社畜、国家機密をもらう


「まずお前に渡さなければならないものがある」


俺は説明を始めると言われて爺さんからカードを手渡された。

ん? なんだこれ

カード?

探求者カードに似てるな。

何か関係でもあるのか?

あれ? この違和感は……もしかして!


「これ、魔力が籠っているな」


「……!? 気がついたのか……」


「ああ、俺のスキルはそう言ったものでな」


うぉー! 俺って天才かよ!

もしやと思ってスキルを使ってこのカードを見てみるとなんとびっくり!

このカードから赤いモヤが出てきていたのだ!

赤いモヤがあるということは魔力があるということ。

それを違和感として気づくって結構すごいんじゃないか?

っと、そんなことを言っている場合じゃないか。


「まさか、魔力が籠っていることに気づく奴がいるとはな……ばれたのはお前が初めてだ」


爺さんは心底驚いたようにそう告げた。

いやね、それはいいんだけどさ。

それ以上に気になるのがーー


「なんで魔力を籠らせているんだ?」


「やはり気になるか……」


「当たり前だろ」


魔力を使った機能!

そんな魅力的なものを俺が興味を持たないわけがない!

今はそのことで頭がいっぱいだぜ!

いやまじでなんでだろう。

魔力を使っているものはもう普及してる。

ダンジョン探索用のドローンなどだ。

だけどあれはダンジョンの魔力を使って利用時間を引き延ばしているだけだ。

他のやつも大体はそんな感じ。

ただの承認カードとしてなら魔力なんて使わなくても今までのコンピュータ制御で十分なはずだ。

それでもわざわざ魔力を使ったということは……


「魔法のような技術を使っているのか?」


「やはりそこまでわかってしまうか。ああ、その通りだ。このカードにはダンジョン教会の上層部だけが持っているカードだ」


爺さんはニヤリと笑いながらそう言った。

てかなんて言った?

上層部しか持っていない?

嘘だろおい!

そんな危険なやつを渡されたのかよ俺……

はぁ、そう言ってももう遅いしな。

切り替えていこう。

切り替えの良さが俺のいいところだからな。

そう、俺が考えていると爺さんは少し自慢げにカードの機能を説明し始めた。


「このカードにはな、今までにはない最先端の技術を取り入れている。例えば……そうだな、そこにあるダンジョン教会のエンブレムをタップしてみろ」


エンブレム?

あっ、これか。

カードの左端のところに鷲と剣の紋章が刻み込まれていた。

鷹の目はとても性能がいいらしい。

鷹の目のように素早くモンスターを見つけ、そして速やかに討伐する。

この紋章にはそんな意味が込められているらしい。


それで、問題はこのエンブレムに何が隠されているのか……


「うぉっ! なんだコレ!」


おいおいなんだよこれは、タップするとホログラムが出てきたぞ!

あっ、もしかしてこのホログラムって途中で来る時に見たやつなんじゃ……


「おおっ! いいなその反応、それが見たかったのだ! はっはっはっは!」


うわっ、スッゲェ嫌だ。

あの爺さんに出し抜かれたと思うとめっちゃ悔しい。


「チッ、笑うのはいいがよ、具体的にどんな効果があるんだ?」


「ああ、もちろんそれも説明する。そのホログラムは音声認識になっていてな、〝タイプスト〟」


そう、爺さんがいうと、ホログラムが変化し出した。

エンブレムを映し出したホログラムがさまざまな項目に変わったのだ。

え、なんだこれ。

なになに? 『転移先』……

は?


「おい、まさかその技術っていうのは……!」


「ふっ、その通り! 我々ダンジョン教会はついに、転移することができるようになったのだ!」


なんだってーーー!

嘘だろ、マジかよ。

転移っていかにもファンタジーじゃねぇか!?

よっしゃーーー!

サイコーだぜ!


「あれ? でも転移ってことはどこかに移動するんだろ? 一体どこに?」


「ああ、それはな。ここ、ダンジョン教会本部と登録先を繋げるんだ」


「登録先っていうのは一体どういうことだ?」


「その項目の中に『転移先の登録』ってやつがあるはずだ」


あ、あった。

項目をよく見てみるとそう書いてあるものが確かにある。

スゲェなオイ!

えっ? ってことは俺どこからでもこのダンジョン教会と家に行けるってこと?

なんだこれ、利便性の塊かよ。


「どうだ? 便利であろう?」


「ああ、利便性の塊だよ」


「そうだろうそうだろう! それにな、ここは国家機密にも匹敵する場所なんだ。場所を隠すためにもこれは重要なんだ」


「はぇーって、は? 国家機密!?」


「なんだ、言ってなかったのか。ここは日本政府主導の技術開発部門のトップなんだ」


……俺、マジでどうしちまったんだ。

つい最近まで社畜だったのに今や国家機密まで抱え込んでるんだぞ?

こりゃあ、完全に人生が変わったな。

はっきり言って怖い。

自分の才能以上の成功は身を滅ぼすっていうしな。

でも、それ以上に……


「これが魔力の力だ、どうだ? ワクワクするだろ……?」


爺さんはそう実に楽しそうに笑った。

そして俺も


「ああ、燃えてきた……!」


ワクワクしてきた。

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