社畜、戦闘する

よし、ちゃんとドローンは起動してるな。

あとは、探究者用のアプリと連携して追尾するようにしてっと……


「こちらは用意できました! スト探さんはどうですか?」


「あとは、配信サイトに繋げるだけだな」


シロの質問に俺はそう答えた。

てかもう準備できたのかよ!

うぉ、すげぇな!

さすが配信者の先輩。

俺ももっと効率化していかないとな。

そんなことを思いながらも俺はドローンと配信サイトを繋げる。


「シロ、こっちも配信の準備ができたぞ!」


「そうですか! じゃあ始めましょうか」


「そうだな、配信……スタートだ!」


そうして俺とシロは同時に配信開始ボタンを押した。

それと同時に凄まじい速度でコメントが流れ込んできた。


〝うおっ、いきなり!?〟

〝探索配信キチャー!〟

〝よっしゃーー!〟

〝はよ! はよ!〟

〝はよ! はよ!〟

〝まだ、続いてるww〟

〝連絡しないの?〟

〝モンスターをボッコボコにしてやれ!〟


おおっ、始めたばっかりなのにもうコメントがついてる!

……ん? 〝連絡しないの〟ってどういうことだ?

連絡なんてするのか?


「おい、シロ。連絡するってどういうことだ?」


俺が疑問に思ってそう聞くとシロはサッと答えてくれた。


「連絡っていうのは『つぶやいたー』などのSNSでこれから配信するよってことを事前に連絡することなのです」


「はぇ〜! そうだったのか」


そうすればこれから集客しやすくなるのか。

そうだな、これからやっておこうかな。

こう言ったさりげない工夫でダンジョン配信は成り立っているのか。

意外と奥が深いのかもしれないな。


「あっ、あの。そんなことよりも……」


「え? 何かあったか?」


何かやった?

俺何もしてないはずなんだがな……

そう思ったがそれは俺の予想外のものだった。


「この探索って私とのコラボでしたよね……」


「ん? あっ、ああ。そうだな」


「それで、コラボってサプライズだったと思うんですけど……」


「そうだな」


「今の会話でバレちゃったんじゃないですか?」


「あっ!」


シロのその言葉に俺は衝撃を受ける。

そうじゃん、これってコラボじゃん。

それをバラしたって俺マジでやらかしちゃったんじゃ……

そう思って恐る恐るコメントを見るとそこは大盛況だった。


〝え! シロちゃんいるの!?〟

〝いきなりコラボ!?〟

〝うぉぉぉぉぉ!〟

〝こ れ は 神〟

〝サプライズだったのか!〟

〝バラしてるしww〟

〝おいw〟

〝ww〟

〝それだけかよ!〟


「あっ!」


そんな声と共に俺はシロの方を見る。

俺の顔を見たシロは『ドンマイです』とでも言いたげな顔で頷いた。


ああっ、やっちまった。

ダンジョン配信するとしてはこう言ったことも考えなきゃいけないのか。

大変なんだな。

ってそんなことを考えてる場合じゃない。

俺はもうそのダンジョン配信者なんだ。

これから気をつければいいんだ。


「わっ、悪かった」


「いえ、バレちゃったことは仕方ないですよ。ということです皆さんこんにちは! シロ探索チャンネルのシロでーす!」


〝うぉーー〟

〝よっしゃーー!〟

〝神 回〟

〝いきなりコラボきちゃーーー!〟

〝いいぞ! もっとやれ!〟

〝これは熱い!〟

〝サイコーーー!〟


「うぉっ、めっちゃ盛り上がってる」


すごいな、これがシロの影響力か。

こんな小さな子供がこんなに影響力を持つってすごい時代になったもんだな。

……と、感情に浸ってる場合じゃないな。


「さてと、もうバレてしまってるが今回はシロさんとのコラボだ。ハッキリ言って格上の存在だと思うんだがな。なんか申し訳ない」


「いえいえ、大丈夫ですよ」


俺が正直な感想を言うとシロはそれをフォローしてくれた。

なんだこの子、人のフォローもできるってすごいな。

社長とは比べ物にならないじゃないか。

マジであいつは何がしたかったんだ?

そんなふうに考えている間に淡々とシロは話を進めていく。


「今回はダンジョンでたまたまスト探さんと出会ったのでせっかくと言うことでコラボすることになったのです。あっ、それとスト探さんは格上と言っていましたがハッキリ言って今は私よりも影響があると思いますよ」


「えっ?」


考えていた俺でもその言葉には反応した。

どう言うことだ?

影響力があるってそんなことあるわけ……

そう思ってスマホで自分のチャンネルを検索してみた。

するとそこには驚くべきことが書いてあった。


「うぇっ! 登録者数10万人!?」


「あっ、気づいてなかったんですか……」


うん、気づいてなかった。

何これ、夢なのか?

まあいい、そんなことよりもだ。


「そんなことより早くダンジョンに潜ろうぜ? 画面向こうのみんなもそう思っているだろうからな」


〝そうだ!〟

〝早くやれ!〟

〝その通りだ〟

〝フルボッコにしろ!〟

〝いけいけ!〟


「ということだ、いくか!」


「はい! そうしましょう!」


スマホを見せながらそう言うとシロは一瞬驚いたような顔をした後、笑顔で頷いた。


「お、いたぞ!」


「まずは私から行かせていただきます!」


ゴブリンを見つけた瞬間シロはそう言いながら突っ込んだ。

ゴブリンがそれに反応して手元に持った棍棒のようなものをシロに向けた。


「おい、危ないぞ!」


思わずそう叫んでしまったがそれは杞憂に終わった。

その攻撃をサッと避けてそのままシロは手に持っていたナイフでそのままゴブリンの頭に突き刺した。


「oh……」


出た言葉はそれだけだった。

すげぇなオイ!

これが人気配信者の実力か……

いいね、燃えてきた。


「どうですか? スト探さん! 結構すごくないですか?」


「ああ、思った以上だったよ。さてと、それじゃあ次は俺の番だな」


「はい! お手並み拝見とさせていただきます!」


〝うぉぉ!〟

〝ついに実力が明かされる!〟

〝何言ってるんだ、あれは合成だろ〟

〝↑あん?〟

〝だからあれは合成だって言ってんだよ!〟

〝ふざけんな! シロちゃんがやったって言うのか!?〟

〝いや、そうじゃない。あれはシロちゃんの真似をした奴が撮った合成だって言ってんだ〟

〝そんなわけないだろ!〟

〝そうだ!〟


「まあまあ、落ち着けって……」


俺はコメントを見ながらそう言う。


「疑うんだったら実際に見て確かめてくれればいいさ!」


「ギギャギャ!」


「いっちょ行きますか!」


そう言いながらシロではなく今度は俺が飛び出した。

そうするとゴブリンはさっきと同じように俺に棍棒を振り翳した。


「そんなもの当たるかよ!」


その横を避けてそのままゴブリンの背後に回り込んだ。


「終わりだ!」


「ギギャーーーー!」


そうして俺は頭に拳をぶち込んだ。

ゴブリンは地面にめり込み、そのまま消えていった。


「ふぅ、終わった。それでどうだった? 俺の実力は……?」


「すっ、すごいです。地面にめり込むほどの威力……私にはできません」


〝ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい〟

〝めっちゃ謝ってて草〟

〝なんだコレ!

〝規格外すぎ……〟

〝めり込むってなんだよ〟


あれ?

なんかパニックになってる。

……まぁ、いいだろ。

別になにか変なことが起きたわけじゃないし。

それにしてもものすごい謝られてる。

うん、別にさっきのはカッコ付けたかっただけなんだけどね。


よし、このままどんどん(命を)刈りますか!

そうして俺とシロはダンジョンの奥に進んでいくのだった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る