社畜、勧誘される

「いってやってもいいが、その前にやるべきことがある」


「あぁ? なんだ? めんどくせぇ……早く言ってみろ」


はぁ? なんだこいつ。

ただ聞いただけなのになんなんだこの態度は……

まぁいい。

こう言ったことは会社で慣れてたからな。

そんなことよりも……だ、


「グォォォォォッ!」


「……!? おいおい、まだ倒れねぇのかよ……だるいな……」


「まずはこいつを倒さないとな」


そうして俺はクマに向かって突撃した。

シロが見える。

みたところものすごく疲弊してる。

それもそうだろう、

スキルを連発したんだ、疲れないわけがない。


「シロ、下がってくれ! あとは俺がやる」


「お、お願いします」


そういうとシロはばたりと倒れてしまった。

えっ! 大丈夫か?

そう思っていたが意外と赤髪はわかっているようで


「おい! こっちの嬢ちゃんは大丈夫だ。早くやっちまえ! ただ働きはごめんだ」


「わかってるって!」


ふぅ、よかった。

怪我とかはしていないみたいだ。

多分疲れて寝てしまったんだ。

まだ、子供なのにだいぶ無理させてしまったからな。

ここからはあれの仕事だ!

そうして俺はクマとすれ違いざまに攻撃を叩き込んだ。


「一応こちらは年上なんでね!」


〝うぉぉぉっ!〟

〝やっちまえ!〟

〝シロちゃんは?〟

〝大丈夫ってさっき言ってた〟

〝↑ナイス情報〟

〝よかっったぁぁぁぁぁーー!〟

〝安心した〟


さて、次の攻撃は……?

そう思ったがどうやら今ので倒れたようだ。

よっしゃぁっ!

ボス撃破だぜ!

いやーそれにしてもダンジョン探索1日目からとんでもないことになったな。

普通なら絶対にこうならないよな?

……なんだろう、俺って巻き込まれ体質なのか?

まあいい。

そんなことより動画だ動画。


「さて、いろいろあったが今回の配信はこれでおしまいにしたいと思う」


〝お疲れ!〟

〝よかったよ!〟

〝お前最高かよ!〟

〝シロちゃんは?〟

〝そう、それ〟

〝どうするの?〟


コメントからシロの心配をするものがあった。

やっぱり愛されてるな〜

俺もいつかそうなりたい。

と、そんなことを考えてる場合じゃないな。


「ああ、シロはこれから一応病院に運んどくよ。無理させたからね……じゃ! バイバイ!」


〝おう!〟

〝頼んだ!〟

〝じゃあな!〟

〝バイバイ〟

〝さいならー〟


「ふぅ、終わったな」


配信が完全に終わっていることを確かめたあと、俺はそう呟いた。

さてと……


「手伝ってくれよ、赤髪」


「ざけんな! なんだよ赤髪って!」


「いやだってお前の名前知らないし……」


「あっ」


赤髪の逆ギレに冷静に返事をしたら赤髪はそのことを忘れていたようでそう言葉をこぼした。

うん、こいつバカなのか?

いや、バカだ。

間違いない。


「おい、テメェ! 絶対今俺のことをバカにしただろ!」


「いいや? してないぞ。で、そんなことよりお願いするわ」


俺が赤髪の言葉を無視してそういうと、隠そうともせず嫌そうな顔をした。


「はぁー? なんで俺が手伝わなきゃーー」


「飯奢ってやるから」


「おう、やってやろうぜ!」


こいつ露骨に態度を変えたな!

どんだけ現金なやつなんだよ!

ま、そんなことはどっだっていいや。

早く運んでやらないとな。


「確か、ダンジョン探索者専用の病院があるんだっけ?」


「あ、そういやだったな」


赤髪が思い出したようにそういった。


「ダンジョン教会の隣にあるからお前を連れて行くのと一緒に運んでやるよ」


「おう、助かる」


そんな会話をしながらダンジョンの外に出ると、黒のリムジンといういかにもVIPがいますよー、とでも言いたげな高級車があった。

……?

なんだ、これ。

リムジン?

なんでこんなところに……


「さぁ、乗れ」


「はぁっ!?」


至極当然のようにリムジンになろうとした赤髪に俺は驚きを隠せなかった。

なんでこんなチャラそうなやつが……

ありえない!

やばい、常識的にあり得ないことだ!

なんで?

いったいなんでだ!


「やぁ、君がスト君だね?」


「……? 誰だあんたは」


俺の頭がハテナで埋まっていると、突然窓が開いてそこから白髪の老人がそう俺に問いかけた。

誰だ?

こいつになってるということはVIPなんだろうが……

あれ?

もしかして俺やばい態度しちゃぅたんじゃ……!

やばいやばい!

社会的に抹殺されるのはごめんだぞ!


「はっはっは! まぁ、そう警戒するでない。それ、のるがいい」


俺が動揺していたことがバレていたのか老人は笑いながら扉を開けて「ここに座れ」とでも言わんばかりに自分の隣な席を叩いた。

バレてるのか……

会社でポーカーフェイスは鍛えたと思ったんだけどな……


「それはいいけど、その前にこの子を病院を連れて行ってくれ、その後で話を聞く」


「ああ、いいだろう。その子はちゃんと連れて行ってあげるよ」


「……そうか。わかった」


よーし、大丈夫だろう。

社長のような嫌な感じがしない。

いや、でもさっきもポーカーフェイスを見破られていたしなんか自信無くすな。

これからはもっと鍛えとかないと……


そう思いながら俺はリムジンにのり、老人の横に座った。

なんの話をするんだ?

ダンジョンのことだったらなんで探索をしていなかったのか、とか?

んー、わからんな。

わからないことを考えても仕方ない。

気楽に行こう。


「それじゃあ、話すとするか。お主、ワシの専属部隊にならないか?」


「は?」

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