社畜、コラボする
「よし! いくか!」
おっちゃんの店を出た俺はそのままダンジョンに向かった。
なんというのだろう……実際に配信するんだと思うと緊張してきた。
会社のときは社長に復讐できる! ってことでなんかハイになってたからな……
今思い出すと恥ずかしい……
これは、黒歴史かもしれないな。
って待てよ!
俺の黒歴史、ドローンによって全国に配信されてるじゃん……
うわぁ、最悪だ。
いやいや、今更そんなことを言ってももう遅い!
大事なのはこれからのことだ。
うん、そうなんだ。
「さてと、まずはダンジョンに入らないとな……」
「あっ、もしかして『スト探』さん!?」
えっ? 俺の探究者名を……?
もしかしてもう身バレした……?
あっ、でも俺ってもう顔出ししてるし意味ないか。
いや何俺かってにつっこんでるんだろ。
でも、まぁ楽しいからいいか。
そう思って後ろを向くと、そこには見覚えある人物がいた。
「あっ、君はあの時の……!」
腰まで伸ばした綺麗な青い髪の毛をもった少女……うん間違いない。
「はい、おひしぶり……ってほどでもないですけどお久しぶりです」
「ああ、そういえば君もここを探索するの?」
「いえ、今回はたまたまこのダンジョンで配信予定だったんです。私はいろんなダンジョンを日毎に回っているので……」
あっ、そうなんだ。
確かにずっと同じところにいると人気とかもなくなりそうだしな。
いろんなダンジョンに行った方が新鮮味があるんだろう……
よく考えてるな〜
会社で同僚だったら仕事がどんだけ頼りになったんだろうな……
「……ってお前も配信するのか!?」
こんな小さな子までもがダンジョンに潜っているのか……
ブラック企業にいたから常識が欠けてるのかもしれないな……
よし! 配信が終わったらちょっと勉強しとこ。
「お前もってことはスト探さんもですか!?」
「ああ。今日初めてのダンジョン配信をやろうとしてたんだ」
まさか同じ日に同じダンジョンで配信することになるとはな……
まっ、俺ができることは邪魔しないようにしながら配信することくらいだな。
いくら年上とはいえ、人の邪魔をするようなことはしたくないからな。
そう思っていたが少女は思ってもみない提案をしてきた。
「それじゃあ、せっかくだしコラボします?」
「へ……? こっ、コラボ?」
「はい!」
うーん、コラボか〜
確かにこのままダンジョン探索をやってうまく行くとは限らないしな……
よし、これからの起爆剤としてやってもいいかもしれない。
こう言ったものは最初のインパクトが大事なんだ。
ブラック企業で培った知識が役に立つってなんか嫌だな。
「うん、いいかもな! それで? 配信はいつやるんだ?」
俺が提案に承諾してそういうと少女は嬉しそうな笑顔を見せた。
うわー、やめてくれ!
そんな眩しい笑顔は俺に効果抜群だ!
「そうですね……スト探さんはいつから配信予定なんですか?」
「配信する時間? 今からやる予定だな」
「分かりました! じゃあ早速やりましょう!」
「いいのか?」
「はい! 私もこれから配信しようと思っていたので」
そうなのか、よかった。
下手に気を使わせるのは嫌だからな。
「それで? 今更だが名前はなんでいうんだ?」
そう、俺はこの少女の名前を聞いていないのだ。
これからコラボするんだったら名前を知っていないと不便だからな。
「そうでしたね、私はシロ。ダンジョン配信をやっています!」
「えっ! 同業者?」
「はい、そうですね。この仕事では私の方が先輩です」
そう、言って少女、シロは誇らしげにそう言った。
う、やはりそこは強く言えん。
実際に登録者とかもめちゃくちゃ多いからな。
まあいい。
そんなことよりも早くダンジョンに潜りたい!
「よし、いくか!」
「はい!」
そうして俺たちはダンジョンの中に入った。
中に入るとそこにはゴブリンと言ったモンスターが溢れていた。
あれ? おかしいな。
俺が初めてきた時はこんなにいなかったんだけどな。
「どうしたんですか? そんなに驚いた顔をして……」
「あっ、ああ。俺がきた時には全くいなかったもんでな」
どうやらシロに俺の動揺がバレてしまったようだ。
あれだな、こんな子に心配されるなんでなんか情けないな。
でも、それ以上に不思議だ。
俺がダンジョンにきた時はあの狼サンドバッグしかいなかったのに……
あの時はたまたまいなかったのか?
もしくはなにかイレギュラーがあったのか……?
だとしたら大変なことになりそうなんだが。
そう考えていたがそれには理由があったらしい。
「あの時は『フィールドボス』が出現していたからですね」
「フィールドボス?」
「はい、ダンジョンにはその階層ごとに最下層近くのレベルのモンスターが現れる時があるんです」
「なるほど、俺の場合はたまたまそうだったんだな」
ふぃー、謎が解けてスッキリしたぜ。
よかった、何かイレギュラーがあってダンジョンに入れなくなったら俺は仕事をまた失うことになるからな。
そう思っている時にシロは苦笑いを浮かべながらそっと呟いた。
「そんな化け物をあなたは一方的にフルボッコにしていたんですけどね……」
「ん? 何か言ったか?」
「い、いえ。なんでもありません」
そうなのか?
なにか言っていたような気がするが……
まっ、いいか。
そんなことよりも配信だ。
さっさと始めよう!
「だったら始めようか、配信を!」
「そうですね!」
そうして俺たちは同時にダンジョン配信用のドローンの電源を入れた。
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