社畜、スキルについて考える

「それで? 俺たちは今どこに行っているんだ?」


そう、俺と爺さんは車に乗ってどこかに向かっているのだ。

いやまじで一体どこに行ってるんだよ。

だってあれだぞ?


さっきそこら辺の景色見たけど全くわからなかったからな。

まぁ、もしかしたら俺がずっと会社にこもっていたからわからないだけかもしれないけどね。

そう思っていたら爺さんはケロッととんでもないことを言い出した。


「ああ、この車は今ダンジョン教会に向かっている」


「……は?」


おい、今ダンジョン教会っていった?

嘘だろ?

ダンジョン教会なんて一般人では絶対に入ることができないと言われているのに!

えっ! 聞き間違えじゃないの?

……聞き間違いじゃないな。

まじかよ……


「だけどなんで急にそんなところに?」


「それはもちろん協力者としてやるべきことの詳しいことを話そうと思ったんだ」


なるほど、そういうことか。

確かにそうだ。

ダンジョン教会に俺のような根っからの一般人が入ることはありえないことだからな。


もしそこを誰かに見られたとしたらそんな大事件をテレビが黙っているわけがないか。

そういったことを防ぐためにも今日しっかりと説明すら必要があるんだな。

へぇ、しっかりやっているんだな。


「シロはどうするんだ?」


「ああ、もちろんそこにいるお嬢さんはダンジョン教会直轄の専用病院に連れていくさ」


「ふぅ、ならいい。それで? いつ着くんだ? ダンジョン教会に」


もう結晶クリスタルの洞窟から車を走らせて20分くらいは経つんだが……


「実はもうついているんだ」


え? いや、は?

ついているだと?

何言ってるんだよこの爺さんは……


まだ、車で走っているじゃないか。

どういうことだ?


「ああ、言い方が悪かったな。ここはダンジョン教会の敷地に入っている、というわけだ」


あー、そゆこと。

てか、ここまでずっと森の中を車で走っていたけどダンジョン教会の敷地広すぎだろっ!

スゲェなオイ!

どんだけ広いだよ!


「じゃあ、建物に着くまであとどれくらいなんだ?」


「そうだな……」


爺さんは顎に手を当てながらうーんと少し唸った。

そしてしばらくした後、


「あと30分ぐらいじゃないか?」


「え?」


そんなにするのか?

まだそんなに遠いのか!?

やばいって本当に、頭おかしいって!


「えっ、マジで?」


俺がその言葉を慌てて爺さんに聞き返すと爺さんは車を運転している運転手に聞いた。


「そのくらいじゃないのか?」


「そうですね、そのくらいですよ」


うぉっ! まじかよ。

そんなにするのか……

だったらそれまで暇だな……

そうだな、だったら俺のスキル、魔力操作(極)の使い方を考えておくか。


俺のスキル、魔力操作の今わかっていることは魔力を感じとる、そしてそれを操るということ。

まずはちょっと魔力について考えてみるか。


俺がそもそも操っている魔力というのはなんなんだ?

確かダンジョン教会のホームページに書いてあった魔力っていうのはダンジョンに満ちていて、そこからモンスターが生まれていると……


あれ? おかしいな。

魔力は目に見えず、手に触れることもできないはずだ。

でも、モンスターは実際に手に触れることができて攻撃することができる。

なんでだ?


「なぁ、爺さん」


「ん? なんだ?」


「魔力ってさ、なんだと思う?」


俺がそう爺さんに聞いてみると、爺さんは「急になんだ」と言ってきた。


「魔力は目に見えず、手で触れることができないだろ?」


「ああ、その通りだ」


「でもさ、モンスターは魔力から生まれているのに手に触れることができるじゃないか」


俺がそう思ったことを聞くと「なるほど、そのことか」と呟いた。

そして俺に爺さんがいってきた。


「それは我々ダンジョン教会も考えていることなんだ。なぜモンスターは魔力から生まれているのに物理に干渉できるのかってな」


まじか、ダンジョン教会もわかっていないのか。

でもそれは当然疑問に思うことなんだよな。

いや、まてよ。

だとしたらおかしい。


「おい、爺さん! だとしたらどうやってダンジョン空間を再現できたんだ?」


「ほぅ、それに気づいていたのか」


「当然の疑問だろ?」


俺が爺さんにいうと、「ふっ」と楽しそうに笑った。

厳格に見えた意外と可愛いな。


「それはな、研究班が魔力はある程度の塊になると物理に干渉できるようになることが明らかになったんだ」


「そうなのか」


だとしたらあれだな。

俺の魔力操作って結構有用なんじゃないか?

魔力を固めることができれば……

足場を作ったりすることができるんじゃないか?

だとしたらダンジョン空間の再現に成功した部屋を使って練習することができれば……

化けるかもな!


「あっ、そういえばその再現した部屋で撮影をしたりできるか?」


「ああ、そういえばお前はダンジョン配信者だったな。そうだな……いいだろう、今回はお前にあの部屋を与えたからな。あの部屋の所有者はお前だ。別にいいだろうよ」


はぁ、よかった。

念のために聞いておかないと……

後で急にやっちゃダメだと言われたらたまらないからな!

これで大丈夫だろう。

次の配信はスキルの練習かな?


それなら俺だけでなく、見てくれている視聴者の意見も知ることができるからな。

意外と魔力って奥が深いな……


30分後


「おっ! もしかしてあれなのか?」


そろそろかと思って窓の外を見てみるとそこにはめちゃくちゃ大きなビルがあった。

なんだよあれ?

くっそでかいんだけど!?


「その通りだ。ついたぞ、ここがダンジョン教会本部だ!」


「うぉぉっ! すごいな」


でっか!

おい、ものすんごくでかいんだが!?

だとしたらそんだけ最先端の技術があるっていうことだ。

これだったらシロも大丈夫だろう。


ってそんなにそこまで重症ではないんだけどな。

それで、詳しい話ってなんなんだろうな。


「さぁ、ついたぞ! ついてきてくれ!」


俺は爺さんに案内されるがままについて行くことにした。

建物に入ると目新しいものがたくさんあった。


なんなんだあれ?

ホログラムって奴?

すごいな本当に……

こんなたくさんの最先端技術が一つの機関に集中しているなんてすごい。


そうして周りを見ながら爺さんについて行くと少し豪華な部屋に入った。

そして爺さんは部屋の奥にある椅子に腰を下すと威厳のある声で言った。


「さて、協力者としての詳しい説明を始めよう」


「おう」

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