴な疑問を口にすると、爺さんは仕方なさそうに答えた。

うん、なんかムカつく。


「いくら設定したからと言って数メートルの誤差は生じる。下手したらお前の家の壁にめり込みながら転移することになるかもしれんぞ」


え、マジで?

うそだろ! やめてくれよ。

俺の家アパートだから賠償金とかエグいことになるって!

うん、やめておこう。


「わざわざそんな危険を置かしてまでやる必要はないだろ?」


「そうだな……って! なんでそれをはじめに説明しなかったんだよ! 危うく死ぬところだったじゃねぇか!」


俺がその事実に気づき、爺さんに問い詰めると、爺さんは悪いと思っていたのか


「いや、実は忘れてて……」


小さな声でそう言った。


はぁぁぁぁぁーー

仕方ない。

今日は家に帰れないようだ。

ん? なんで家に帰れないのかって?

車で30分もかかる場所だぞ?

しかも国家機密だ。

そう簡単に家に帰れるわけないだろうが。


「だとしたらせめて泊まる場所くらいは用意してくれてるんだよな?」


「それはバッチリだ! 事前に用意してあったからね」


いやだったらなんで忘れてたんだよ。

っていうツッコミは一旦置いておこう。

もういろいろあって疲れた。

早くシャワー浴びて寝たい……


「部屋に案内するからついてきてくれ」


「わかった」


俺は爺さんの後を素直に着いて行った。

しばらく廊下を歩いていると突如として建物の雰囲気が変わった。

なんていうのだろうか。

さっきまでは研究所感がすごかったのに今では根っからの高級ホテルのようだ。

なんだこの変化の勢いは……

まじでぐっちゃだな。


「さて、ここがお前の部屋だ」


爺さんが突如としてとまり、横のドアを刺した。


そうして入った部屋の内装は……


「なんじゃこりゃ……」


廊下の見た目に違わぬものすごい豪華や部屋だったのだ。 

うん、場違い!


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