社畜、異常個体を討伐する

俺とシロの戦いを映してコメントがどんどんと加速していく。


〝いけるのかっ!?〟

〝いや、厳しいぞ!〟

〝教会の人間はまだか!?〟

〝頑張れっ!〟

〝いま、教会から向かうって!〟

〝は?〟

〝は?〟

〝遅くね!?〟

〝ざけんな!〟


「チッ! コメント見る暇もねぇっ!」


俺は舌打ちしながらそう言った。

癪だが狂化状態に入ったクマでは攻撃を避けるだけで精一杯だ。

せめてこの状況で戦えるやつがあと1人いればいいんだが……

いや、ダメなことを考えてもだめだ。

俺たちがやるべきとこは、コイツの体力を絶対に削り切ることだ!


「スト探さん! 私、スキルの充填が完了しました! 一回下がってください!」


「おうよ! ぶちかましてやれっ!」


俺はシロの言葉に従い、後ろに下がる。


「スキル『火球』っ!」


そう、シロが口にた瞬間、シロからクマに向けて火の玉が発射される。

しばらくの間、俺がずっとヘイトを買っていた。

シロに『スキルの準備をする』と言われたからだ。

うぉぉぉっ!

アレがスキルか!

いいな、確かにこれは武器になる。

俺を除けばなんだけどな……


「グゥゥ……グォォォォォォォォォッ!」


「なんだとっ!?」


「嘘でしょ!?」


シロのスキルが当たった瞬間、俺は勝利を確信していた。

あの火の玉からは凄まじい熱量を感じた。

鉄に負けて打てば間違いなく鉄は溶けるだろう。

だからこそ信じられなかった。

そんな威力の攻撃を持ってしても倒せないという現実に……


「シロっ! あれが効いていないわけじゃない! もう一回行けるか?」


「すみません、多分無理です。ここら一帯の魔力をかき集めて撃ったので……」


「そうか……」


くそっ、撃たないのか。

確かにシロが準備している時何かが集まるような感覚があった。

それが魔力なんだろう。

そしてここら一帯の全ての魔力を使った……

確かにここら辺には熊と対峙した時に感じていたポワポワした感覚がしない。

っ!?

待てよ、なんで俺はそんなことがわかるんだ……

ダンジョンに潜っているからか?

いや、それは魔力を消費するスキルを手に入れたものしかわからないとネットには書いてあった。

そうか、そうだったじゃないか。

俺も持ってるじゃないか……


「シロ! ほんの少しでいい、時間を稼げるか?」


「!? なんでですか?」


魔力操作(極)っていうこの場にうってつけの最高のスキルを!


「魔力をここら一帯に引き込む」


俺がそういうと、シロは頷いて前に出た。

そうしてクマのヘイトが俺からシロに移る。

よし、今なら行けるはず!


「スキル『魔力操作(極)』発動っ!」


俺がスキルを発動した瞬間視界が青く染まった。

なんだ、これは……

辺りを見回してみるが何も変わらない。

ん? なんだあれ……

向こう、ダンジョンの奥が赤く染まっている。

ってことは……!


「こい、魔力共!」


俺は赤色のモヤをこちら側に引っ張ってくるようにイメージした。

これは自然に行うことができた。


とあるダンジョン研究家言った。


『スキルというのは、手に入れた瞬間初めから持っていたように完璧に扱える』


それが今、ストの手で完璧に証明されたのだった。


赤いモヤが俺の言葉によってこちら側はどんどんと近づいていく……


「シロ、交代だ! どうだ? 魔力は感じられるか?」


「えっ、いやだからそんなすぐには……」


そうシロはしどろもどろいう。

まぁ、そうなるだろうな。

だが、今回だけは例外だ!


「いいから!」


「はっはい! ……!? ま、魔力が戻ってます! しかも、さっきよりも大量に!」


俺はその言葉を聞いてニヤリと笑う。

完璧だ。

ダンジョンの奥からここへ魔力を引っ張り出すことができた。

これなら……


「撃てるか!」


「任せてください!」


そうして再び俺とシロは前線を交代する。

俺が前に来た瞬間攻撃が降り注ぐ。

だが……


「見え見えなんだよ! 魔力でな!」


そうして俺はクマの攻撃をサッと避ける。

魔力操作は万能だった。

さっき偶然気づいたことだが、モヤを引っ張るとき、クマが赤く見えたのだ。

クマが攻撃するとき、無意識に魔力を込める。

だからこそ、先読みができる!


「そらよっ!」


「グァァ!」


よし! 攻撃が入った!

このままいくぜ!


〝うぉぉぉ!〟

〝行けるんじゃないか!〟

〝かっけぇ!〟

〝いっけぇーーーー!〟

〝やっちまえ!〟

〝フルボッコタイムだ!〟

〝↑いいなそれ〟

〝↑お前やけに冷静だな!〟


キタキタキタッ!

これなら行ける!

俺がヘイトを買いながらチョビチョビ攻撃、そしてその間にシロが特大の攻撃をお見舞いする。

これで勝てる!

このまま押し切ってやる!


「行けるか? シロ!」


「はい! いけます! 下がってください!」


そうしてシロは再びスキル『火球』をクマに向かって放った。

そうすると、今度はさっきとは違い、


「グォォォォォアァァァッ!」


「よし! 効いた!」


「やりました!」


よし! 今度はちゃんと効いたぞ!

このままやってやるぜ!

ん? 

なんだあれは……

クマが弱っているうちに辺りを見回したところ、赤いモヤがあった。

おかしい。

もうここにはシロのスキルによって魔力は全くないはずなのに……

よし……


「それで、そこにいる奴は何をやっているんだ?」


「どうしたんですか? スト探さん……?」


「ああ。そこに誰かいるんだよ」


「えっ?」


そう、シロは不思議そうな顔でそう聞いてきた。

そりゃあ、そうだ。

いきなりそんなことを言われてもな。


〝えっ?〟

〝うそつけよ!〟

〝いや、でもあったりして……〟

〝↑確かに〟

〝ありえそうw〟

〝どうなんだろう……?〟


そう思っていたら奥から赤髪の人が出てきた。

なんだ、コイツ……


「ほぉ、よく気づいたな」


「まぁな。それでおそらくお前はダンジョン教会の人間だろう?」


「ああ……その通りだ」


「そいつが一体なんのようだ?」


「ああ、お前にダンジョン教会から呼び出しが来ている」


なに?

ダンジョン教会からの呼び出しだと?

何それ、俺何かやらかしたか?

いや、やっていないはずなんだが……

まぁいい。

いくか。


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